カッパ・クリエイトが不正競争防止法違反(営業秘密侵害罪)で罰金3000万円。営業秘密侵害罪の両罰規定が適用された事例。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

2024年2月26日、かっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイトが、はま寿司の親会社であるゼンショーホールディングスの営業秘密を不正に取得し、または不正取得の上使用した不正競争防止法違反(営業秘密侵害罪)の両罰規定の適用により、罰金3000万円を命じられました。

営業秘密侵害罪の両罰規定適用は初めて?

営業秘密侵害罪の両罰規定(不正競争防止法22条1項2号)は、1993年の不正競争防止法改正で新設され、その後、2006年、2015年と二度にわたって罰金額が引き上げられました。

周知表示混同惹起行為についての両罰規定が適用された裁判例はありますが(名古屋地裁2022年12月16日)、営業秘密侵害罪の両罰規定が適用されたのは珍しいと思います(LEX/DB判例データベースでは見当たりませんでした)。

もしかしたら初めてなのかもしれません。先例があったら教えてください。

営業秘密侵害罪の両罰規定が適用される構成要件

両罰規定が適用される営業秘密侵害行為

「両罰」なので、法人であるカッパ・クリエイトに営業秘密侵害罪の両罰規定が適用されるためには、法人の代表者または使用人(従業員)が営業秘密侵害罪で処罰されることが必要です。

ただし、営業秘密侵害罪のうち、

  • 正当に示された営業秘密を不正に使用等する行為(不正競争防止法 21 条1項3号~ 6号)は、両罰規定の対象から除外されています。
  • 自らが正当にアクセスする権限のない営業秘密を不正に取得、又は不正取得の上使用・開示する行為(21条1項1号、2号、7号)は、両罰規定が適用されます

元社長と商品企画部長が行ったそれぞれの営業秘密侵害行為

今回のケースは、カッパ・クリエイトの元社長が、ゼンショーHDを退職する直前の2020年9月から11月にかけて商品原価や仕入価格などはま寿司の営業秘密をアクセス権限のある当時の部下に命じて入手し、カッパ・クリエイトに転職した2020年12月に商品企画部長に営業秘密をメールで開示し、はま寿司との商品原価の比較データなどを作成した、というものです。

カッパ・クリエイトの元社長は、2023年5月31日に、不正競争防止法違反として懲役3年、執行猶予4年、罰金200万円を命じられています。

判例データベースには判決文がまだ掲載されていないので断言できませんが、元社長は、アクセス権限のある部下から入手したので、営業秘密の不正取得、使用・開示(不正競争防止法21条1項3号、4号、5号)が適用されたのかもしれません。

もしそうだとすると、法人であるカッパ・クリエイトに両罰規定を適用する構成要件を充たしません。

今回の判決では、カッパ・クリエイトの商品企画部長が不正競争防止法違反(営業秘密侵害罪)で懲役2年6月、執行猶予4年、罰金100万円の有罪判決を受けています。

こちらも判例データベースには判決文が掲載されていないので断言できませんが、元社長からメールで開示された営業秘密を使用しているので、不正競争防止法21条1項7号が適用されたのだろうと推測できます(あくまで判決文未公表時点での推測です)。

これによって、カッパ・クリエイトに両罰規定が適用される構成要件を充たします。

転職者による情報の持ち込みと持ち込まれた情報の利用を防ぐ

かっぱ寿司に両罰規定が適用されたことは、

  • 実務的には転職者による情報持ち込みを防止すること
  • 持ち込まれた情報を転職先企業がいかに利用しないようにするか

を、転職先企業が新件に考えなければならない問題提起になっていると思います。

従前は、ライバル企業の営業職が顧客名簿を持ち出す、技術者が技術を持ち出すことを期待して、同業他社から転職者を採用することがよくありました。

まして、転職が活発になった今の時代は、同業他社からの転職者が少なくありません。

転職者の受入れについて情報管理の観点から注意すべき点については、以前にブログ記事にしていますので、そちらを見てください。

今回の判例の争点と今後

争点は「営業秘密」であるか否か

報道を見ていると、カッパ・クリエイトと商品企画部長は、元社長がメールで開示した情報が不正競争防止法の「営業秘密」に該当しないと争っていたようです。

これに対して、裁判所は、「はま寿司の事業活動に有用な技術上または営業上の情報」として、「営業秘密」であることを認めました(2024年2月26日日経電子版)

今後の展開

元社長がはま寿司から持ち出した営業秘密は、カッパ・クリエイトと同じコロワイドのグループ会社であるコロワイドMDにも提供されていたようです。

そのため、2023年12月27日には、はま寿司は、カッパ・クリエイト、元社長、コロワイドMDの3社に対して、合計5億円の損害賠償請求、営業秘密の差止・廃棄を求めて提訴しています。

今後は民事でも「営業秘密」の該当性が争われることになりそうです。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。
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