「ガス料金がおトクになる」などと表示した北海道電力の広告が有利誤認表示として景品表示法に基づく措置命令。販売価格を表示する場合に注意すべきポイント。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

2023年7月28日、消費者庁は、北海道電力が「ガス料金がおトクになる」などと表示した北海道電力の広告が景品表示法の有利誤認表示に当たるとして、景品表示法に基づく措置命令を発しました。

北海道電力が実際に行っていた広告は、以下のようなものです(消費者庁公表資料より抜粋して引用)。

あたかも、都市ガスを北海道ガスから北海道電力に切り替え、ガスと電気をセットで契約するだけで、表示した額分の年間光熱費が安くなるように表示していたけれども、実際には、「おトク」と記載された金額は、ポイントサービスに加入した上で、毎月のログイン、おおむね毎週配信されるコラムの閲覧等を行わなければ付与されないポイント相当分が含まれていたことが有利誤認表示と判断されました。

他社とのシェア争い、顧客の争奪戦のためには、契約先を切り替えると商品やサービスの価格が安くなること、自社の価格のほうが安いなどとアピールすることはよくあることです。

しかし、表示では安いとの印象を与えているのに実際には安くない場合には、景品表示法が禁じる有利誤認表示と判断され、措置命令、課徴金納付命令の対象になってしまいます。2023年5月17日には景品表示法が改正され、今後は有利誤認表示は刑事罰の対象にもなります。

そのため、価格を表示する場合には有利誤認表示にならないように注意することが不可避です。

価格表示が有利誤認表示にならないようするためのポイント

価格表示が有利誤認表示にならないようにするためには、

  1. 販売価格
  2. その価格が適用される商品・サービスの範囲(関連する商品、サービスが一体的に提供されているか否か等)
  3. その価格が適用される条件

の3点を正確に表示する必要があります。

販売価格

販売価格を正確に表示するのは当たり前のように思われるかもしれませんが、思いのほかできていなかったりします。

典型的なのは、消費税相当額を別途請求するのに、消費税別である表示がないケースです。消費税の総額表示は、2021年4月1日以降、消費税法によっても義務づけらているので、もし表示していない場合には景品表示法と消費税法の両方に違反することになります。

北海道電力のケースのように、おトクになる価格が(現金ではなく)ポイント相当額であることを表示していないことは、販売価格を正確に表示していないことになります。

また、他社と販売価格(料金)の比較をする場合に、他社が提供している割引サービスの価格など自社にとって都合が悪い価格をあえて除外して比較することは、販売価格を正確に表示したことになりません。

さらに、自社の販売価格を意図的に割安に見せるために、過去に販売した実績がない価格や、その価格で販売した実績はあるものの短期間だけであった価格と比較して、割安をアピールするなどの不当な二重価格表示も、販売価格を正確に表示したことになりません。

適用される商品・サービスの範囲

商品やサービスを消費者が利用するためには、一体化した商品やサービスが不可欠であるのに、一体化した商品やサービスの価格を表示しないときには、適用される商品・サービスの範囲を正確に表示していないことになります。

例えば、歯列矯正をするために美容歯科に通うときには、歯科医による診察のほか、矯正器具が不可欠です。

この場合に、美容師かが初診料や診察料だけを表示して、矯正器具の費用を表示しない場合は、適用される商品、サービスの範囲を正確に表示していないことになります。

2013年5月29日には、医療法人社団太作会が歯列矯正のウエブサイト広告で消費税相当額のほか、矯正器具の価格を表示していなかったことで、消費者庁から措置命令を受けています。

適用される条件

今回の北海道電力の場合は、この適用条件が正確に表示されていないとして有利誤認表示と判断されました。

北海道電力のケースのように、セット料金が適用されるためには、ポイントサービスに加入して毎月ログインするなどが必要である場合以外にも、アプリをダウンロードして会員登録が必要である、クレジットカードの利用に限定されるなど一定の条件を課すときには、これらの条件を表示することが必要です。

不当な価格表示についての景品表示法の考え方

販売価格の表示の詳細は、消費者庁が出している「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」というガイドラインに定められています。

安さをアピールするパンフレットやチラシなどの広告を作成する場合には、必ずチェックするようにして下さい。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。