加熱調理用の牛肉を「馬刺し」と称して販売したら罰金刑。商品やサービスの内容や品質の表示を管理する社内体制は整備されていますか?

こんにちは。
弁護士の浅見隆行です。

4月13日、加熱調理用の牛肉を「馬刺し」と称して販売していた食肉販売会社「伊藤の肉」とその社長が不正競争防止法違反によって罰金刑を命じられました。

愛媛県西条市にある食肉販売会社「伊藤の肉」が、加熱調理用の牛肉を「馬刺し」と称し販売していた問題。 西条区検は13日までに、不正競争防止法違反の罪で、会社と伊藤康文社長を不正競争防止法違反の罪で略式起訴し、西条簡裁は会社に罰金60万円、伊藤社長に罰金30万円の略式命令を出しました。

2023.4.13あいテレビ

今回は、このケースを題材に、商品やサービスの広告に内容や品質などを偽った表示をしないように予防するための社内体制のあり方について説明します。

商品・サービスの内容や品質の表示についてのルール

(不正競争防止法と景品表示法についてご存知の方は体制の章まで読み飛ばしていただいて結構です。)

商品やサービスの内容を少しでも良く見せるために、内容や品質がどれだけ優れているかをアピールする表現を使うことは避けられません。
しかし、アピールが行き過ぎて虚偽・誇大になれば、それは嘘をついて騙しているのと同じです。
そこで、商品やサービスの内容や品質を表示することについてはルールが定められています。

どのジャンルの事業活動にも関わるルールが不正競争防止法景品表示法です。

これとは別に、例えば、薬機法、食品衛生法や食品表示法など特定のジャンルを対象としたルールも存在します。なお、「伊藤の肉」は、4月7日には、食品衛生法を理由に7日間の営業停止処分にも命じられています。

不正競争防止法

不正競争防止法は、

  • 商品については、原産地、品質、内容、製造方法、用途、数量を誤認させるような表示
  • 役務については、質、内容、用途、数量誤認させるような表示

を「不正競争」として規制しています。「役務」というのは、サービスのことを意味します。

これは、ライバル企業と「正しく競争していない(正々堂々と競争していない)」という観点からの規制です。

そのため、商品と役務の両方に共通して規制されているのは「誤認させるような表示」なので、その表示を見た人が実際に誤認したという結果までは必要ありません。実際に誤認という結果がなくても、誤認させるような表示をする行為が「正しい競争」ではないからです。

商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為

不正競争防止法2条1項20号

今回のケースで、「伊藤の肉」の会社と社長が罰金を受けたのは、この不正競争防止法に違反したことが根拠になっています。

企業(法人)の商品やサービスの表示が不正競争防止法違反になったときにも、まず、懲役刑や罰金刑が科されるのは表示の担当者という個人です。
法人は懲役に服することができないからです。

企業(法人)や社長は何も刑を科せられないのかというと、不正競争防止法に違反して、企業(法人)の代表者や従業員が業務に関して誤認表示をしたときには、表示した代表者や従業員だけではなく、企業(法人)も3億円以下の罰金刑に科されます。

景品表示法

景品表示法は、

  • 商品とサービスの品質、規格、その他の内容について、一般消費者に対して、実際のものよりも著しく優良であると示す表示

を規制しています。これを「優良誤認表示」と言います。

これは、消費者が騙されないようにとの消費者を保護する観点からの規制です。

そのため、「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」が規制されていて、消費者が実際に誤認した結果までは必要はありません。

事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

景品表示法5条1号

なお、景品表示法は、優良誤認表示とは別に、取引条件についての有利誤認表示、おとり広告やステルスマーケティングなどの「その他の表示」も規制しています。

景品表示法に違反する優良誤認表示をしたときには、消費者庁または都道府県から、その表示を止めるようにとの措置命令、その表示をした期間中の売上の3%を課徴金として支払うように命じられます。

表示に関する規制に違反しないように予防するための社内体制

表示管理体制を整備しなければならない法律上の義務

不正競争防止法は、社内体制について特にルールを定めていません。一方、景品表示法は、表示を管理する体制を整備することを義務づけています。

事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、景品類の提供又は表示により不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害することのないよう、景品類の価額の最高額、総額その他の景品類の提供に関する事項及び商品又は役務の品質、規格その他の内容に係る表示に関する事項を適正に管理するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。

