「クレベリン」の広告表示に6億0744万円の課徴金納付命令。企業は商品パッケージに何を、どこまで表示すればよいのか。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

2023年4月11日、注目すべきニュースが報じられました。

「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」などと表示して、除菌用品の「クレベリン」を販売していたのは景品表示法に違反するとして、消費者庁は大阪の製薬会社「大幸薬品」に対して、6億円余りの課徴金を支払うよう命じました。景品表示法の課徴金としては過去最高額だと言うことです。

NHK NEWS WEB 

詳細は、消費者庁に発表されています。

このニュースを見て「うちにもクレベリンあるな」「ドラッグストアにたくさん並んでた気がする」などと思った人もいるのではないでしょうか?

今回は、企業危機管理の観点から、このニュースから商品開発、マーケティング、広報などの担当者は何を学ぶべきかを解説したいと思います。

景品表示法って何?

大幸薬品は「景品表示法」に違反したことを理由に「課徴金」を命じられました。そこで、まずは景品表示法のポイントを簡単にご説明します(景品表示法についてご存知の方は「企業が学ぶべきこと」のチャプターまで飛んでいただいても結構です)。

「景品」と「表示」に関するルール

「景品表示法」というのは、景品に関するルールと表示に関するルールの2つの内容を含んでいます。

景品に関するルールというのは、例えば、「PayPayで買い物したら何パーセントキャッシュバック」とか「ポイントを集めると○○が当たる」などの上限を定めたルールです。今回問題になったのは、こちらではありません。

表示に関するルールというのは、例えば、「実際にはガソリン1リットルで5キロしか走らない自動車を15キロ走ります」と実際よりも優れたように誤解させる表示(優良誤認表示といいます)や、「実際にはいつも5000円で売っている商品を『今ならセール中なので10,000円の商品を5,000円で買えます』」と実際よりもお得であるように誤解させる表示(有利誤認表示といいます)を禁止するルールです。今回問題になったのは、こちらの優良誤認表示です。

措置命令と課徴金

優良誤認表示と疑われる商品を消費者庁が見つけたときには、企業に実際に広告でアピールしている効果や効能を証明できる根拠資料を出すように求めます。
この根拠資料が出せない場合や、企業が根拠資料と思っていても実際には証明する合理的な根拠になっていない場合には、不実証広告(実際には証明できない広告)と判断され、優良誤認表示になってしまいます。

不実証広告と判断されると、消費者庁は企業に対して措置命令という行政処分を出します。
大幸薬品の場合は、2022年4月15日に、消費者庁から措置命令が出されています。

消費者庁は、措置命令の後は課徴金の納付を命じます。
これは罰金ではありません。罰金は裁判所で納めるもの、課徴金は行政に納めるもので別ものです。交通違反の反則切符をイメージしてもらえたらと思います。今回報じられたのは、この課徴金の納付命令です。

課徴金は、優良誤認表示をしていた期間中の売上の3%です。利益ではなく売上が基準です。

ちなみに、今回の6億0744万円は、優良誤認表示に対する課徴金納付命令の史上最高額です。
有利誤認表示に対する課徴金納付命令の史上最高額は、2020年6月24日、電子たばこのiQOSを販売していたフィリップ・モリス・ジャパンに対する5億5,274万円です。

企業が学ぶべきこと

さて、今回のケースから企業は学ぶべき点は何でしょうか。

今回、措置命令と課徴金を命じられた根拠は

  1. 商品パッケージなどの表現が優良誤認表示と判断されたこと
  2. 消費者庁に提出した資料が、合理的な根拠と判断されなかったこと
  3. 注書きが優良誤認を打ち消す表示として認められなかったこと

の3点です。

なぜ優良誤認表示とされたのか

まずは、クレベリンの商品パッケージなどの表示が、なぜ優良誤認表示とされたのかを分析していきましょう。

消費者庁の発表資料から一部抜粋すると、クレベリンの商品パッケージには

「空間に浮遊するウイルス・菌・ニオイを除去」
「用途 空間のウイルス除去・除菌・消臭にご使用いただけます。」等

と表示されていました。
この表示に合理的な根拠資料がなかったので、優良誤認表示と判断されたのです。

ポイントは、合理的な根拠資料がなかった、という部分です。

そもそも何の実験もしていないような会社なら問題外ですが、今回のケースでは、大幸薬品は根拠資料は出したけれども、消費者庁は合理的な根拠資料ではないと判断しました。

合理的な根拠資料というためには

では、合理的な根拠資料かどうかの判断の分かれ目は何でしょうか。

合理的な根拠資料というためには「商品の使用環境と同じような条件下で、アピールしている効果を発揮できる」ことが必要です。

研究所での実験データがあったとしても商品パッケージの表示の合理的な根拠資料にはなりません。実際の使用環境と同じような条件下で効果を確認できたデータが必要です。

逆から言えば、商品パッケージなどに表示する内容は、手元にある根拠資料の範囲内のことしか書いてはいけない、ということです。
このポイントは、研究開発の担当者も、表示を考える担当者の両方が抑えておく必要があります。

細かいルールは、不実証広告ガイドラインに定められています。

企業は得てして売上のために効果を誇張して書きがちです。
一番はじめに起案した担当者は慎重に表現を考えたのに、複数の担当者を経ているうちに、気がついたら、根拠となるデータとはかけ離れた表示になっていたなんてことも起きがちです。
表示を最終的に決裁する人は、根拠資料と内容が一致しているかを慎重に確認してください。

打ち消し表示の表示方法を見直そう

クレベリンの商品パッケージには

「◎ご利用環境により成分の広がりは異なります。」
「◎ウイルス・菌・カビ・ニオイのすべてを除去できるものではありません。」
「※当社試験 閉鎖空間で二酸化塩素により特定の『浮遊ウイルス・浮遊菌』の除去を確認。」

との注書きも表示していました。

こうした注書きのことを打ち消し表示といいます。
こうした打ち消し表示は、「商品パッケージに表示した効果は、一定の条件下でのものに限られます」「試験の結果です」、要するに、常に除菌などされるわけではないという、消費者に向けた注書きです。
ダイエット効果をアピールするフィットネスジムなどが※印を付けて「食事指導も行っています」などと書いているのも同じく打ち消し表示です。

これに対して、消費者庁は「当該表示は、一般消費者が前記・・の表示から受ける本件5商品の効果に関する認識を打ち消すものではない」と判断しています。
打ち消し表示をしても、消費者には届いていないから注書きとしては意味がない、という意味です。

ここから企業が学べるのは、打ち消し表示、要は注書きをするなら、消費者に注書きの内容が伝わるように、注書きの存在を目立たせ、かつ、わかりやすく書かなければならないということです。
打ち消し表示について消費者庁は実態調査報告書と、打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点を示しています。商品パッケージやウェブサイト、カタログなどの表示を考える担当者は必ず見てください。

まとめ

今回のケースから企業が学ぶべきポイントは以下の2点です。

  1. 商品パッケージなどでの効果を表示するときには、使用環境下での根拠資料を揃える必要があること
  2. 効果の表示に関する注書きをするときには、消費者に届くように目立つように書くこと

景品表示法の表示に関するルールを、少しは立体的に理解してもらえたでしょうか

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。