東宝の子会社TOHOシネマズが公正取引委員会に確約手続に基づく確約計画を申請。確約手続、確約計画とは何か?先行事例も確認しよう。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

東宝の子会社TOHOシネマズが映画配給会社に「圧力」をかけたことを理由に公正取引委員会から調査を受けた件に関し、TOHOシネマズが確約手続に基づく確約計画を申請したことが報じられました。

TOHOシネマズは、同日、これを認める声明を公表しています。東宝も開示しています。

※2023年10月3日追記

TOHOシネマズが申請した確約手続は、10月3日に公正取引委員会によって認定されました。

公正取引委員会のサイトに掲載されている事案の概要は以下のとおりです。

公正取引委員会による調査や課徴金、排除措置命令には聞き馴染みがあるとしても、確約手続や確約計画は初めて聞いた人も多いのではないでしょうか。

今日は、確約手続や確約計画の制度について説明します。

確約手続・確約計画とは何か?

公正取引委員会が独禁法違反を理由に課徴金や排除措置命令の法的措置を課すためには事実の調査や審査手続など時間や労力がかかり、また取消訴訟のリスクも残ります。それらを回避するために2018年12月から施行されているのが確約手続です。

手続の概要は以下のとおりです。

  1. 公正取引委員会は、確約手続に付すことが適当であると判断するとき、すなわち、公正かつ自由な競争の促進を図る上で必要がある(違反被疑行為が既になくなっている場合において公正かつ自由な競争の促進を図る上で特に必要があるときを含む)と認めるときに、排除措置計画・排除措置確保計画の認定申請ができると通知する(確約手続通知)。
  2. 通知を受けた事業者は、通知を受けとってから60日以内に確約手続申請する。確約手続を申請しない場合には、公正取引委員会は確約手続通知前の調査を再開する。
  3. 公正取引委員会は、事業者が提出した確約計画(排除措置計画と排除措置確保計画)が、確約手続通知で通知した内容に対応する措置内容として十分か(措置内容の十分性)、確約措置が実施期限内に確実に実施されるか(確保措置の確実性)を判断し、確約計画を認定/却下する。
  4. 確約計画が認定されると課徴金納付命令や排除措置命令は回避される。
  5. 確約計画が却下/認定後に取消しされると、公正取引委員会は確約手続通知前の調査を再開する。

詳細は、公正取引委員会の「確約手続に関する対応方針」に記載されています。

確約手続に基づく確約計画が認定された最近の事例

楽天の確約計画〜拘束条件付き取引の疑いに関する事例

2018年12月から施行されている確約手続によって公正取引委員会が確約計画を認定した国内第1号は、2019年10月15日に楽天に対するものです。

楽天が、「楽天トラベル」に掲載する宿泊施設と締結する契約にて、掲載する部屋の最低数の条件を定め、かつ、宿泊料金及び部屋数を他の販売経路と同等又は他の販売経路よりも有利なものとする条件を定めたことが、「拘束条件付き取引」と疑われました

確約計画を見ると、拘束条件付き取引を止めること、それを取締役会で決議すること、従業員や消費者に周知することのほか、従業員への定期的な研修の実施などが盛り込まれています。

なお、2022年3月16日にはBooking.comが、6月2日にはエクスペディアが同様の拘束条件付き取引の疑いに関する確約計画が認定されています。

また、小売業者にコンタクトレンズの販売価格を広告に表示しないように要請し、かつ、ネット販売を行わないように要請していたなど拘束条件付き取引の疑いでは、2020年6月4日にクーパービジョン・ジャパン11月12日にシード2021年3月26日に日本アルコンが、それぞれ確約手続に基づく確約計画を認定されています。

一蘭〜再販売価格の拘束の疑いに関する事例

公正取引委員会は、2022年5月19日、一蘭が小売業者に対して即席麺の再販売価格の拘束をした疑いに関して、確約手続に基づく確約計画を認定しました。

公正取引委員会が公表した事案の概要は以下のとおりです。

日本メジフィックス〜私的独占・取引妨害の疑いに関する事例

公正取引委員会は、2020年3月12日、私的独占及び不公正な取引方法(取引妨害)の疑いに関して、日本メジフィックスの確約計画を認定しています。

公正取引委員会が公表した事案の概要は、以下のとおりです。

アマゾンジャパン〜優越的地位の濫用の疑いに関する事例

公正取引委員会は、2020年9月10日、不当な減額、金銭提供、返品など優越的地位の濫用の疑いに関し、アマゾンジャパンの確約計画を認定しています。

公正取引委員会が公表した事案の概要は、以下のとおりです。

以上のように、独禁法違反行為に確約手続は広く適用されています。

独禁法違反行為をした疑いのある会社にとっては、確約計画が認定されれば課徴金納付命令、排除措置命令を免れるので、経済的ダメージを回避できるメリットはありますが、それでも、確約計画に基づく措置を継続的に実施し、かつ、公正取引委員会に報告することが義務づけらるなど、相応の負担はあります。

そもそも独禁法違反行為の疑いがなければ、確約手続は開始されません。

予防策として、独禁法違反行為や下請法違反行為が起きないように日頃から社内での教育を十分に実施し、特に営業担当者には取引先に要求して良いこと/ダメなことの限界をよく理解させてください。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。
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