大学で発生した不正・不祥事に対する危機管理広報のあり方について。立教大学体育会野球部と東海大湘南キャンパス硬式野球部への対応から他の大学・学校法人が学ぶべき点。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

相次ぐ大学での不正・不祥事

大学での不正・不祥事と言うと、昨年の日大アメフト部大麻事件が強いインパクトを残しました。

2024年に入ってからも、二松学舎大学前学長による論文不正熊本大学准教授による論文不正のほか、神戸大学のバドミントン同好会による合宿先のホテル損壊事案など、大学に関わる不正・不祥事が相次いでいます。

二松学舎大学は2024年2月22日に調査報告書を含めて詳細な情報を発信し、企業並みの危機管理広報を行っています。

これに対し、熊本大学は2024年3月1日に記者会見は行ったものの、以下のように熊本大学の関係者だけが情報を閲覧できるように制限しています。危機管理広報の意識があるのかないのか、よくわからない対応です。

神戸大学は、バドミントン同好会が合宿先のホテルを損壊している動画がXで拡散されるや、3月19日にただちに声明を掲載しました。この件は別の機会に詳しく取り上げる予定です。

昨年の日大アメフト部の例を見てもわかるように、大学で起きた不正・不祥事への危機管理広報には、大学によってまだ温度差があります。

そこで、今回は、適切な危機管理広報を行ったケースとして、立教大学体育会野球部と東海大淞南キャンパス公式野球部での不祥事への両校の対応を紹介します。

適切な危機管理を行った2つの事例

立教大学体育会野球部

2023年9月に、週刊新潮での報道を皮切りに、立教大学体育会野球部の上級生が倒したバットで下級生の歯が欠けた、未成年飲酒・喫煙の強要などの問題が明らかになりました。

立教大学は9月30日に体育会野球部部長と大学広報課課長が記者会見を行い、4年生と監督(当時)が秋季リーグ戦への参加を自粛したほか、学内調査とは別に、第三者を入れた調査委員会による調査を行いました。

12月8日には調査委員会から総長宛に調査報告書が提出され、大学は12月22日に公式サイトに報告書の概要と今後の対応を掲載しました。

報道によって問題が明らかになるや記者会見を行い、かつ、学内調査とは別に第三者を交えた調査委員会による調査を行い、その調査結果の概要と今後の対応まで公表した一連の対応は、企業並みの危機管理対応と言っていいでしょう。

今後の対応についての記載を見ても、問題を起こした野球部員に対する教育的指導に留めるのではなく、

野球部内において不適切事案が生じているにもかかわらず、大学として迅速に対応できなかったことは事実であります。今後、体育会各部と学生部間のコミュニケーションのあり方を含め、適切に対応できるようなマネジメント体制を整備してまいります。

https://www.rikkyo.ac.jp/news/2023/12/mknpps000002e5bx.html

とコメントし、体育会各部に対する大学のマネジメント体制(リスクマネジメント体制)の問題として捉え、具体的な再発防止策を挙げたことも、視野の広さを感じさせます。

ちょうど同じタイミング(2023年10月)で、立教大学では男子駅伝監督(当時。10月11日に委嘱取消し。)と女子部員との不倫問題も報じられたこともあり、体育会野球部だけが問題ではないとの意識があったことも影響しているかもしれません。

大学、企業を問わずですが、不正・不祥事が起きたときに当該不正・不祥事を起こした役員・従業員・学生への対応に矮小化してしまい、社内・学内で同種の不正・不祥事の再発防止まで至らないことや、会社・大学・学校法人の組織体制の再構築に至らないことも、まま見受けられます。

再発防止への本気度を伝えることに成功した広報であるように思います。

広報に限らない危機管理の対応全般が他の大学にも参考になると思います。

また、大学の危機管理もこの水準のものが世の中から求められていると、他の大学や学校法人も認識すべきです。

東海大学湘南キャンパス硬式野球部での飲酒強要、平手打ち

2024年3月19日に、東海大学は、湘南キャンパス硬式野球部の現2年生が20歳未満の1年生や入部予定の新1年生に対して飲酒の強要や平手打ちの暴行をしていたことの調査結果を公表しました。

「湘南キャンパス硬式野球部」は聞き慣れないかもしれませんが、東海大には、他にも静岡キャンパス硬式野球部(旧・海洋学部硬式野球部)や九州キャンパス硬式野球部があります。

湘南キャンパス硬式野球部は原辰徳などを輩出した、いわゆる「東海大硬式野球部」です。

東海大は、3月8日に「お詫び」として、湘南キャンパス硬式野球部にて飲酒強要と暴行があったこと、調査中であることを明らかにしました。

その後、3月19日に「第2報」として、

  • 調査結果
  • 問題が発覚した経緯
  • 部長、監督らの管理監督責任
  • 該当部員の処分
  • 今後の硬式野球部の活動再開
  • 再発防止策

などを公表しました。

「第1報」で問題があったこと、調査中であることを公表し、「第2報」で詳細を公表する。

こうした二段構えの広報対応は簡単なように見えて企業でもなかなかうまくできません。

調査結果が明らかになるまで公表せずに、その間にどこかのメディアにすっぱ抜かれて後追いで公表することになるのが、よくあるパターンです。

東海大学湘南キャンパス硬式野球部ともなれば、その知名度故に、公表が遅れれば遅れるほどバッシングされることも容易に予期できます。

東海大は非常に適切に対応したように思います。

こちらも、他の大学や学校法人に、このレベルの危機管理や危機管理広報が世の中から求められていると参考にして欲しい事例です。

宣伝も兼ねて学内教職員向け研修のススメ

問題意識の高い学校法人や大学は、学内の教職員に向けて危機管理広報の研修を行っています。

私も毎年、複数の大学や学校法人から依頼いただき、大学や学校法人が危機管理広報で意識すべきポイントを、企業による危機管理広報とは別の視点で、また大学や学校法人の例を紹介しながら解説しています。

広報担当者に限らず全学の教授や職員に行うケースのほうが多いです。

研修の際に意見交換をすると、都内の大学、学校法人よりも地方の大学、特に国立大学法人のほうが地元紙に掲載されることが必至なため危機管理広報の意識が強いように思います。

とはいえ、企業に比べると大学、学校法人はまだ危機管理広報が何かを理解されていない教授陣も少なくありません。

気になるようでしたら、気軽に問い合わせフォームからメールを送ってみてください。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。
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