メルセデス・ベンツ日本が景表法違反で過去最高額の課徴金12億3097万円。課徴金減額のための自主的報告を活用するためには何が必要か。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

2024年3月12日、消費者庁は、メルセデス・ベンツ日本がGLA、GLB、AMGに関して冊子(カタログ)やウエブサイトに「標準装備」として表示していた装備品の一部が、実際には標準装備ではなかったことなどを理由に、景品表示法違反(優良誤認表示)として12億3097万円もの課徴金納付を命じました。

これまでは、景品表示法違反に基づく課徴金の最高額は、2023年4月11日にクレベリンの優良誤認表示に関して命じられた6億0744万円でしたが、今回はこれを大幅に上回りました。

※2024/05/29追記

2024年5月28日、消費者庁は中国電力に有利誤認表示を理由に16億5594万円の課徴金納付を命じました。

今回のケースで特徴的なのは、メルセデス・ベンツ日本は課徴金が50%減額される自主的報告制度(景品表示法9条)に基づく報告書を提出したにもかかわらず、GLA200dに関する報告書は自主的報告の要件を充たさないとして課徴金の減額が認められず、GLB200dに関する報告書のみが自主的報告の要件を充たし課徴金が減額されたことです。

消費者庁の公表資料には以下のとおり記載されています。

⑸ 自主的報告による2分の1減額の適用について
メルセデス・ベンツ日本は、
ア 前記2⑴アの「GLA200d 4MATIC」と称する普通自動車について、不当景品類及び不当表示防止法施行規則(平成28年内閣府令第6号。)第9条に規定する報告書の提出を行ったが、当該報告書の提出は、前記⑵の課徴金対象行為に係る景品表示法第9条に規定する報告に該当するものとは認められない。
イ 前記2⑴エの「GLB200d」と称する普通自動車に係る「AMGライン」と称するパッケージオプションについて、前記⑵の課徴金対象行為に該当する事実を消費者庁長官に報告したところ、当該報告は景品表示法第9条ただし書の規定に該当しないため、課徴金の額を2分の1減額する。

https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_240312_01.pdf

消費者庁からメルセデス・ベンツ日本に対する通知は次のとおりです。

そこで、今回は、景表法の自主的報告制度を取り上げます。

課徴金を50%減額するための自主的報告とは

自主的報告による課徴金減額制度

景品表示法9条は、

前条第一項の場合において、内閣総理大臣は、当該事業者が課徴金対象行為に該当する事実を内閣府令で定めるところにより内閣総理大臣に報告したときは、同項の規定により計算した課徴金の額に百分の五十を乗じて得た額を当該課徴金の額から減額するものとする。ただし、その報告が、当該課徴金対象行為についての調査があつたことにより当該課徴金対象行為について課徴金納付命令があるべきことを予知してされたものであるときは、この限りでない。

景品表示法9条

と定め、課徴金対象行為に該当する事実を自主的に報告した事業者に対し、課徴金の額の50%を減額することを認めています。

自主的に報告すれば課徴金の額を50%減額する恩恵を与えることで、事業者(会社)が景表法違反を自主的に解消するようになれば、長い目で見れば事業者が優良誤認表示や有利誤認表示などの不当表示をしなくなる、というメリットがあるからです。

独禁法のリーニエンシーや、先日記事にした下請法版リーニエンシーと狙いは同じです。

自主的報告のタイミングと方法

ポイントとなるのは、自主的報告のタイミングです。

景表法9条ただし書には「当該課徴金対象行為についての調査があったことにより・・・課徴金納付命令があるべきことを予知してされたものであるときは、この限りではない」と定められています。

消費者庁による調査が行われる前に自主的報告をしないと、課徴金の減額は認められません。

また、自主的報告の方法は、景表法施行規則9条が定める所定の報告書を用いて行います。

報告書の書き方は様式ファイルに記載要領が載っているので、それを参考にして下さい。

課徴金減額のための自主的報告制度を活用するために

日頃から景表法違反になる表示をしないように、防止策として、社内での表示管理体制を整備し機能させることは当然必要です。

しかし、カタログや小冊子などの配布やコマーシャルの放送などの方法で表示した後になってから景表法違反であると気がつくこともあるでしょう。

その場合には、景表法違反の表示をしていると気がついた時点で、いち早く表示を止め、かつ、消費者庁に自主的に報告することが求められます。

それができるようになるためには、

  • 自主的報告をすれば課徴金が減額になる「制度」の存在と社内で自主的に報告する「担当部署・窓口」の存在の両方を役員・従業員に周知する
  • 問題がある表示をしそうなときに、または後から気がついたときには、すぐに「この表示は問題があるのではないか?景品表示法違反ではないか?」などと社内で指摘しあい、自主的報告を行う担当部署に社内報告が上がってくる環境を整備する、

の2点を日頃から意識してください。

制度の存在を知らせるだけではなく、社内での担当部署・窓口までを役員・従業員に周知しておかないと、「景表法違反では?」と気がついた従業員がいても「誰に知らせたら良いの?」と迷ってしまいます。

そのため、自主的報告をすれば課徴金が減額になる「制度」だけではなく、社内の担当部署・窓口まで知らせておく必要があるのです。

さらには、実際に景表法違反となる優良誤認表示や有利誤認表示、最近ならステルスマーケティングをしていることに役員・従業員が気がついたときに、「他の部署がやっていることだから、自分には関係がない」と思わせないように、社内で指摘し合える雰囲気を作っておく、社内で報告できる環境を整備しておくことも重要です。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。
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