女性役員の選任を推進する動きは本当に正しいのか?素朴な疑問をChatGPTに訊いてみた(1/2)

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

6月の株主総会を前に、上場会社が女性を役員の選任候補者にする話題が増えてきました。

男女が平等であることは望ましいことです。しかし、本当にこうした環境づくりが正しいのかというと疑問がないわけではありません。

そこで、今日は「女性役員の選任を推進することは本当に正しいのか?」について考えてみました。答えが出なかったので、最後はChatGPTに訊いてみました。

解説というよりコラムです。あまりに長くなったので2分割にしました。

女性役員の選任に向けた政府・機関投資家の動き

女性役員の推進については、内閣府の「女性活躍と経済成長の好循環実現に向けた検討会」で、金融庁、経産省を交えた議論が繰り返されています。

上場企業での女性役員の推進

上場企業における女性役員の推進については金融庁が具体案を示しています。

金融庁が2023年4月26日に公表した「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム」には、

女性役員比率の向上(2030 年までに 30%以上を目標)等、取締役会や中核人材の多様性向上に向けて、企業の取組状況に応じて追加的な施策の検討を進める

と明記され、コーポレートガバナンス・コードの改訂も狙いに入れているようです。

こうした議論を元に、

政府は東証プライム市場に上場する企業に、2025年をめどに女性役員を少なくとも1人登用するよう促す目標を設ける調整に入った。罰則のない努力義務とする想定だ。東証には上場規則への明記などを提案する。

東証プライム企業、最低1人は女性役員 政府が新目標:2023年5月21日付日本経済新聞

とも報じられています。

機関投資家の動き

女性役員を推進する背景には、機関投資家の動きやがあります。

世界最大級の政府系ファンドであるノルウェー政府年金基金は今年の株主総会から、女性取締役がいない日本企業の取締役会議長などの選任に反対することを表明しています。

年金などの資金を運用するニッセイアセットマネジメントやアセットマネジメントOneも同様の議決権行使基準を公開しています。

※どうでもいいですが、アセットマネジメントOneのサイトってhttps://に対応していないのですね。ハッキングされないのか心配です。

中小企業で女性が働きやすい環境の整備

他方、中小企業に関しては、経産省が2023年4月28日付で「中小企業における女性活躍推進について」とする文書を出し、

主要な中小企業向け補助金において、子育て支援・女性活躍推進企業に対して、加点措置を
講じる

ことを記載しています。

女性が働きやすい環境を促進するための施策です。

女性の労働者が増えている中では、女性が働きやすい環境の整備を求めるものなので、納得感のある提案です。

女性役員の推進に向けた素朴な疑問

ここからは上場企業の女性役員の推進に話を絞りましょう。

上場会社で女性役員を推進する流れはもう止められないでしょう。

もちろん、女性の労働者が増えているので、女性が職場で活躍することには賛成です。

しかし、女性役員の推進という形で占有割合を強制することには疑問がないわけではありません。

  1. 「役員としての適任者が男性しかいない場合にも女性役員を一定割合を選任しなければならないのか?」
  2. 「多様性を理由に女性役員の選任を推進し続けると、究極はLGBT役員の推進もしなければ論理が一貫していないのではないか?」
  3. 「多様性を強調するなら、女性役員だけの会社には一定の割合で男性役員を選任することは義務づけないのか?」
  4. 「多様性で求めるのは性別だけなのか?男性役員しかいなくても年齢層や国籍がバラバラなら多様性が確保されているのではないか?」
  5. 「現時点で中間管理職に女性が少ない会社に女性役員の推進を求めても、その会社が選任するのは社外の女性であって、社内の女性の活躍の場が増えるわけではないのではないか?」

など、です。

いくら考えても納得のいく答えが浮かびません。特に4と5の疑問への答えがわかりません。

女性役員の推進をしている人たちのコメントを見ても、これに対する答えが見つかりません。

例えば、女性役員の割合30%を主張するノルウェー年金基金の代表の説明でも

「多様性が取締役会の質を高めると考えている。女性の取締役が多ければ、自動的に会社の業績が良くなるという研究はない。だが、多様性とは性別だけでなく異なる背景や経験、知識、スキルセットを指す。同じ考え方、同じような背景の人だけであれば議論には大きな困難は生じない。取締役会が多様な経験や経歴を持つメンバーで構成されることで、議論に様々な考えを持ち込める

ノルウェー年金基金に聞く 女性役員ゼロに反対の理由

とあるように、別に、多様性を求めるだけなら女性の割合にこだわる論理的な一貫性ないのです。

年齢や国籍、出身企業が異なる人たちを役員にすればよく、女性を役員にすることにこだわる理由がわかりません。

ChatGPTに女性役員を推進する理由について訊いてみたけど・・・

というわけで、最終手段として、ChatGPTにも質問してみましたが堂々巡りの答えが出てくるだけで、全然納得感のある答えは出てきませんでした。

以下、Qが私の質問、AがChatGPTの答えです。

女性役員を推進する理由はなに?

