群馬県のマスコットキャラクター・ぐんまちゃんの公式Xアカウントが投稿した内容が特定の政党を支持しているとの批判。企業の公式SNSアカウントの運用上の留意点。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

群馬県のマスコットキャラクターであるぐんまちゃんの公式Xアカウントが2025年7月14日に投稿した内容が、「参議院選挙期間中にもかかわらず特定の政党を支持しているように見える」などと批判され、削除・謝罪する事態に至りました。

政治的・思想的に偏った投稿をした事例

今回と同様に、企業の公式アカウントが政治的に偏った投稿をして問題になった同種の事例は既に存在します。

四国放送の公式アカウントで特定の政党を批判する投稿

2022年1月に四国放送のTwitter(当時)のアカウント運用担当者が、プライベートのアカウントと間違えて四国放送のアカウントで特定の政党を批判する投稿をしてしまい懲戒解雇された事例があります。

オイシックス・ラ・大地会長が私的アカウントで思想的に偏った投稿

また、2024年2月にはオイシックス・ラ・大地の会長(取締役ではない)が、その身元・地位を明らかにしながら、プライベートのアカウントでALPS処理水を「放射能汚染水」とする主義主張・思想的に偏った投稿をしたことで、停職処分を受け、かつ、会長を辞職した事例もありました。

不適切な投稿

それ以外にも、政治的中立性とは関係なく公式アカウントが不適切な投稿をして炎上するケースは、珍しくありません。

ぐんまちゃんの場合、何が問題だったのか

政治的中立性を欠くと批判された要因

ぐんまちゃんの投稿では、ぐんまちゃんのほか、スタッフ2人がオレンジ色のジャンパーを着て、こぶしを挙げた姿を後ろから写した写真とともに、「この県(くに)を愛して何が悪い!!」と投稿したことが、オレンジ色をイメージカラーとする特定の保守政党を想起させるから政治的中立性に欠けるのではないかと指摘され、批判されました。

ぐんまちゃんの色やスタッフのジャンパーの色は2011年当時からオレンジ色なので、色についての批判は的外れでしょう(そもそも群馬県は都道府県対抗駅伝でもユニフォームの色は昔からオレンジ色です)。

しかし、ぐんまちゃんのSNSにスタッフが登場するのは今回が初めてであること、県をあえて「くに」と振り仮名を振って投稿したこと、外国人問題が争点となっている参議院選挙の選挙期間中であることをなどを考慮すると、今回の投稿が特定の保守政党を想起させるとの批判は決して言いがかりとは言い切れず、納得感のあるものです。

委託会社との運用上の問題

報道によると、ぐんまちゃんのSNS投稿は、「投稿内容は委託会社が考案し、県が確認をして投稿した」「人気アニメ(※ONE PIECE)のオマージュとして作成をしたものだった」とのことです。

14日にJ-CASTニュースの取材に応じた群馬県知事戦略部エンターテインメント・コンテンツ課の担当者は、該当の投稿について、ぐんまちゃんの魅力発信としてさまざまな試みを行う中で、「人気アニメのオマージュとして作成をしたものだった」と説明した。

   具体的には、アニメ「ONE PIECE(ワンピース)」で、主人公・ルフィ率いる海賊団が一時旅を共にした「アラバスタ王国」の王女・ビビと別れるシーンのオマージュだったという。仲間の証を示すシーンであるため、今回の投稿にもスタッフを登場させたとした。

   投稿内容は委託会社が考案し、県が確認をして投稿したという。類似する取り組みについて、これまでにも具体的なアニメの名前は出していないものの、アニメ「頭文字D」に登場する車と写るぐんまちゃんを投稿したこともあったと説明した。

たとえ委託会社が考案した投稿内容だとしても、県が確認してから投稿するのであれば、「今は選挙期間中であるから、この類の投稿は誤解を招くおそれがある」などとチェック機能が働いて欲しかったところです。

内容のみならず、投稿のタイミングが悪いと炎上することがあるのは、チェック段階で意識してほしい要素です。

これは、SNSの投稿に限らず、企業のマーケティング広告などに通じるものがあります。

また、群馬県は「人気マンガのオマージュ」で作成したと弁明していますが、おそらくこの作成意図は誰にも伝わっていなかったでしょう。

弁明の内容としても苦しいとしか言えません。

これも、投稿内容の意図が伝わりにくいものは炎上しやすい、という企業のマーケティング広告に通じるものがあります。

企業の公式SNSアカウントを運用する際には、投稿内容が炎上しないかどうか、多角的に検討するように心掛けてください。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。

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