仕事をするうえで大切にしている教え3点

こんにちは。
弁護士の浅見隆行です。

今日は、noteのお題にあった #大切にしている教え について書いてみます。

私が弁護士になってから、間もなく24年を迎えます。
弁護士になったのは25歳のときでした。社会人経験も浅かったので、教えに忠実に、緊張感をもって仕事をしていた・・・はずです。
しかし、20年以上が経つと仕事にも慣れ、初心を忘れつつあります。
そこで、自戒の意を込めて、#大切にしている教え を振り返ってみようと思います。

「違法だからダメ」ではなくて代替案を示す

1つめの教えは、「違法だからダメ」ではなく代わりになる案を示すということです。

弁護士の元を訪れるお客さん(私の場合は99%が企業)は、法律に違反しているかどうかの評価を聞きたいわけではありません。ビジネスをやりたいけれど法律上問題がないかを確認したい、問題があるなら別のやり方を教えて欲しいと思っているはずです。

それなのに、弁護士から「●●法にこういう決まりがあって、ここに違反している。だから、このビジネスはできません」という答えが出てきたとき、お客さんはどう感じるでしょう?
「できません」ではなく「どうすれば、できるようになるのか教えてよ」と考えているはずです。

お客さんの声に応えるためには、弁護士は「今のやり方だとできないけれど、法律の条文が『・・・』という前提を付けているから、今のビジネス案を『・・・』という方法に修正したらできるようになります」などの代替案を出してあげることが必要です。

当たり前ですが、意外とこれができていない弁護士が多いようです。
私がお客さんから「先生はこういう提案をしてくれるから相談しやすい」という声をいただくことが多いのは、他の弁護士の対応がそういうことなんだなと受けとめています(だから、あんまり他の弁護士にも知られたくない)。

このことは、弁護士になった当初から、師事していた中島茂弁護士からしつこく言われたので、今でも #大切にしている教え です。

お客様が何をしたら良いか具体例を示す

2つめの教えは、お客様が何をしたらよいか具体例を示すということです。

新しい法律やガイドラインなどルールができたとき、お客さんは、その新しいルールでは何ができるか、何ができないようになるか、何を義務づけられるのかなどを知りたがっています。
簡単に言えば、「で、結局、具体的に何をすれば良いの?」ということを知りたがっています。

既存のルールの場合でも同じです。
新しいビジネスを始めようとするときに、「どこまで許されるの?」「どうしたら法律上問題がないってことになるの?」ということを知りたがっています。

弁護士は得てして、法律やガイドラインの解釈に重きを落ちがちです。
法律の専門家なので当たり前です。
そこは否定しません。

でも、お客さんは法律の専門家ではありません。法学部やロースクールの生徒でもありません。
法律の解釈を知りたくて弁護士のところに相談に来ているのではなく(中には法律の解釈を知りたいという法務部の方もいますが)、「何ができるの?」「何をやってはいけないの?」の具体例を欲しがっています

法律やガイドラインといったルールと、お客さんのビジネスを繫ぐのが弁護士の仕事です。

これは、私が弁護士になった頃に、商事法務研究会(現在は株式会社商事法務)の大林譲さん(その後社長。故人)から厳しく言われた教えです。
大林さんが辞めた後は商事法務と私との付き合いはなくなってしまいましたが・・。
セミナーで話したり論文を書いたときに法律の解説・解釈だけで終わっていると、大林さんからは「何をしたら良いのか、もっと具体的に示したほうがよい」と意見してくれました。

弁護士の仕事をしている上でも、この教えは非常に役立っています。
お客さんが判断に困っているときに、「次は、これを、こういうやり方でやりましょう」「契約書に、こういう表現の条項を追加しましょう」「プレスリリースの文案、私が書きますね」など。
特に危機管理では、企業の担当者が直面したことがない状況での対応が求められるので、具体例を示してあげることは、その後がスムーズに進みます。

noteでも事例を取り上げたときには法律の解説だけで終わらずに、「事例を参考にしたら何をしたらよいのか」までできるだけ書くようにしているのは、この教えを守っているからです。

「AともBとも考えられる」ではなく方向性を示す

3つめの教えは、方向性を示すということです。
これは1つめの教えと2つめの教えの融合です。

弁護士はどうしても法律の解釈が分かれているときには、相談を受けたときに「こういうやり方もあるし、こういうやり方もできる。どちらにするのはお客さんが決めることです」とお客さんにボールを投げ返すことが少なくありません。

しかし、これでは、お客さんが悩んで相談に来たのに、その悩みをそのまま持ち帰らせるのと同じです。

「こういうやり方もあるし、こういうやり方もある」の後に、「でも、今回のビジネスだったらこっちのやり方で行くほうが良いと思います。こっちのやり方だとコストかかるのではないですか。」などと提案する。

そうすると、お客さんの背中を一押しできたことになり、お客さんも悩みを持ち帰らずに済みます。

もちろん、この場合でも、「会社に戻って検討したら、やっぱりもう1つのやり方でやることになりました」とあとで報告を受けることもあります。
それでも、お客さんが前に進めたのですから、どちらのやり方になっても弁護士に相談したことが役に立ったわけです。

番外編

最後に番外編です。

弁護士は、司法試験に合格した後に司法修習を受けます(研修です)。
私の場合は、神戸で実務修習を行いました。

そこで、私の担当だった橋詰均裁判官がおっしゃっていた言葉で「言いたいやつには好きに言わせておけ」というのがありました。

専門家が自分の判断に基づいて、当事者にしかわからない詳細をきいて責任をもって判断した。このときに、事情を知らない当事者以外があれこれ言ってきても、そんな批判には耳を傾ける必要はない。プロとして自分を強く持てという意味だと受けとめました。

教えというわけではありません。しかし、周りの声を気にしがちなタイプとしては、そういう考え方もあるのかと感じて、強く印象に残っています。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。