2023年事業年度の従業員研修・管理職研修・役員研修(取締役・執行役員研修)がすべて終了したので、今年度の研修内容を振り返る。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

昨日、某企業向け従業員研修を以て、2023年事業年度(2023年4月1日〜2024年3月31日)に予定していた従業員研修、管理職研修、役員研修のすべてを無事に終えることができました。

ありがとうございました。

今回はいつものブログ記事と違って、2023年度に私が行った従業員研修、管理職研修、役員研修の内容を振り返ってみたいと思います。

ご依頼いただいた企業・組織の業種

2023年度も顧問先企業、顧問ではない企業のどちらからも従業員研修、役員研修のご依頼をいただきました。

業種別にまとめると、食品、情報・通信、製鉄・製鋼、電力・電気・設備、建設・設備、建物総合管理、建物メンテナンス、機械工具、ガラス、デザイン、服飾、化粧品、医薬品、医療機器、学校法人、航空、政府系独立行政法人、鉄道、アミューズメント、企業年金・・・見事なまでにバラバラです。

同じ業種だけれども、資本関係がない異なる複数の会社からご依頼いただくこともありました。

会社の規模としては、東証プライム上場企業をはじめ、スタンダード上場企業、グロース上場企業だけではなく、上場に向けて鋭意準備中、外資系日本法人、当該地域を中心に展開している企業、老舗企業、ベンチャー・・・など様々でした。

また、親会社と子会社・グループ会社を含めてグループ全体でご依頼いただくこともありました。

以上とは別に、集合研修として、

は、例年どおりに年間を通じて定期的に行うことが出来ました。

2024年1月には、集合研修をしている余裕がない役員向けに、スキマ時間に動画で研修を受けられることを目的に、イー・コミュニケーションズから「取締役・監査役トレーニング」をリリースしました。

ご依頼いただいた研修のテーマと傾向

従業員研修のテーマ

従業員研修のテーマの圧倒的に多くは「コンプライアンス教育」でした。

ただ、「コンプライアンス教育」と言っても企業によって特色がありました。

  • 当該会社の業種に特化してコンプライアンス上問題になりやすいテーマを扱う会社
    • 例えば、デザイン業なら著作権や情報管理にテーマを絞る
  • 比較的若い社員を受講者に設定して、社会人として抑えておくべきコンプライアンスの基本全般をテーマとして扱う会社
    • 例えば、ハラスメント、情報管理・SNS、知的財産権、独禁法・下請法、知的財産権の基本を総ざらいする
  • 大卒が多い管理部門・事務方の従業員と、高卒が多い工場の従業員を分けて、それぞれの職種で起きやすいテーマを扱う会社
    • 例えば、工場の従業員なら、工場内だけではなく工場外で起きやすい事故やトラブルも取り扱う
  • ひととおりのコンプライアンス教育は終えているので、最新のトピックだけにフォーカスする会社
    • 例えば、LGBTqについての最近の判例や理解増進法への誤解と正しい理解に基づく行動や、男性育休・産後パパ育休とハラスメント

などです。

当たり前ですが、会社の規模や業種が違えば想定されるコンプライアンス上の問題や解決法も異なります。

そのため、同じテーマでも会社ごとに研修内容を相当アレンジする必要があるので、大変でした。

特定の部署向け研修のテーマ

全社横断的ではなく、広報部門だけを対象に

  • 危機管理広報の基本を講義する会社
  • 自社公式アカウント、自社従業員やお客さまによるSNSの炎上が起きた場合を含むSNSを意識した危機管理広報の最新動向と考え方を抑えたい会社

もありました。

また、営業部門と管理部門だけを対象に

  • 日頃使っている契約書(ひな型)の各条項の意味と必要な法律知識を解説する研修

を実施した会社もありました。

管理職研修のテーマ

2023年度は例年以上に管理職・管理層を対象としたテーマが増えた印象を受けました。

管理職・管理層研修は、

  • 次世代の役員を育成する目線から役員研修に準じた内容の研修を行う会社(上の階層を意識した研修)
  • マネージメント目線から部下にどう接していくべきかの内容の研修を行う会社(下の階層を意識した研修)
  • ガバナンス目線、リスクマネジメント目線で社内不正・不祥事での管理職・管理層の振る舞いを内容とする会社
    • 例えば、想定事例をグループで議論してもらって、管理職・管理層の振る舞いを考えたもらう。

など、大きく分けると3種類に整理できるように感じました。

こちらも会社の規模や業種、さらには社風によっても、管理職・管理層の位置づけや振る舞い方などが異なるので、納得感を持って頂けるように各社の実情に応じたアレンジするのに苦労しました。

役員研修(取締役・執行役員研修)のテーマ

コーポレートガバナンス・コードの影響で、上場会社では役員研修の需要はとても増えています。

しかし、上場会社の役員だからといってコンプライアンス、ガバナンス、会社法、リスクマネジメントなどの知識や考え方が身についているかというとそうではなく、役員になってからの年数、これまでの職歴・背景によっても知識や理解度に差はあります。

また、上場会社では、グループガバナンスの観点から子会社・グループ会社の役員にも役員研修を実施する会社が多くありました。

そのため、上場会社・非上場会社を問わず、

  • 一度も役員研修を受けたことがない役員、新任役員、グループ役員(親会社からの出向者、兼任者含む)に対しては、会社法やコーポレートガバナンスの基本知識を総ざらいする会社
  • 一度でも私の研修を受けて基本を理解しているはずの役員を対象に、基本知識の復習と最新のトピックについて会社法やコーポレートガバナンスの観点から知識や考え方をアップデートさせフォローする会社
    • 例えば、2023年度ではジャニーズ問題をテーマに「ビジネスと人権」の考え方や知識をコンプライアンスの意味のそもそも論から噛み砕く。TOKAI HDやENEOS HDなどをテーマに取締役の監視義務を噛み砕く。
  • その年の話題になる法的テーマについてだけを取り上げる会社
    • 例えば、「物流の2024年問題」と役員が取り組むべき課題
  • 直近の不祥事例を題材にして、自社のリスクマネジメントとして置き換える会社
    • 例えば、危機管理として、発生から対応までどの段階で何を行動・決定すべきかを想定事例でシミュレーションする。その会社や事案で考えられる危機管理広報を考えてもらう。

などの3つが多かった印象を受けます。

研修を行うに際して意識していること

日頃の私のブログ記事を読んでいただいている方は薄々感じているかもしれませんが、私は「こういう法律やルールができたから、こうすべき」というマニュアル押し付け的な教え方は大嫌いです。

「なぜこういう法律やルールができたのか。ルールになっていなくても世の中の潮流がこうなっているのはなぜなのか。このなぜは、既存の知識や考え方のここの延長です。ここをさらに細分化したものです。新しいルールができたわけではない」などと、徹底的に背景を探ったり、原点に遡って講義をします。

臨機応変に行動できる考え方を身につけた欲しいからです。

また、抽象論や小難しい話しを説明してもポカンとされてしまうので、具体的な事例やニュースを紹介して、その事例の顛末や、ガバナンスやリスクマネジメントの分かれ目(ここでこういう対応をとっておくべきだった)などを説明して、身近に置き換えてもらい、すぐにでも自分の業務内容に生かせることを目指しています。

テーマによっては、「それはもうわかっている」という受講者もいるときもあります。

それでも、「そういう考え方があったのか」「ここは初めて知った」という部分が一つでもあれば良いと思っています。

興味を持っていただいたら幸いです。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。
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