化粧品「クレイエンス」の広告用Twitterアカウントが「パクツイ」。運営会社ピアラが著作権を侵害した場合の謝罪は誰が行うのか。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

プレミアムアンチエイジングが販売する化粧品「クレイエンス」の広告用Twitterアカウントが2023年6月29日に投稿した内容に対し、あるTwitterユーザーが自己が過去(2020年4月19日)に投稿した内容と一字一句同じ内容であることを7月1日に指摘しました

これを受けて、プレミアムアンチエイジングとTwitterアカウントを運営しているピアラがそれぞれ以下のとおり公式サイトで謝罪しました。

Twitterアカウントの運営をPR会社などに委託している会社も増えています。今回のように、運営会社が不正・不適切な投稿をした場合、どのような危機管理をすべきでしょうか、特に危機管理広報について整理します。

委託先が起こした不正は、対外的には自社が起こした不正と捉えるべき

このケースでは、広告用Twitterアカウントを運営しているピアラが、他のTwitterユーザーと一字一句同じ内容の投稿をする著作権侵害行為(いわゆるパクツイ)をしました。著作権を侵害されたユーザーが第一の被害者です。

同時に、ピアラにアカウントの運営を委託していたプレミアムアンチエイジングも被害者です。

しかし、こうした場合、委託していたプレミアムアンチエイジングが被害者としての素振りを見せて対外的に振る舞うと、火の粉はプレミアムアンチエイジングに降りかかります。

プレミアムアンチエイジングが販売する化粧品「クレイエンス」の広告用Twitterアカウントがパクツイしたのですから、Twitterユーザーの目に見える加害者はプレミアムアンチエイジングだからです。

そのため、プレミアムアンチエイジングはピアラによるパクツイの被害者ではあるものの、Twitterユーザーに対してはパクツイの加害者の立場で危機管理広報することが必要です。

協力会社が製造しメーカーの名を付けて販売する商品を使用し、商品の瑕疵によってケガをした人がいた場合に、メーカーが「その商品を製造したのは委託した協力会社です」などと責任転嫁することは許されないのと同じです(よくありがちな失敗例です)。

プレミアムアンチエイジングの謝罪文では、パクツイの被害にあったTwitterユーザーに謝罪の言葉や管理体制の不十分さに言及しつつも、「広告代理店から謝罪を行うべく調整中」「当社からも謝罪を行います」などとピアラに責任を転嫁し、自分たちが謝罪する順番は2番手と思っていると読める文章が入っているのが残念です。

書くなら「広告代理店からも謝罪を行うべく調整中」ですし、文章の順番は、プレミアムアンチエイジングによる謝罪が先に来て、その後にピアラからの謝罪も調整中との内容を書くべきです。せっかく一文前にプレミアムアンチエイジングからTwitterユーザーへの謝罪の文章があるのに台無しです。

著作権侵害が発生した経緯としてプレミアムアンチエイジングがピアラに運営を委託していた事実を説明することと、ピアラが著作権を侵害したことについてプレミアムアンチエイジングが加害者の立場で謝罪することは似ていますが、記載すべき文章の表現が全然異なります。

今年の4月に発生した大阪府・大阪市が行うカジノリゾート(IR)構想のイメージ図が著作権侵害を指摘された際に、オリックスが公表したリリース文はその違いを理解した絶妙な表現になっています。

広告用Twitterアカウントの運営を任されていたピアラの責任

「クレイエンス」の広告用Twitterアカウントの運営を委託されていたピアラも、独自に公式サイトに謝罪文を公表しました。

そもそも協力会社による謝罪を公表する必要性があるのかという疑問もありますが、今回の場合、ピアラも東証プライム市場に上場しているので、社会的責任の大きさから独自の謝罪を公表したのだろうと推測できます。

上記の大阪府・大阪市のケースでも、関係各社がリリースを掲載しました。

ピアラの謝罪文で評価できるのは、著作権侵害の被害者であるTwitterユーザーへの謝罪と原因説明、再発防止策に終始していたことです。

この場合にもよくありがちな間違いが、運営会社(今回ならピアラ)が委託先(今回ならプレミアムアンチエイジング)に対する謝罪の文章などを公式サイトで公表してしまうケースです。委託先など取引先に対する謝罪は、あくまで取引関係上の問題であり内輪の問題なので、公式サイトへの公表ではなく個別に行うべきものです。今回、そうした間違った広報をせず、Twitterユーザーへの加害者の立場を徹底していた点は、危機管理広報としては良かったと思います。

まとめ

委託先や協力会社が不正・不祥事をした場合でも、真の被害者は誰なのか、真の被害者には誰が加害者に見えるのかということを考えて、委託元・注文主は加害者としての立場を徹して、危機管理の広報をすべきです。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。