はごろもフーズのシーチキンに生きた虫が混入していたとの動画投稿が拡散。異物混入がSNSに投稿・拡散されている場合の食品会社の危機管理。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

2024年3月20日、はごろもフーズの「シーチキンSmile オイル不使用マイルド」に「生きたウジ虫3匹出てきた」などと主張する動画が、「#大手食品ウジ虫混入謝罪なし」とのハッシュタグをつけてXに投稿され、拡散されました。

ITメディア(ねとらぼ)からの取材に対し、はごろもフーズは、

はごろもフーズによると、SNSの投稿は確認しているという。「一般的に缶詰やレトルトパウチ製品は、容器を密封した後に高温・高圧で殺菌しています。万が一、密封前に虫等が混入しても、生存できる環境ではありません」と説明している。「お客様のお申し出に対しましては現在調査中です。この度の件は個別の案件となりますので、詳細につきましては回答を差し控えさせていただきます」と取材に答えた。

https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2403/21/news156.html

と回答しています。

異物混入とSNSへの投稿

SNSが普及して以来、食品(外食、中食問わず)に虫などの異物が混入しているときに、食品会社に連絡するよりも先に、あるいは連絡と同時に、異物混入の写真や動画をSNSに投稿する消費者が増えてきました。

どんなに食品会社が製造過程で安全策を講じても、一定数(とはいっても極わずかですが)の異物混入が生じることは避けられません。

SNSに投稿されたケースではありませんが、直近では、551蓬莱の豚まんに樹脂片が混入していることが2日連続で判明し、約30万個を自主回収するケースが起きました(2024年3月17日読売新聞 、2024年3月18日読売新聞)。

とはいえ、異物が混入していることに直面する当事者になった消費者にとっては、異物混入は初めての体験でしょうから、異物が混入していることを周囲に知らせようと、SNSに投稿するなどの反応をしてしまうことも理解できないわけではありません

2014年12月には、まるか食品の焼きそばペヤングに虫が混入している写真がTwitterに投稿されたことをきっかけに、自主回収し、その後長期間にわたり操業を停止したケースも起きました(2014年12月11日東洋経済 、2014年12月11日日本経済新聞)。

2023年11月には、マフィンから食中毒が発生したとして、自主回収したケースも起きました。

SNSへの投稿が事業の継続や企業イメージに打撃を与えるので、どのように対応するかは、食品会社にとっては喫緊の課題です。

SNSへの投稿に対する基本的な対応策

SNSに投稿されていたとしても個別対応が原則

SNSに投稿されて拡散されたケースも拡散されていないケースもどちらも基本的な対応策は投稿者との個別対応です。

年がら年中、異物混入は起きていますから、そのすべてを公表していたらキリがありません。

そのため、現物を入手し、事実を調査し、調査結果に応じた適切な個別対応を講じることが原則です。

他方で、工場の特定のラインで製造された全商品や不特定多数の商品に異物が混入している疑いがあるようなケースでは、SNSに投稿されていようといなかろうと、そのラインで製造された全商品をリコールして自主回収することは必要です。

2024年3月26日には、マルコメがゴキブリと推定される虫の一部分が「プラス糀 生みそ 糀美人」に混入していたことを理由に、製造ラインの特定には至らなかったものの、自主回収することを公表しました。

今回のはごろもフーズのコメントを見ると、原則に基づいて対応しようとする姿勢であることがわかります。

はごろもフーズでは、2016年10月にツナ缶に虫が混入していたことをきっかけに、協力会社である興津食品に損害賠償を請求し、約1億3000万円の支払いを命じる判決まで至ったこともあり(静岡地裁2022年11月8日。その後東京高裁に控訴。)、今回の件にも慎重に対応しているのだろうということが伺えます。

SNSの投稿が拡散されている場合には消費者全体に対して情報発信

しかし、SNSへの投稿が拡散され大きな話題になっている場合や、ネットニュースにまで取り上げられた場合には、食の安全や衛生に対する不安を抱く消費者の方も少なくありません。

まるか食品のペヤングのように、1件の投稿から自主回収、操業停止に発展するケースもあります。

そうであれば、投稿が拡散されている場合やネットニュースにまで取り上げられた場合には、個別対応だけではなく消費者全体に対しても情報を発信することをお勧めします。

広報によって、消費者の不安感を払拭し、安心感や会社への信頼感を取り戻すため、です。

食品会社にとっては避けられないケースの場合

食品会社にとっては「よくあるケース」であっても情報を発信する

SNSに投稿された写真や動画をみる限り、たしかに異物が混入しているが、しかし、食品会社にとっては避けられないケースや食品会社に非はなく頻繁にあるケースの場合には、どう対応すべきでしょうか。

食品会社の担当者がSNSに投稿された写真や動画を見れば、「あ、これはよくあるパターンだ」とすぐにわかる場合です。

製造工程での品質管理、衛生管理に問題はなかったけれども、出荷後搬送中に異物が混入したり、店頭陳列後に異物が混入したケースが典型です。

この場合も、消費者の立場からは異物が混入していたことに変わりはなく、食の安全や衛生面に対する不安を抱えることは予期できます。

そのため、食品会社は「よくある」では済ませずに、「不快な思いをさせた」ことについて一言お詫びをしたうえで、食品会社には非がないことを対外的に説明することが求められます。

対外的な説明の方法としては、自社サイトにリリース・お知らせを載せる方法がオーソドックスではありますが、企業の公式SNSアカウントがある場合には、SNSアカウントにて説明しても構いません。そのほうが拡散されるからです。

その時に気をつけなければならないのは、単に「問題ありません」ではなく、問題がないことを裏付ける根拠を一緒に示すことです。

チロルチョコの公式アカウントでの対応

今から10年以上前ですが、2013年6月にはチロルチョコに芋虫様の異物が混入しているとの写真がTwitterに投稿されたことがありました。

これに対し、チロルチョコの公式アカウントは、

  • 写真からわかる内容として「現在ツイートされている商品は昨年の12月25日に最終出荷した商品で掲載されている写真から判断しますと30日~40日以内の状態の幼虫と思われます。」と説明し、
  • 出荷後に虫が混入することについて、日本チョコレート・カカオ協会のサイトに掲載されている「よくある質問」を紹介する

という対応をしました

秀逸だったのは、日本チョコレート・カカオ協会のサイトに掲載されている「よくある質問」を紹介した点です。

この紹介によって、虫の混入は業界ではよくあること、一般的にも疑問に思っている人が多く投稿者や「勘違い」や「無知」ではないことを明らかにし、投稿者に「恥をかかせる」ことを回避することもできました。

投稿者による嫌がらせの場合

他方で、SNSへの投稿者が嫌がらせ目的で投稿する場合や事実無根のデッチ上げを投稿する場合もあります。

先日も取り上げた大阪王将のケースも、この部類に属すると理解してよいでしょう。

この場合には、会社としては、偽計業務妨害、威力業務妨害、軽犯罪法違反(業務妨害)、信用毀損などを駆使して、然るべき法的措置を講じることと、その旨を宣言する声明を出すことが、他の消費者の不安を解消することにもなります。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。
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