山岡家、しゃぶ葉と2024年も相次ぐ迷惑動画の投稿。若者たちの「二番煎じ」を防ぐために企業が講じるべき対応は。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

2024年1月4日にラーメン山岡家釧路町店で専門学校生(当時)がピッチャーの蓋の裏を舐める様子を撮影した動画をSNSに投稿したことを理由に、2月3日に威力業務妨害罪で逮捕され、2月6日には撮影者も威力業務妨害罪で逮捕されました。

山岡家の件がSNSで炎上している最中の2024年2月2日にはしゃぶ葉のアルバイト3人が羽交い締めにして口にホイップクリームを注ぐ様子を撮影した動画がSNSに投稿され、こちらも炎上しました。

2023年にスシローの件では連日メディアで報じられる社会的制裁を受け、かつ、少年は高校を辞め、損害賠償を請求され、家庭裁判所に送致されるほどの法的責任をも負うことになりました。

にもかかわらず、2024年にも性懲りもなく同様の動画を投稿するのは呆れるにも程があります。

※2024/2/13追記

2024年2月12日午前2時には、ドミノ・ピザ尼崎店で従業員が生地に異物を混入させる不衛生な行為を撮影した動画がSNSで炎上しました。

ドミノ・ピザは、即日社内調査し、途中経過として生地を廃棄処分にしたこと、店舗を営業停止したことをX公式アカウントにて公表しました。

企業は迷惑動画の投稿をどうやって防いでいくべきか

企業、特に外食産業の会社にとっては、従業員、パート・アルバイト、お客さまが迷惑動画を投稿するのを防止することは急務でしょう。

法的責任の追求

防止策の一つとして考えられるのは、法的責任を厳しく追及していくことです。

最近は、民事、刑事を問わず、企業が法的責任を追及するケースが増えてきました。

警察・検察もこうした迷惑動画の投稿が相次いでいることから、

  • 行為者だけではなく、撮影者、投稿者までを
  • 偽計業務妨害、威力業務妨害、器物損壊のいずれか、またはセットで逮捕、起訴する

ケースが増えています。

※2024/2/15追記

2022年9月29日に吉野家で共用の紅しょうがを自身の箸で容器から直接食べ、SNSに投稿した男性は、2024年2月15日に器物損壊と威力業務妨害罪で懲役2年4月、罰金20万円の実刑になりました。

また、動画を撮影した男性は、威力業務妨害で罰金30万円を命じられました。

そのため、企業が積極的に損害賠償請求、刑事告訴(被害届の提出)、懲戒解雇することによって、ある程度は、次なる迷惑動画の投稿を抑止することができるはずです。

しかし、あくまでも「ある程度」の抑止でしかありません。

法的責任追求をしても抑止力が働かない理由

現実は、若者を中心に同様の迷惑動画が続いています。

会社が法的責任を追及しても、次なる迷惑動画の投稿への抑止力が働いていません。

その理由としては、

  • SNSでバズっていることは認識していても、ニュースを見ないので、法的責任を追及されている顛末までは知らない
  • SNSを利用していても、興味関心があるインフルエンサーやリアルな友だちしかフォローしていないので、ニュースが流れてこない(流れてきてもつまらないので見ない)
  • 自分と学校・地元の友だち、フォローしているインフルエンサーという狭いコミュニティで生きているので、価値観がそのコミュニティのものに留まり、世間の厳しさを知らない
  • 「自分もバズりたい」「仲間内で目立って話題の中心になりたい」との自己承認欲求が強い
  • 「鍵を掛けておけば拡散されないから大丈夫」と誤解している

などが考えられます。

ニュースが目耳に入ってこない結果、迷惑動画を投稿すると法的責任が追求されるとの認識がなく、企業がいくら法的責任を追及しても次なる投稿への抑止力が生じていないのです。

また、パート・アルバイトの場合には

  • バイト先をクビになっても、別のバイト先を探せば良い、将来の就職には影響しない
  • バイト先に一生お世話になるわけではないので、バイト先に迷惑がかかっても構わない

と甘く見ていることも容易に想像できます。

会社への帰属意識がなければ、「解雇」や「懲戒処分」を強調しても次なる投稿への抑止力は働きません。

ニュースを見ない若者たちへのアプローチ

ニュースを見ない若者たちへの抑止力を働かせるためには、ニュースを見ないことを前提で「迷惑動画の投稿には法的責任が追及される」ことを認識させるようにアプローチしていくしかありません。

SNSを利用したマーケティングを活用する

企業は日頃からあらゆる人に情報が届くようにマーケティングの施策、特にSNSでのマーケティング施策をあれこれ講じていると思います。

そうだとすれば、ニュースを見ない若者たちにも、マーケティングの施策を活用していくしかありません。

例えば、TwitterX、Instagram、TikTok、Youtubeで若者向けのショート動画を流す、インフルエンサーにも協力してもらう(委託する)など、です。

外食産業が個別に行っても良いですし、外食産業や他の業界も巻きこんで、数社が一緒になってマーケティングしてもいいのではないでしょうか。

まじめ一辺倒ではなく見てもらうための工夫する

法的責任の追求だからと言って、まじめな堅苦しい内容でアプローチしても、若者たちは「まじめな動画はつまらない」と考えて、見るのを飛ばすでしょう。

動画の内容も法的責任の追求を宣言しているのだけれど、面白おかしく見てもらえるよう工夫するしかありません(具体的にどうすればいいかは思い浮かびませんが・・)。

「二番煎じ」「違法動画である」というメッセージを伝える

若者たちは「バズりたい」「仲間からおもしろいと言ってもらいたい」という自己承認欲求が強いです。

だからこそ、若者は「まだそんなことをやっているの?」「ただのパクりじゃね?」と周囲から承認されない行動は避ける傾向にある気がします。

そのため、SNSでマーケティング手法を用いて、若者向けのアプローチをするときにも「そんな二番煎じ、まだやっているの?」というメッセージを伝えたらいいのではないかと思います。

また、「不適切動画」「迷惑動画」などの呼び方では、動画の内容が業務妨害行為、器物損壊行為であり違法行為であるとの認識が高まりません(今回の記事のタイトルはあえて「迷惑動画」の言葉を使っていますが、本当は「違法動画」とした方が適切だと思います)。

そのため、企業各社がリリースを公表するときに「不適切動画」「迷惑動画」の表現を用いずに「違法動画」との表現を使い、違法行為であることを世の中に認識させるようにしたらいいのではないかと思います。

話は飛びますが、例えば、不適切会計や自動車各社での検査不正・試験認証不正も、本来なら「違法会計」「脱税」「違法検査」などと呼ぶべきだと思います。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。