新型コロナ関連の給付金・補助金の不正受給が全国各地で相次ぐ。不正受給は会社の延命ではなく倒産を招く。不正受給が判明した後の危機管理を考える。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

新型コロナ関連の給付金・補助金を不正受給したケースが日本全国で相次いで発覚しています。

2023年6月21日には、GoToトラベルで給付金7000万円を不正受給したとして3人が逮捕されました。

今回は新型コロナ関連の給付金・補助金の不正受給は会社を倒産させる要因になること、不正受給をしてしまった場合にはどうしたらよいか事後対応について説明します。

新型コロナ関連の給付金・補助金の不正受給の実態

新型コロナ関連の給付金・補助金を不正受給した人向けに、中小企業庁が給付金返還用の専用サイトを設置しています。

わざわざ専用サイトを設置するほどですから、相当数の不正受給があることがわかります。

経産省のサイトによると、例えば、持続化給付金を自主返還した者は、

  • 返還申出件数:24,416件
  • 返還済み件数:19,489件
  • 返還済み金額:約19,139百万円

もいます(2023年6月15日時点)。

不正受給は倒産原因の上位に位置する

民事、刑事、行政上の制裁

不正受給が明らかになった場合には、民事、刑事、行政それぞれの制裁があります。

具体的には、

  1. 各種給付金の全額に、不正受給の日の翌日から返還の日まで、年3%の割合で算定した延滞金を加え、これらの合計額にその2割に相当する額を加えた額を請求され
  2. 申請者の屋号・雅号・氏名等を経済産業省その他行政のホームページで公表され
  3. 事案によっては刑事告発されます。

近畿日本ツーリストが業務受託費用14.7億円を過大請求し、詐欺で3名の逮捕者を出したケースも不正受給の一つとして捉えてよいかもしれません。

不正受給は倒産原因で上位に位置する

また、不正受給をしたことは会社の倒産原因にもなります。

補助金・給付金を不正受給した会社は、経済的に困窮していることが動機になったはずです。

そのため、不正受給した補助金・給付金のおかげでV字回復した会社なら話しは別ですが、補助金・給付金で延命しただけの会社の場合には、不正受給が発覚し全額を返還し、かつ、加算金をも支払うことになれば、元の苦しい状態よりも苦しい状態になることは容易に想像できます。

実際、帝国データバンクが発表している「コンプライアンス倒産違反企業の倒産動向調査(2022年版)」では、不正受給による倒産件数が2021年度比で2倍に増加し、直近5年間でも最多です。

その他の倒産原因も、架空の売り上げの計上や融通手形などの「粉飾」、所得・資産の隠蔽などの「脱税」、「資金使途不正」などが財務関係を原因とするものが上位を占めています。

帝国データバンクの調査では

「粉飾」は、20 年度以降、ゼロゼロ融資等の資金繰り支援の効果もあり件数は減少に転じて
いたが・・・借入金の返済が厳しくなり、金融機関に対して追加支援を申し入れた際に不適切な会計処理が明らかになるケースが多くみられた

と分析されています。

不正受給が判明した後の事後対応

自社が不正受給していた場合

不正受給していた給付金・補助金の返還と危機管理

自社が給付金・補助金を不正受給していた場合には、ただちに給付金・補助金を返還しなければなりません。返還が遅れればその分利息が増えることになります。また、刑事告発されるリスクも増えます。

こうした対処をして企業価値の毀損を最小限度に留めること、さらには会社の信頼回復・維持に努めることは取締役の善管注意義務です。

そのため、

  1. 不正受給の実態・原因についての社内調査の実施
  2. 必要に応じて関与していた役員・従業員の処分
  3. 危機管理広報としての公表(規模によっては記者会見)
  4. 上場している会社であれば給付金・補助金の返還による財務へのインパクトの開示

が必要です。

受託業務費用を過大請求した近ツーの場合は、

を明らかにしています。

内部統制の見直し

また、取締役は不正受給の再発防止を防ぐために、

  • 社内組織・規程の見直し(既存の内部統制制度の検証)
  • 従業員教育・研修のやり直し(外部から講師を招くなど緊張感を持たせる)
  • 内部監査などモニタリングの徹底(内部監査人の異動を含む)

などの内部統制の整備と機能の再確認を行うことも不可避です。

以前の投稿でも紹介した日本システム技術判決事件を参考にしてください。

また、他の取締役が関与していないかについても監視監督する義務があります。

取引先が不正受給していた場合

取引先が不正受給していた場合、取引先の倒産リスクがあります。

そのため、何よりもまず、売掛金の回収など債権保全を最優先に考えてください。

そのうえで、不正受給していた会社と今後も取引を継続するのか否かをコンプライアンスに照らして考えることが必要です。

まとめ

給付金・補助金の不正受給をしない会社はほとんどだと思いますが、万が一、どこかの支店単位や営業所単位では不正受給していたはありうる話しです。

不正受給が発覚したときには返還するのは当然として、危機管理対応、内部統制の見直しはきちんと行う必要があります。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。
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