ミロク情報サービスの子会社の元従業員が、福利厚生サービスのポイント5200万円相当を自己に付与したとして背任容疑で逮捕。従業員による会計不正・着服を防ぐためには。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

2024年3月6日に、ミロク情報サービスの子会社であるMiroku Webcash International の元従業員が、会社が契約している福利厚生サービスのポイント5200万円相当を自己に付与したとして背任容疑で逮捕されました。

ミロク情報サービスが2023年7月21日に元従業員の懲戒解雇などを開示していた案件の続きです。

開示の内容によると、子会社が被った損害は1億4000万円相当とのことなので、今回逮捕された以外にもポイントを自己に付与していたのでしょう。

他社でも相次ぐ会計の担当者・責任者による不正

こうした会計の担当者・責任者による不正は、ミロク情報サービスに限ったことではありません。

ヤマウラのケース

上記と同じ2024年3月6日には、ヤマウラの管理本部財務経理マネージャー兼子会社経理担当とその長男が、2億9300万円の業務上横領で逮捕されました。

2月に逮捕された3億6000万円の業務上横領とは別件による逮捕です。

日産労連のケース

2024年3月8日には、日産労連の政治団体から約260万円を業務上横領したとして、元会計担当者が逮捕されています。

日経の報道によると、2013年頃から2020年10月までに合計1億4000万円以上を業務上横領したことを認めているようです。

長電建設のケース

2024年1月22日には、長野電鉄の子会社長電建設の総務課長(当時)が、2014年11月から2022年9月までに取引実態のない架空の請求書を偽造するなどにより、外注先への経費の支払いを装って弊社預金口座から不正に払い戻しを行い、私的に流用していた、合計4億6600万円の業務上横領として逮捕され、2月9日に起訴されています。

従業員による会計不正・着服はなぜ起こってしまうのか?

従業員は、なぜ会計不正をしてまで金銭の着服をしてしまうのでしょうか。

従業員側の原因と会社側の原因

過去の事例を分析すると、従業員が金銭を不正に着服する原因は、2つの角度から整理できるように思います。

  1. 従業員個人の金銭に対する欲求が高い(従業員側の原因)
  2. 会社が不正に着服されることを想定した組織・体制を作っていない(会社側の原因)

従業員側の原因は、

  1. 競馬やパチンコ、キャバクラ通い、ブランド物購入などで遊ぶ金が欲しいパターン
  2. 投資にハマったパターン
  3. 「推し」に使うパターン

などがあります。

会社側の原因は、

  1. 権限を持っている者が不正をすることを想定していないパターン
  2. 長期間異動しないので他からの牽制が効かないパターン

などがあります。

詳しくは以前に事例とともに解説しましたので、そちらを参考にして下さい。

従業員の金遣いの傾向を配属を決める際に考慮すべし

従業員側の原因と会社側の原因の組み合わせから言える結論の一つは「会社のお金の近くに、金遣いが荒い人、財布の紐が緩い人、ギャンブル好きは近づけない」ということです。

結論を見たら当たり前に思えるかもしれませんが、それができていないから不正が相次ぐのです。

今回取り上げた4つのケースでは、容疑者が不正領得した金銭の使途は、

と、報じられています。

財布の緩さ、浪費癖、ギャンブル好きという傾向が共通しています。

「自分の給与でやりくりできなくなれば、会社の金に手をつけるだろう」と容易に想像できる人たち、と言ってもいいでしょう。

そんな人を会計の担当者に配属する、配属させ続けることは、どうぞ不正をしてください、と会社が許容しているのと同じです。

不定期かつ突発的な人事ローテーション

問題を起こした人も、会計の部署に配属された当初は、財布の紐が堅い、浪費もせず、ギャンブル好きではなかったのかもしれません。

しかし、会社や団体のお金という桁の違う金額を扱っているうちに、徐々に金銭感覚が麻痺していくことはあり得る話しです。

麻痺している内に会社のお金に手をつけてしまうということは起きがちです。

なので、金銭感覚を麻痺させないためにも、不定期かつ突発的な人事ローテーションは不可欠です。

定期的な人事ローテーションだけでは、不正に手を染めた人が「そろそろ異動かもしれないから、バレないようにしておかないと」と、人事異動を見越して数字のつじつま合わせをすることが可能になってしまいます。

また、人事異動の辞令を発してから人事異動までに期間があるときも、同じです。

違和感を覚えたときに対処する

億単位の横領はもちろんですが、100万単位の横領でも、本人のお金の使い方が変化したことに周りが気がつかないわけがありません。

中には社内では質素な風体のままでいて、贅沢していることがバレないようにしている人もいますが、滅多にありません。

ほとんどのケースが、「最近羽振り良いね」「良いもの着るようになった」「その給料で時計や車とかよく買えるね」「やたらと夜の店に行くけれど、給与でよくやりくりできるな」「同じくらいのポジション、給与のはずなのに、なんで贅沢ができるのかな」などと感じます。

会計の責任者に限らず、営業をはじめとする各部門の担当者や決裁権者など、お金を扱うポジションにいる人の羽振りが良くなったと周囲の人たちが感じるようになったときには、おそらく、人事部やコンプライアンスに関する部署も空気の変化に気がつくことができるはずです。

そうした違和感を覚えたときには、「きっと何かがある」「不正に手を染めているかもしれない」と察して、その担当者を別の部署に異動し、ただちに会計不正をしている疑いのもとに過去を洗う必要があります。

会計不正ではなくインサイダー取引が出てくることがあるかもしれません。

調べても何も出てこなければ、それはそれで結果オーライです。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。
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