女性役員を推進する理由は多岐にわたります。以下にいくつかの主要な理由を挙げます。

  1. 多様性と包括性の促進:女性役員の存在は、組織の多様性と包括性を向上させることができます。異なる背景や経験を持つ人々が組織の意思決定に関与することで、より幅広い視点やアイデアが取り入れられ、組織のパフォーマンスが向上する可能性があります。
  2. 人材プールの拡大:女性役員の推進により、企業が人材プールを拡大することができます。性別に関係なく、優れた能力やリーダーシップを持つ女性が存在することは明らかです。女性役員の存在を奨励することで、優れた人材を確保し、企業の競争力を高めることができます。
  3. パフォーマンスと利益の向上:研究によれば、女性が取締役会や経営層に参画している企業は、性別の多様性が低い企業に比べて、経済的なパフォーマンスや利益性が向上する可能性があります。女性役員の異なる視点や意見が、組織の戦略や意思決定にプラスの影響を与えることがあるためです。
  4. 社会的責任とイメージの向上:女性役員を推進することは、企業の社会的責任を果たす一環とも言えます。ジェンダー平等と多様性を尊重する企業は、社会的により一層良いイメージを持つ傾向があります。女性が経済的な機会やリーダーシップのポジションにアクセスしやすくなることで、社会全体のジェンダー平等が促進される可能性もあります。

これらの理由から、女性役員の推進は、企業や組織にとって利益をもたらすだけでなく、社会的な進歩や持続可能な発展にも寄与するとされています。

多様性を求めるなら、年齢や国籍、経歴が多様であればよくて、女性にこだわる必要性はないのでは?

年齢や国籍、経歴などの多様性も重要ですし、企業や組織にとって価値のある要素です。多様性の追求は、様々な背景や視点を持つ人々が集まることにより、より創造的で革新的なアイデアや意思決定が生まれる可能性を高めます。

ただし、女性にこだわる理由も存在します。以下にその理由をいくつか説明します。

  1. ジェンダーバランスの確保:男女のジェンダーバランスは、社会的にも経済的にも重要です。長い間、経済やビジネスの世界では男性が主導的な役割を担ってきましたが、男女の均衡が取れたリーダーシップの形成が求められるようになっています。女性役員を推進することで、男女間の不均衡を是正し、ジェンダーバランスを実現することができます。
  2. 歴史的な格差の解消:過去には、女性が経済やビジネスの上層部に進出することが制約される社会的な要因や制度的な障壁が存在しました。女性役員の推進は、これまでの歴史的な格差を解消し、女性が平等な機会を享受できる社会の実現に向けた取り組みの一環となります。
  3. ロールモデルとしての存在:女性役員の存在は、他の女性にとってのロールモデルとなることがあります。女性が経営者やリーダーのポジションに就いて成功する姿は、女性のキャリアの選択肢を拡げ、自信を持って進むことを助けることができます。女性役員の推進は、次世代の女性リーダーの育成やパイプラインの構築にも寄与します。

以上の理由から、女性に焦点を当てた多様性の追求は、ジェンダーバランスの確保や歴史的な格差の解消、ロールモデルの存在といった側面で重要視されます。ただし、これは他の多様性の要素と相互に関連し、総合的な多様性の促進を目指すべきです。

ジェンダーバランスの確保や歴史的な格差の解消、ロールモデルの存在によって、会社の売上は成長するの?

女性役員の存在によって企業の売上が必ずしも成長するとは限りません。女性役員の推進は、単純な売上成長に直結するというよりも、組織の持続可能な発展や競争力の向上に寄与する可能性があるとされています。

研究や報告書によれば、性別の多様性を持つ企業や取締役会は、しばしば以下のような利点をもたらすとされています。

  1. 創造性とイノベーションの促進:性別の多様性は異なる視点やアイデアをもたらすことがあります。女性役員の参画により、組織内の意思決定における多様な視点や経験が取り入れられ、創造性やイノベーションの促進に寄与する可能性があります。
  2. リスク管理の向上:性別の多様性がある組織は、リスク管理の観点からも有利になることがあります。異なる背景や視点を持つ人々が集まることで、より包括的なリスク評価や意思決定が可能となります。
  3. 顧客のニーズへの適応力:組織が多様な顧客層に対応するためには、顧客のニーズを理解し、適切に対応することが重要です。性別の多様性を持つ役員やリーダーは、顧客の視点を反映させることで、市場における競争力を高める可能性があります。

これらの要素が組織において効果的に活かされる場合、組織のパフォーマンスや競争力が向上し、その結果として売上成長につながることがあります。ただし、これは個々の企業や状況によって異なるため、一概にすべての企業に当てはまるわけではありません。

最終的には、女性役員の推進は組織全体のパフォーマンスや長期的なビジネス価値を向上させる可能性があるということを考慮しながら、その効果を評価する必要があります。

3点とも、年齢や国籍の多様性があれば実現可能で、なぜ女性でなければいけないの?

