ZARAが広告に使用した写真がパレスチナ自治区ガザ地区でのハマスとの紛争を想起させるとして炎上したため、広告の写真を削除・撤回。マーケティング用の広告にも危機管理の意識が必要。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

海外の事案ですが、ZARAが2023年12月7日から「THE JACKET」と名づけた「ザラ アトリエ(ZARA Atelier)」の広告キャンペーンを開始したところ、広告に使用した写真が、パレスチナ自治区ガザ地区でのハマスとの紛争を想起させるなどと批判され、炎上しました。

ZARAが広告に使用した写真が炎上

ZARAは「彫刻家のアトリエでの制作途中の作品をイメージ」した写真を広告に掲載しました(写真はCNNの記事からの引用)。

しかし、ZARAの制作意図に反し、写真には、女性モデルが白い覆いに包まれたマネキンを肩に担いでいる様子がガザで犠牲になった遺体を連想させるなどの批判が寄せられました。

その批判は、Instagram、TikTok、Xでは「#BoycottZara」のハッシュタグを付けてボイコットを呼び掛ける動きにまで発展しました。

果たして、ZARAは12月13日に公式Instagramで制作経緯、制作意図を説明した後、「一部の顧客は、すでに削除されたこれらのイメージに不快感を覚え、制作意図とは異なるものを受け止めてしまった。こうした誤解を招いたことを残念に思う。また、我々は全ての人に対する深い敬意をあらためて明言する」(※意訳)との謝罪文を掲載し、かつ、広告で使用した写真を削除・撤回しました。

制作意図が伝わらないが故の炎上

ZARAの広告写真に限らず、制作する側の意図が消費者に伝わらずにマーケティング用の広告が炎上するケースは少なくありません。

日本国内でも2023年5月にシルバニアファミリーを燃やす演出で女性ファッション誌LARMEの企画動画が炎上したケースが発生したばかりです。詳しくは以前に投稿しました。

マーケティング用の広告は消費者の目に止まらなければ意味がありません。そのため、目立つための演出がされがちです。

中には「あえて炎上させる」意図の炎上マーケティングもあります。一過性の話題にはのぼり注目を集めるかもしれませんが、会社の信頼・信用を保てるかという長期的な目線で見ると、オススメできるマーケティングではありません。

また、個性を出すために、制作意図が伝わりにくい広告が使用されることもあります。芸術性の高い広告の多くは、このパターンではないでしょうか。

今回、ZARAが広告に使用した写真も、このパターンに該当すると言えます。

ZARAの12月13日の声明によると「一連の画像は、彫刻家のアトリエにある未完成の彫刻をイメージしており、職人の手作業による衣服を芸術的な文脈で見せることを意図したもの」だそうです(※意訳)。

結果的に見れば、ZARAの制作意図は消費者にはまったく伝わりませんでした。

芸術性の高い広告を作らない方がいいとまでは言いませんが、企業は、芸術性の高い広告を制作するときには、ターゲットにしている消費者に制作意図が伝わらないリスクがあること、それが故に炎上するリスクがあることを認識した方がよいでしょう。

また、今回は、ガザ地区でのハマスの問題が起きたばかりだったので、写真からハマスの問題を想起させやすいタイミングだった不運もあります。

広告を出すタイミングが炎上を招くことも、企業は理解しておいた方がよいと思います。

今回のZARAのケースと対照的な対応を講じたのが、チューリッヒです。

ロシアによるウクライナ侵攻が始まった後の2022年3月、スイスの保険会社チューリッヒは、企業ロゴに用いてる青地にZURICHの頭文字の「Z」がロシア軍が軍事車両や装備に記している「Z」を想起させるおそれがあるとして、日本法人をはじめグループ各社にロゴの使用見直しを求めました。

これはタイミングと企業の社会的責任(CSR)を意識した対応だと理解することができます。

タイミングを含め、マーケティング広告が炎上しやすい要素については以前に事例とともに整理しましたので、そちらも参考にしてみて下さい。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。
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