景表法26条1項

不正競争防止法では規制がありませんが、結果的に、企業は、広告、カタログやパンフレットに表示する商品やサービスの品質や内容などについては、社内ルールや組織・部署を定めるなどしなければならないことになっています。

この体制が整備されていないときには、消費者庁から勧告され、かつ公表されます。

2014年の改正で義務づけられてから10年近くが経ちますが、あまり認知されていないと言ってもいいかもしれません。

整備すべき表示管理体制の内容

景品表示法で義務づけられている表示管理体制として、何を定めるべきかは、消費者庁がガイドラインを出しています。

ガイドラインの内容を踏まえると、各企業が整備すべき体制のポイントは以下の5点に集約できます。

  1. 大企業と中小企業で求められている水準は違う
  2. 役員・従業員を教育する
  3. 表示の表現だけではなく根拠についての確認し、記録・保管する
  4. 表示している内容や根拠を社内で共有する
  5. 万が一のときには迅速に事後対応する

大企業と中小企業で求められている水準は違う

1つめは、小規模企業者やその他の中小企業者については、その規模や業態等に応じて、体制を整備していればよい、ということです。

ガイドラインでは、小規模企業者、中小企業者は、商品やサービスの内容や品質に関する不当な表示を防止するために十分な措置を講じていれば、必ずしも大企業と同等の措置まで求められる訳ではない、としています。

しかし、「十分な措置」を講じることは必要としています。

ガイドラインでは、チェック担当者・責任者を定めることと、社内方針を明確化することは要求されています。

そのため、

  • 広告、商品、カタログなどに表示する内容を最終決定するための社内手続を定めること(どんな社内稟議が必要なのか、誰がルールを定めるのか)

  • 使っていい表現や使ってはいけない表現について社内ルールやチェックリストを定めること

  • 定めた社内手続どおりに、広告、商品、カタログなどに表示する内容について、表示をチェックする担当者・責任者の決裁を得ること

は必要です。

これは、3と4のポイントにも関わってきます。

役員・従業員に対する教育

2つめは、役員・従業員に対する教育です。

商品やサービスの表示について社内ルールやチェックリストを定めたとしても、それを社内で誰もその存在を知らない、そのルールやリストの内容を理解していないときには、ルールを定めた意味がありません。

そこで

  • 不正競争防止法や景品表示法がどのようなルールで規制しているのか
  • 法律のルールに違反したときには、個人としても会社としても罰金刑を科せられれることもあること
  • 社内ルールやチェックリストではどのような表現を使って良い、使ってはいけないとしているか

を、役員・従業員に認識してもらい、かつ、理解してもらうための教育、研修を繰り返し実施してください。

表示に関するニュースが報じられたタイミングで教育、研修を行うと、理解度は深まると思います。

表示した内容の根拠の確認、記録、保存、社内での情報共有

3つめは表示した内容の根拠の確認、記録、保存、4つめは社内での情報共有です。

これは、社内体制をどうやって機能させていくかという問題です。

具体的には、

  • 広告、商品、カタログなどに表示した表現や宣伝文句を裏付ける、実験データや論文など根拠資料が存在しているのかを確認すること(その確認のための社内手続、担当者・責任者を定める
  • 根拠資料に書かれている内容と、広告、商品、カタログなどに表示した表現の内容にズレがないかを確認すること
  • 根拠資料が存在していること、ズレがないことが確認できたら、根拠資料と確認する手続をしたことを記録して、根拠資料と一緒に保管すること
  • 広告、商品、カタログなどに表示する表現を考えるマーケティングや営業担当者と研究開発の部門の担当者が、相互に「この表現を使いたんだけど問題ないか?」「それは誇張しすぎなので正確ではない」「今回の研究からはそこまでは言えない」などとやり取りできるように情報を共有すること

が必要です。

万が一の事後対応

表示管理体制を整備しても、チェックが不十分であったりして、不正競争防止法や景品表示法に違反する表示をしてしまう可能性は否定できません。

こうした場合を想定して、万が一、違反した表示をしたときには会社としてどうやって事後対応をするか、危機管理の体制も整備しておくことも必要です。

まとめ

商品やサービスの内容、品質を表示することについて、不正競争防止法と景品表示法のルールが存在していることは、ご存知の方が多いと思います。

しかし、社内で考えた表示がルールに違反していないかどうかをチェックする体制が整備されていない会社は少なくないと思います。

万が一のことが起きないようにするために、早めに表示管理体制を整備して、機能するようにすることをオススメします。

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アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。
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