「反ESG」の次には「反SDGs」が始まるかもしれない。「SDGs疲れ」が囁かれ始めた理由。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

ここ数年、上場会社を中心にSDGsを推進する動きが続いていますが、最近は「SDGs疲れ」の言葉を聞くことも増えてきました。

去年、複数の会社が一堂に会する場でセミナーをさせていただいた際にも、「うちの会社はSDGsの次を考えて動いている」と仰る経営者の方がいらっしゃいました。「SDGs疲れ」というよりは発展的解消ですが、広い意味では「反SDGs」と理解できます。

先日、アメリカでは「反ESG」の動きが出始めていることを書きましたが、このうねりの延長で「反SDGs」が本格的に始まることも容易に想像できます。

日本でのSDGsの現在位置

SDGsは2015年9月に国連で採択されたことに端を発します。日本では、2016年12月にSDGs推進本部がSDGs実施指針を定めた時点から本格化しました。

2021年6月にはコーポレートガバナンス・コード(改訂版)の基本原則とその解説文(考え方)にSDGsが盛り込またことで、上場会社はSDGsをより意識した経営判断をすることが求められるようになりました。

上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべきである。
(中略)
「持続可能な開発目標」(SDGs)が国連サミットで採択され、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同機関数が増加するなど、中長期的な企業価値の向上に向け、サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)が重要な経営課題であるとの意識が高まっている。こうした中、我が国企業においては、サステナビリティ課題への積極的・能動的な対応を一層進めていくことが重要である。

2021年6月11日コーポレートガバナンス・コード(基本原則2)

上場会社が短期的な売上や利益だけではなく、長期的な目線で企業の社会的責任(CSR)に配慮して経営判断すべきという総論には異論はありません。

「SDGs疲れ」が起きてしまう原因

企業の社会的責任(CSR)に配慮して経営判断する際に、SDGsが「責任」の具体例として参考になることは否定しません。

では、なぜ、「SDGs疲れ」が起きてしまうのでしょうか?

その原因は、経営者も現場の担当者や従業員一人ひとりが「SDGs」の位置づけを誤解し、その取り組みが世の中の人たちが求めていることとズレているからだと思います。

「SDGs疲れ」の要因を調査した結果では、

  1. 説明が分かりにくい
  2. 企業差が見えない、きれいごとのように感じてしまう
  3. メディアの報道に懐疑的

が三大要因として挙げられています。企業の事業に関わるのは1と2でしょう。

この調査では、今後積極的に取り組むべきSDGsの目標についても企業と生活者でズレがあることが明らかになっています。例えば、会社はジェンダー平等やNPOとの協業に積極的に取り組んでいますが、生活者目線では優先順位は低いのです。

説明が分かりにくく、企業差がつかず、きれいごとと受け取られてしまう理由は、SDGsに対する誤解にあると思います。

SDGsの本来の位置づけは、企業の社会的責任(CSR)の具体例です。

「社会的責任を考慮しながら経営判断する」と言うときの「社会的責任」の内容が不明確なので、その具体例としてSDGsの17項目が列挙されたにすぎません。

企業はNPO法人ではありません。ボランティアや社会福祉活動としてSDGsの17項目に取り組むことを求められているわけではありません。

あくまでも「営利」社団法人として、売上や利益をあげるために日々の事業活動を行う。その際に、自社の短期的な売上や利益を優先するだけではなく、SDGsの17項目にも配慮しよう、というのが、本来のSDGsの位置づけです。

コーポレートガバナンス・コードの「考え方」もそのニュアンスで書かれています。

自社の事業と関連付けて考えれば、自ずとSDGsに対する取り組みに企業差が付くでしょう。また、自社の事業との関連で説明すれば良いので、自分たちの言葉で説明できるようになるでしょう。

食品メーカーがSDGsを考慮するなら「わが社は貧困をなくす、飢餓をなくす、すべての人の健康と福祉のために、食べられない家庭の子たちに食事を提供している『こども食堂』に食品を提供します。食品の製造過程では、サプライチェーンの人権問題やクリーンエネルギーにも配慮します」で表現すれば、企業差がつき、また自分たちの言葉で説明したことになります。

このように自社の事業活動の延長やその外縁でSDGsに貢献できることを考えていけばよいだけです。

なお、アサミ経営法律事務所では、SWITCH株式会社が行っている、企業と『こども食堂』を繫ぐためのTSUNAGUプロジェクトを応援させていただいています。興味がある会社がありましたら、ぜひ、お声がけください。食品会社以外でも何らかの形で繋げると思います。

「反SDGs」の動きが予測できる

SDGsの位置づけを誤解して、自社の事業活動とかけ離れてSDGsに取り組んでいる会社、世の中の人たちが求めていない項目に力を注いでいる会社は、「なんでこんなことに取り組んでいるのだろう?」「頑張っているのに、誰も評価してくれない」とやりがいがなくなり、「時間と費用の無駄だよね」と考えるようになります。

自ずとSDGs離れにつながり、「反SDGs」になるでしょう。

また、正直、「SDGsをやってます」と声高にアピールされると、世の中の人たちからは「良い子ちゃん」に見えます。「聞き飽きた」と反発されることも予想できます。

東日本大震災のときにテレビCMが全部「ぽぽぽぽ〜ん」になったときに、「いい加減、見飽きた」という声が起きたのと同じです。

「SDGs疲れ」の声が出始めたのは、このときを思い起こさせます。

SDGsを強調することは投資家へのアピールとしてはいいのかもしれませんが、世の中の人たちにそっぽを向かれる可能性もあります。

事業活動の延長として、ほどほどに取り組むのがいいのではないでしょうか。

海外ではこのように「意識高い系」資本主義と揶揄されています。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。