王子マテリアとヤマト運輸に対し長時間の荷待ち等を理由に国交省が貨物自動車運送事業法に基づく勧告。「物流の2024年問題」に向けて国交省が法的措置。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

2024年1月26日、国交省は、2023年11月・12月に取り組んだトラックGメンによる「集中監視」の結果を公表し、王子マテリアとヤマト運輸の2社に対して、長時間の荷待ち等を理由に貨物自動車事業法に基づく勧告をしたことを明らかにしました。

「勧告」は、国交省が、過去に悪質な荷主・元請け事業者として貨物自動車運送事業法に基づく「要請」をしたにもかかわらず、両社が依然として違反原因行為をしている疑いのあることを理由にした、より重い法的措置です。

ヤマト運輸の違反原因行為

国交省が勧告までした背景には、2024年4月1日から始まる「物流の2024年問題」があるのは、間違いないでしょう。

特に、ヤマト運輸が違反原因行為として認められたのは

  • 長時間の荷待ち
  • 契約にない附帯業務
  • 運賃・料金の不当な据置き
  • 過積載運行の指示
  • その他の無理な運送依頼

です。

ヤマト運輸にしてみれば、ネット通販が当たり前になり物流量が増えているという事情はあるでしょう。

そうはいっても、国交省が違反原因行為として認めた上記各行為はいずれも物流適正化ガイドラインで運送事業者と荷主事業者に対策を求めている項目です。

ましてや、公正取引委員会と中小企業庁は、2023年9月20日に労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分を適切に取引価格に転嫁しないことは優越的地位の濫用や下請法違反になることを明らかにして、自主点検を要請していました。

そうであるにもかかわらず、ヤマト運輸が契約にない附帯業務(すなわち、対価を支払わないで附帯業務をさせていた)、運賃・料金の不当な据置をしていたなら、国交省が要請に留まらずに勧告にまでしたことも合点がいきます。

運送事業者、荷主事業者の留意点

国交省が公表した下記取組結果の活動実績の棒グラフを見ると、貨物自動車運送事業法に基づく働きかけ、要請、勧告は、右肩上がりで増加していることがわかります。

勧告まで至ったのは、王子マテリアとヤマト運輸の2社だけですが、要請は164件、働きかけは47件に達します。

その内、勧告では2件中1件が荷主に対して、要請では164件中82件が荷主に対して、働きかけでは47件中26件が荷主に対してのものです。

しかも、国交省の公表には、

なお、今回「勧告」「要請」等の対象となった荷主等に対しては、違反原因行為の早急な是正を促すとともに、改善計画の提出を指示しました。今後の取組状況等については、トラックG メンによるヒアリングや現地訪問等を通じてフォローアップを行い、「要請」後もなお改善が図られず、違反原因行為をしていることを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、当該荷主等に対し、「勧告・公表」を含む厳正な対応を実施してまいります。

https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000292.html

とあるように、今回の働きかけや要請に留まらず、今後も改善が図られなければ「勧告・公表」を含む厳正な対応を実施するとあります。

それだけ厳しくチェックをし続けるという宣言です。

「物流の2024年問題」はトラック運送事業者だけではなく、荷主が向き合って対策をしなければならない必要性があることがわかります。

まだ自社には影響がないと思っている荷主事業者は、意識をアップデートして欲しいと思います。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。