敷島製パンが小動物らしき異物が混入していることを理由に「超熟山型スライス」2種類を自主回収。危機管理として参考になるケース。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

GW後半に休みらしい休みをようやく取ることができ、頭がリフレッシュしました。ブログを更新できなかった間にいくつか興味深いケースが起きていたので、遡って取り上げていきます。

今回取り上げるのは、2024年5月7日に、敷島製パンによる「超熟 山型スライス」2種類を自主回収することを公表したケースです。

迅速な対応

毎日新聞の報道によると、5月5日に群馬県の購入者から異物がパンに練り込まれているとのメールが届き、7日にも群馬県の別の購入者から電話で報告があったことが異物混入が判明したきっかけのようです。

群馬県内の消費者から2件目の異物混入の連絡があった7日に、即、自主回収の判断に至ったのは対応が非常に早いと言えます。

パンという人の口に入るものであること、同一県内の消費者からの連絡で拡大可能性が予見できたことが対応の早さにつながったのではないでしょうか。

先日小林製薬が紅麹に関連する健康危害に、月単位で対応したこととは雲泥の差でした。

要所を抑えた広報

敷島製パンの自主回収で際立つのは、広報している内容が要所を抑えていることです。

回収の対象がわかりやすい

敷島製パンのサイトでは、下記写真のように、「対象商品」との小見出しをつけ、「下記の条件(①~③)に全て当てはまるものが対象です」としたうえで、条件を箇条書きに列挙しています。

しかも、要件②③にあてはまっているか、どこを見たらわかるのかを商品の写真とともに案内しています。

こうした案内をすることで、不安を抱えている消費者をストレスなく誘導しています。

また、「超熟 山型スライス」を購入した日本全国の消費者に対して、「自主回収の対象になる人」「対象にならない人」の判断基準を示すことは、「対象にならない人」を安心させることにも繋がります。

安心した消費者は不安を解消され、それ以上、不満の声をSNSに書き込んだりすることはなくなるでしょう。

早期に事態を沈静化させることができます。

こういった手法は、敷島製パンに限らず商品の自主回収をするケース全般で、また、個人情報の漏えいのおそれがあるケース全般で参考にできます。

商品の自主回収の数、情報漏えいの数が大きければ大きいほど、会社の担当者としては数字を出すことを世の中の人たちを不安にさせることになるので躊躇するかもしれません。

しかし、数字を出すことも出し方次第では、不安になる人を減らす効果がある、ということは知っておいてほしいです。

よくある問い合わせにも対応済み

敷島製パンのサイトでは、下記写真のように、「商品の送付」についても「開封・喫食済みでも問題ございません」と案内しています。

消費者から「一部食べてしまったけれど対応してもらえるのか?」など、よくある質問に対応した案内と言えるでしょう。

また、「回収受付」の方法についても詳細に案内し、その際、着払いについては、「※着払いの伝票は、運送会社各社の店舗または、コンビニエンスストア等でお取り扱いがございます。」と案内しています。

これもまた、消費者から「着払いはどうやって行うのか?」などと、よくある質問に対応した案内です。

さらに、「※商品代金の代わりとしてクオカードを間違いなくご送付させていただきますため、必ず郵便番号、ご住所、お名前、お電話番号をお書き添えいただきますようお願い申し上げます。 」と、消費者が個人情報を躊躇なく提供してくれるように、何のために個人情報を提供してほしいのかを説明しています。

法的にいえば「利用目的の通知」ですが、畏まった形ではなく、消費者が抵抗感なく個人情報を記入しやすいように案内している点は工夫されているように思えます。

全体的に、消費者の立場から何を知りたいかに配慮した案内をしている印象を受けます。

よくある質問、よくあるお問い合わせのページを作成するケース

最近は、大規模な不祥事などでサイト上に「よくある質問(FAQ)」のページを作るケースも増えてきました。

例えば、2018年に発覚したレオパレスの施工不備のケースでは、「当社施工物件における施工不備問題の対応について」と題する専用ページを設け、そのトップページに「よくあるお問い合わせ(FAQ)」をメニューとして表示しています(下記スクショ)。

そのメニューをクリックすると、「よくあるお問い合わせ(FAQ)」のページに進みます(下記スクショ)。

ここでも、質問を大きく4つに分類し、さらに、誰が質問してくるのかという観点から、質問者別に問い合わせと回答内容を整理しています。

2024年1月1日に発生した能登半島地震に関して、石川県が設けた臨時サイトも同様の観点から情報が整理されています。

対応の迅速さと、広報の案内のわかりやすさなど、他社も参考にしてみたらいかがでしょうか。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。
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