「物流の2024年問題」の荷主事業者が講じるべき対策のポイントを、簡単に、わかりやすく整理して解説。物流事業者だけではなく、荷主にも法的責任が生じるので対策が必要です。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

年度末のせいか役員研修・社内研修のための出張が続き、blogを書く時間がなかなかとれなく間が空いてしまいました。

さて、今回は「物流の2024年問題」を取り上げます。

2023年には「物流の2024年問題」をテーマに、荷主(特に出荷主)となる会社の社内研修・役員研修を依頼いただくこともありました。

とはいえ、まだまだ「物流の2024年問題って何?」「荷主は2024年問題に何をしたらいいの?」「2024年問題に対応しないと取締役に責任が生じるのか?」という認識に留まっている会社も少なくありません。

そこで、今回は「物流の2024年問題」について、荷主となる会社の社内研修・役員研修でお話しした内容のダイジェストを投稿します。

物流の2024年問題とは

物流の2024年問題とは、物流業界の労働時間に関する働き方改革関連規制が2024年4月1日から施行されるので、物流事業者も荷主も、その影響を踏まえた対策が必要である、ということです。

2024年4月1日から施行される働き方改革関連規制は、具体的にいうと、

  1. 自動車運転業務に関する時間外労働の上限規制(年960時間)
  2. 自動車運転者の拘束時間・休息時間に関する厚労省の改善基準告示の改正

の2点です。

詳しい内容は後述します。

物流の2024年問題に荷主が対応すべき必要性

物流の2024年問題に荷主が対応しないと、以下の問題が生じます。

  1. 物流事業者が法的措置(是正勧告、指導、車両停止処分)を受け、物流が停止してしまう。
  2. 荷主は配慮義務違反として法的責任を問われる。
    • 労基署から対応を要請される
    • 国交省から働きかけ、協力要請、勧告、公表される(貨物自動車運送事業法)

また、荷主が対応していないことは、働き方改革関連規制が施行される2024年4月1日以前でも、公正取引委員会から法的措置や指導をうけるおそれがありますし、現に受けている事例が存在します(こちらも後述します)。

自動車運転業務に関する時間外労働の上限規制の適用

まず、2024年4月1日から施行される、自動車運転業務に関する時間外労働の上限規制は、以下のとおりです。

そもそもですが、働き方改革により、自動車運転業務を除くすべての事業者は、2019年4月以後、以下の労働時間規制に服しています。

  1. 月45時間、年360時間
  2. 臨時的特別事情があるとき、年720時間(複数月平均80時間、単月上限100時間、月45時間を超えられるのは年に6か月まで)。

自動車運転業務は2024年4月1日まで時間外労働時間の規制を猶予されていました

しかし、2024年4月1日以降、自動車運転業務は、以下の労働時間規制に服することになります。

  1. 年960時間(複数月平均、単月上限、6か月規制は適用しない)
  2. 将来的には一般則と同じ年間720時間の上限にする見込み(未定)

これによって運送事業者は、トラック運転手を過剰に労働させることができなくなります。

その結果、荷主が「商品を運んでもらいたい」と思って運送事業者に発注しても、運送事業者から「トラックを運転できる者がいない」と断られることが起きることが容易に予測できます。

厚労省改善基準告示の改正

次に、拘束時間・休息時間に関する厚労省改善基準告示の改正とは、以下の内容です。

厚労省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」に掲載されている以下の表がわかりやすかったので、引用します。

「見直し後」とあるのが改正後の規制内容です。

注書きにもありますが、拘束時間とは、出社から退社(終業)までの時間をいいます。

トラック運転手に置き換えれば、トラックが置かれている事業所に出社〜トラックに乗り荷主から荷物を預かって着荷主まで運び〜事業所に戻ってきてトラックを置き退社する、までの一連の行程が拘束時間です。

これが、年3300時間まで、原則として月284時間まで。最大で月310時間まで拘束できるとしても、年3400時間が上限で、かつ、年6回までに限定されます。

自動車運転業務の年960時間の労働時間規制では年6回までとする規制は適用されないのに対し、月310時間の拘束時間は年6回まで規制される違いがあることに留意が必要です。

また、休息時間は、前の仕事が終了してから次の仕事を始業するまでのインターバルです(休憩時間とは別です)

インターバルは11時間継続することが必要で、長距離や泊まりがある場合でもインターバルを最低でも9時間は確保しなければなりません。

例えば、東京の工場から青森の納品先までの商品の輸送を依頼した場合を想定しましょう。

荷主が「東京・青森間は9時間かかる。朝8時に工場を出発すれば、多少混んでいたとしてもノンストップなら18時には到着できる。納品後に食事・入浴・睡眠で8時間も休憩すれば十分だろう。夜中に出発すれば、明日朝には東京に戻ってこられる。そうしたら、明日は別の取引先に納品に行ってもらうことができる」と、超タイトかつハードなスケジュールを組んでも、それは許されない、ということです(なお、そもそもノンストップの運転が許されていませんが・・)。

今後は、運送スケジュールを運送事業者と念入りに調整することが必要不可欠になってきます。

物流の2024年問題に向けて荷主が行うべき対策

以上の労働時間の上限規制と拘束時間・休息時間に関する改善基準告示の改正が施行されることに備えて、荷主は、

  1. 物流事業を効率化・合理化して、運転手の労働時間・拘束時間を短くすること
  2. 荷役作業・附帯業務に関する契約内容を適正化すること
  3. 輸送・荷役作業等の安全を確保すること

といった対策に取り組む必要があります。

荷主が講じるべき具体的な内容は、2023年6月に、経産省・農水省・国交省が「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」にまとめています(以下、物流適正化ガイドラインといいます)。

