省エネ法に基づいて経産省に提出された定期報告書の任意開示制度を2024年から試行運用開始。本格運用は2025年からの予定。企業の社会的責任(CSR)、ESGの観点を考慮しても、上場プライム企業以外にはメリットがない。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

2023年11月28日、経産省は、省エネ法に基づいて経産省に提出された定期報告書を、資源エネルギー庁にて任意開示する制度について、上場プライム企業47社から開示宣言を得たことを明らかにしました。

定期報告書の任意開示制度とは

定期報告書の任意開示制度の狙い

ここ数年、上場会社では、企業の社会的責任(CSR)の一環としてESGへの積極的な取り組みを、株主・投資家から要請されています。

ESGに積極的に取り組んでいる上場会社には、株主・投資家(主に国内外の機関投資家)が株主総会で取締役の選任議案に賛成票を投じ、かつ、積極的に投資に応じる(反対に、ESGにそこまでではない会社には取締役選任議案に反対票を投じ、投資も積極的には行わない)、というものです。

そのため、上場会社は、ESGの1つである環境問題(E)に積極的に取り組んでいることを、株主・投資家に情報発信しアピールすることが求められます。

特に機関投資家が株主になっている会社や、これから積極的に出資を受けようとする会社は、なおさらです。

今年の株主総会前に脱炭素化への取り組みなどが問われたのは、こうした背景によるものです。

この流れで新設されたのが、省エネ法に基づく定期報告書の任意開示制度です。

省エネ法に基づく定期報告書の提出とは

「定期報告書の任意開示制度」とは・・の前に、その前提となる「省エネ法に基づく定期報告書の提出」とは何か、を確認しましょう。

2023年4月1日から施行されている改正省エネ法は、一定規模以上の(原油換算1,500kl/年以上使用する)事業者に、エネルギーの使用状況等(すべてのエネルギー使用の合理化、非化石エネルギーへの転換、電気需要の最適化)を、経産省に定期的に報告することを義務づけています(省エネ法16条1項など)。

この報告義務に基づいて行われるのが定期報告書の提出です。

定期報告書の任意開示制度とは

定期報告書の任意開示制度とは、経産省に提出された定期報告書を、資源エネルギー庁のウエブサイトに掲載することです。

ウエブサイトに掲載されることで、株主・投資家がそれを見て、上場プライム企業が省エネルギーに積極的に取り組んでいるかを判断することができるようになります。

経産省の解説サイトを見ると、就職活動にも影響すると期待しているようです。

学生が資源エネルギー庁のウエブサイトまで見るかどうかはわかりませんが、意識の高い学生なら見るのでしょうね。たぶん。

なお、開示のフォーマットも経産省が公表しています(上記リンク先)。

企業の担当者は負担が増えますね。お疲れさまです。

定期報告書の任意開示制度に取り組むべき企業

省エネ法に基づく定期報告書の提出、定期報告書の任意開示制度の成り立ち経緯からは、省エネルギーに積極的に取り組んでいることを株主・投資家にアピールし、株主総会でESGの観点からの議決権行使を期待している上場プライム企業や、投資家からの積極的な投資を受けようと考えている会社(上場プライム企業以外の会社も)は、定期報告書の任意開示制度を宣言すべきでしょう。

また、プライム以外の上場会社や上場していない会社でも、省エネ法の定期報告書の提出義務の対象となる原油換算1,500kl/年以上使用する事業者なら定期報告書は提出しなければなりません。

しかし、提出義務を負っていないプライム以外の上場会社や上場していない会社で、株主・投資家からESGについて強く要請されていない会社や、投資家からのESG投資に期待していない会社には、あまり必要がなく、メリットもない制度です。

提出する報告書の作成に向けたデータの収集や、作成作業そのものが担当者、ひいては会社全体の負担になるからです。

たしかに、プライム以外の上場会社や上場していない会社も、世の中の人たちから企業の社会的責任(CSR)、ESGは求められています。そのため、省エネルギーは取締役が経営判断する際の一要素ではあってよいでしょう。

とはいえ、報告書の作成に係る負担を考慮すると、提出義務を負っていないプライム以外の上場会社や上場していない会社は、余力があれば自社サイトに任意で情報発信すればよい、といった程度で十分だと思います。

労力に見合うだけのものがないなら、省エネ法に基づく定期報告書の提出、定期報告書の任意開示制度をわざわざ宣言する必要はありません。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。