オイシックス・ラ・大地会長がALPS処理水を「放射能汚染水」と表現してSNS投稿し炎上。会長への厳重注意と懲罰委員会を開催へ。社長・役員のSNS炎上に対して会社が講じるべき危機管理。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

2024年2月12日、オイシックス・ラ・大地(以下オイシックス)の藤田会長がALPS処理水に関して「放射能汚染水」と表現してXに投稿したことに批判が集まり、投稿を削除しました。

なお、藤田会長はそれ以前にも同旨の投稿を繰り返していたようです。例えば、2024年2月10日には以下の投稿をしていました。こちらも削除されています。

また、これを受けて、オイシックスは、公式サイトにお詫びを掲載し、会長本人に対する厳重注意の実施と懲罰委員会を開催することを明らかにしました。

※2024/2/23追記

オイシックスは、2024年2月22日、懲罰委員会の結果、藤田会長を2024年3月末までの停職処分としたところ、藤田会長(取締役ではない)が同日付けで辞任したことを明らかにしました。

また、高島代表取締役社長は、藤田会長に対する監督責任として、2024年3月末まで役員報酬10%自主返納することを申し出ました。

社長・役員のSNS利用もリスクとして捉える必要がある

最近は、アルバイト・従業員、店舗への来客者による投稿が炎上することに注目が集まりますが、その一方で、オイシックスのように経営トップがSNSに投稿した内容や発言に不適切であるとの批判が集まり炎上するケースも少なくありません。

焼肉ライクのケース

2022年10月26日には、焼肉ライクの社長が「『焼肉ライク行くよりスーパーで買った肉を家のフライパンで焼いた方が安いんだよな…』というつぶやきがイラッとしました笑」という投稿をしたところ、批判が集まりました。

社長個人の感想を投稿しただけで炎上するほどの内容ではないと思うのですが、社長は批判を受け「Twitterをやめることにしました」と反応しました。

レゴランドのケース

2024年1月17日には、レゴランド・ジャパンの社長が、年間パスポートを保有する来場者が被った入場時のトラブルに関して、来場者とDMでやり取りした内容のスクリーンショットを無断でXに掲載し、かつ、「問題提起ありがとうございます」「私自身も問題をクリアにする必要があり」などと上から目線であったこと、お詫びの言葉や謝罪の姿勢がないことなどから批判が集まりました。

社長の投稿は、その後削除されました。

社長・役員のSNS利用にも危機管理が必要

社長・役員がSNSへの投稿を通じて、自身の個性を見せていくことは新たなファンの獲得のために有益です。

しかし、SNSへの投稿をきっかけに炎上した事例が相次ぐと、会社は社長をはじめ役員によるSNSへの投稿にもリスクがあると認識して、危機管理が不可欠です。

社長・役員を牽制するために予防策を講じることはガバナンスです。

社長・役員のSNS利用に対する危機管理

社長・役員の不適切投稿を牽制するための基本

社長・役員がSNSに不適切な投稿をして炎上することを防止する方法は、会社のSNS公式アカウントの運用や従業員がプライベートでSNSを利用する際に炎上を予防する方法と基本的に同じです。

会社としてSNSの利用に関するガイドライン、ポリシーを定めることが基本です。

ガイドラインやポリシーについては以前に日本IBMやコカコーラの事例を紹介しましたので、そちらをご覧下さい。

また、PR TIMESの記事にも多くの事例や共通するポイントが紹介されていましたので参考になると思います。

ただし、これはあくまで基本です。

社長・役員の不適切投稿を牽制するためのプラスα

社長・役員による不適切な投稿を牽制するためには従業員に対するものにプラスαが必要です。

会長、社長、専務、常務は、どこの会社も代表としての業務執行権限を与えているはずです。

危機管理の観点から言えば、会長、社長、専務、常務が社名を明かしてSNSを利用しているときには、たとえプライベートな投稿であったとしても、会社の業務執行としてSNSに投稿していると理解すべきです。

法律上は業務執行ではないかもしれませんが、危機管理の観点からは、世の中の人たちにどう映るか(社長としての発言として映る)を常に意識して投稿する必要があります。

そうすると、少なくとも以下の点を意識すべきだと思います。

  1. 上から目線での投稿はしてはいけない
    • 社内では誰からも物を申されることはないかもしれません。しかし、SNSユーザーは部下ではありません。上から目線で偉そうな投稿は、叩かれる温床です。
  2. 乱暴な口調での投稿はしてはいけない
    • これも1と同じです。加えて、乱暴な口調の投稿をすると、世の中の人たちには「普段からこういう態度なんだろうな。ブラック企業なのかもね」と誤解され炎上する元になります。
  3. 政治的・宗教的意見が分かれる内容は傾向企業でない限り一方に寄せた投稿は避ける
    • 政治的・宗教的に偏っていることを明らかにした傾向企業であれば、政治的・宗教的に偏った意見を投稿しても良いでしょう。しかし、そうでない企業の場合には、SNSユーザーだけではなくお客さま・取引先と政治的・宗教的意見が対立することは、事業活動にはプラスには働きません。中立的な投稿が望まれます。
    • 今回のオイシックス会長の投稿は、この部類に属すると言ってもいいかもしれません。
  4. 金銭の浪費と誤解される投稿は避ける
    • 役員ともなれば報酬の額は従業員のときの給与の額とは段違いに増えます。そのため、プライベートでその報酬で贅沢することに問題はありません。むしろ経済を回すことになります。しかし、その贅沢をSNSに投稿することには慎重になった方が良いでしょう。簡単に言えば、部下である従業員たちの心が離れるからです。
  5. 社会的責任(CSR)が問われる投稿は慎重にする

社長・役員がSNSに投稿した内容が炎上した後の危機管理

社長・役員がSNSに投稿した内容が炎上した後には、会社はその信頼を低下させないために、危機管理が必要です。

その際に意識すべきことは、炎上した核心となる原因についての会社の考えを示すことです。

今回のオイシックスの会社のリリースには

今回の藤田の発言内容は、当社の考えとは全く異なり、不必要な不安を煽り、根拠のない風評被害に発展する可能性があるものとして、極めて不適切で容認できるものではないと考えております。

https://www.oisixradaichi.co.jp/news/posts/20240215/

と、なぜ会長の投稿が許されないのか、その核心に応えています。

2022年4月に吉野家HD執行役員兼吉野家常務取締役が、大学でのマーケティング講座で不適切な言動をし、それがSNSで拡散したケースでも、吉野家HDの謝罪及び執行役員及び吉野家取締役解任時リリースには

人権・ジェンダー問題の観点から到底許容することの出来ない職務上著しく不適任な言動があった

https://www.yoshinoya.com/wp-content/uploads/2022/04/19113244/news20220419.pdf

と、なぜその言動が許されないのか、その核心に触れていました。

こうした核心に触れることで、会社が「炎上したからとりあえず対応している」のではなく「きちんと問題意識を持って対応している」姿勢を世の中に示すことができます。

また、オイシックスの件では、会長に対する注意と懲罰委員会の開催まで言及されています。

この点は、会長に対して他の取締役による監視義務が機能していることを示すものなので、世の中の人たちから企業への信頼を取り戻すのに効果的な言及だと思います。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。
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