以下では特に大事なポイントのみ説明します。詳細は物流適正化ガイドラインで確認してください。

物流業務の効率化・合理化

トラック運転手の労働時間・拘束時間を短くするためには、荷主が物流業務を効率化・合理化し、トラック運転手が運転に専念できる環境を整えてください。

その際には、特に以下の点への配慮が必要です。

荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ルール

物流適正化ガイドラインでは、

  • トラックが荷主のもとに到着してから実際に荷物の積み卸し作業を行うまでの待機時間を「荷待ち時間」
  • 荷物をトラックに積み卸す時間を「荷役作業」
  • 荷物を運ぶ以外の棚入れ、仕分け、ラベル貼り、横持ち(卸した場所からの移動)などを「附帯作業」

と定め、荷主がトラック運転手を拘束する時間を2時間以内に留めることを要請しています。

荷主が2時間以内ルールを守るためには、トラックが荷主の倉庫や工場に同じタイミングで集中することを避け、荷物の積み卸しスペースが空くまで順番を待つ待機時間を減らす、荷物の積み卸しをスムーズに行うことなどが求められます。

そのため、具体的には、予約システムなどを導入して荷待ち時間を短縮する、荷待ち・荷役作業を分散化する、出荷スケジュールに併せた生産、梱包、荷造りなどの準備作業をする、荷主側が荷役作業、附帯作業のための人員を確保するなどの対策を講じることが必要です。

荷待ち、荷役作業(荷積み、荷卸し)、附帯作業の時間を把握

2時間以内ルールのための対策を講じるためには、荷待ち、荷役作業、附帯作業のどの作業で時間がかかるのか、時間を短縮するためのボトルネックになっている作業の現状を把握することが必要です。

荷主都合での荷待ち時間が30分超の場合や、荷積み・荷卸し・附帯作業をした場合には、トラック運送事業者は記録する義務があるので、その点からも、現状を把握しなけれなりません。

2時間以内ルールを守っていたとしても、荷主の都合で荷待ち時間が30分を超える「長時間の荷待ち」は、国交省から荷主に対する働きかけ、協力要請・勧告・公表の対象でもあるので、その意味でも荷主は現状把握が必要です。

なお、「長時間の荷待ち」以外に「依頼になかった附帯業務」「運賃・料金の不当な据置き」も同様に国交省からの働きかけ等の対象ですので注意してください。

荷役作業・附帯業務に関する契約内容の適正化

運送の「運賃」と荷役・附帯業務の「料金」の別

トラック運転手の労働時間・拘束時間を短くするためには、契約内容を見直すことも必要です。

荷主が、トラックの運転手に自動車運転業務以外をさせるのであれば、その業務には対価を支払うことが必要です。

具体的には、運送の「運賃」と、荷役(荷積み、荷卸し)、附帯業務の対価である「料金」とを別にする契約内容への変更が必要です。

国交省「一般貨物自動車運送事業に係る標準的な運賃」の通達にも、荷待ち時間が30分を超える場合、積込み、取卸しその他附帯業務を行った場合、運送事業者は「運賃」とは別料金を収受することが定められています。

荷主に対する独占禁止法・下請法違反での注意

荷待ち時間の変更について運賃を支払わないと、独禁法違反(不当な給付内容の変更・やり直し・物流特殊指定1項7号)、下請法違反(不当な給付内容の変更・やり直し)に該当するおそれがあります。

また、荷積み、荷卸し、附帯作業を無料で行わせた場合には、独占禁止法違反(優越的地位の濫用、不当な経済的利益の提供・物流特殊指定1項6号)、下請法違反(不当な経済的利益の提供要請)、貨物自動車運送事業法違反(輸送の安全の確保)に該当するおそれがあります。

公正取引委員会は、2021年度、2022年度に、例えば以下のケースで独禁法(物流特殊指定)違反を理由に注意をしています(公正取引委員会の公表資料にはこれ以外も掲載されています)。

  • 不当な給付内容の変更・やり直しに該当する
    • 鋼材卸売業を営むMは、運送業務を委託する物流事業者に対し、積込み及び荷卸しの際に待機時間が発生しているにもかかわらず、あらかじめ待機に係る費用の支払について物流事業者と取り決めておらず、待機料を支払っていなかった
  • 不当な経済的利益の提供要請
    • 農産物の販売事業等を営むPは、運送業務を委託する物流事業者に対し、集荷場においてフォークリフトを使用した積込み作業を行わせていたが、当該作業に必要な費用を支払っていなかった。

運賃・料金に燃料価格を反映させる

燃料サーチャージの導入、燃料費等の上昇分、高速道路料金など実費の運賃・料金に反映することも契約の適正化として必要です。

運賃・料金の不当な据え置きは、独禁法違反(買い叩き・物流特殊指定1項3号)、下請法違反(買い叩き)に該当するおそれがあります。

輸送・荷役作業等の安全確保

トラック運転手の労働時間・拘束時間を短くするためには、トラック運転手の安全を確保することが必要です。

大雪の中でトラックを運転させ、高速道路で身動きができなくなれば、それだけ拘束時間が増えます。

安全の確保に関連して、国土交通省は「台風等による異常気象時下における輸送の目安」を定めています。

国土交通省が実施する監査において、輸送の安全を確保するための措置を適切に講じずに輸送したことが確認された場合には、「貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について」に基づき行政処分を行うことが明記されています。

これを踏まえ、異常気象が発生したとき、発生が見込まれたときに、荷主が無理に運送を依頼しないこと、物流事業者が運送を中止等すると判断したときに、荷主はその判断を尊重することが必要です。

以上が「物流の2024年問題」に関して、荷主が講じるべき対策のポイントのダイジェストです。

役員研修では対策を講じないときの取締役の責任なども話しますが、blogでは長くなるのでこのテーマではここまでです。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。