ご指摘いただいた通り、創造性やイノベーション、リスク管理、顧客への適応力などの要素は、年齢や国籍の多様性があれば実現する可能性があります。これらの要素は性別に限定されるものではありません。

女性役員の推進が重視される理由は、以下のような要素が考えられます。

  1. ジェンダーバランスの実現:経済やビジネスの世界では、男性がリーダーシップポジションを占めることが一般的でした。そのため、性別のバランスを取るために女性の参画が特に重要視されています。女性役員の推進は、ジェンダーバランスを実現し、組織や社会の男女間の不均衡を是正する一環となります。
  2. 歴史的な格差の解消:過去には女性が経済やビジネスの上層部に進出することに制約がありました。女性役員の推進は、これまでの歴史的な格差を解消するための取り組みの一環として位置付けられています。女性が平等な機会を持ち、リーダーシップのポジションに進出できる社会を実現するための取り組みとして女性役員の推進が重視されます。
  3. ロールモデルとしての存在:女性役員の存在は、他の女性にとってのロールモデルとなることがあります。女性が経済やビジネスの世界でリーダーシップを発揮する姿は、女性のキャリア選択肢を拡げ、自信を持って進むことを助ける要素となります。女性役員の推進は、次世代の女性リーダーの育成やパイプラインの構築にも貢献するとされています。

これらの要素により、女性役員の推進が特に注目されるのです。ただし、これは他の多様性要素とのバランスを取りながら総合的な多様性の促進を目指すべきであり、女性に限定されるべきではないという点に留意する必要があります。

その3点とも、売上や利益の獲得を目標とする会社がやるべきことではないのではないか?
女性役員によって多様性を確保して、ジェンダーバランスを実現しても、歴史的格差を解消しても、ロールモデルになっても、売上や利益が獲得できなければ会社である意味が無いのでは?

ご指摘いただいた通り、企業は売上や利益の獲得が重要な目標です。会社が成長し繁栄するためには、経済的な成果を追求することが必要です。

女性役員の推進や多様性の追求が企業の目標と直接結びつかないように感じるかもしれませんが、実際にはこれらの要素が企業の成果や利益に影響を与える可能性があります。以下にその理由をいくつか説明します。

  1. 創造性とイノベーション:性別の多様性や異なる視点の組み合わせは、新たなアイデアや革新的な解決策の発見を促進することがあります。創造性とイノベーションは、競争力の向上や市場での差別化に繋がり、売上や利益の増加につながる可能性があります。
  2. リスク管理:性別の多様性がある組織は、異なる視点や経験を持つ人々がリスク管理に関与することで、より包括的なリスク評価と効果的な対策を講じることができます。これにより、組織がより効率的にリスクに対処し、損失を最小限に抑えることができます。
  3. 顧客のニーズへの適応力:多様な顧客層への対応は市場での競争力を高める上で重要です。性別の多様性は、顧客のニーズや嗜好を理解し、適切に対応する能力を高めることができます。顧客満足度の向上や新たな市場の開拓に繋がり、売上や利益の増加に寄与する可能性があります。

したがって、女性役員の推進や多様性の追求は、経済的な成果を追求する会社にとっても重要な要素であると言えます。これらの取り組みは、企業の長期的な競争力や持続可能な成長に寄与し、売上や利益の獲得を支援する可能性があります。

ただし、多様性の追求と経済的成果のバランスは重要です。企業は、社会的な目標や多様性の推進と同時に、収益性や競争力を確保することも重視する必要があります。女性役員の推進や多様性の実現は、単独で成功を保証するものではありません。その効果は企業の具体的な状況や実施方法によって異なる可能性があります。

したがって、企業は女性役員の推進や多様性の追求を通じて、経済的成果を最大化する方法を模索する必要があります。これは、適切な経営戦略や組織文化の構築、人材の選抜と育成、意思決定プロセスの改善など、幅広い取り組みを必要とするでしょう。

最終的には、企業は目標を達成するために多様な視点を取り入れながら、経済的な成果を追求するバランスを見つける必要があります。女性役員の推進や多様性の追求は、競争力の向上や持続可能な成長に資する可能性がある一方で、その成果は個々の企業や状況によって異なるため、慎重な戦略と実施が必要となります。

結局、女性にこだわる理由がわかりません。

あまりにも長くなったので、次回に続きます。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。
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