サクマ製菓が非許諾グッズに販売停止の申し入れ。不正競争防止法のポイントを抑えよう。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

ネット通販を使っていますか?
欲しい商品が身近で見つからないときに、ネット通販で検索するとすぐに見つかるときがあります。

ただ、ときどき、「人気商品なはずなのに、なんでこの店舗だけこんなに在庫があるんだろう」とか「この値段は異様に安くないか」と、偽物なのではないかと疑いたくなる商品に出くわします。

サクマドロップスで有名なサクマ製菓も、許諾していない偽物をネットで販売されるという被害に遭っているようです。

今回は、このケースを題材に、不正競争防止法のポイントを整理しようと思います。

サクマ製菓による販売停止の申し入れ

サクマ製菓は、サクマドロップスやいちごみるくの公式許諾品と誤認する商品を販売している者に販売停止の申し入れをしていることを、3月30日付のTwitterの投稿で明らかにしました。

私も、こういう販売停止の申し入れをすることがよくあります。
その多くが、商標権侵害か不正競争防止法違反を根拠にするものです。

Twitterによると、サクマ製菓は、不正競争防止法2条1項1号を根拠に主張しているようです。

なお、3条1項1号・2号は差止請求を定めた条文です。

不正競争防止法2条1項1号とはなにか?

「混同惹起行為」

不正競争防止法2条1項1号は一般の人にはあまり馴染みがないと思いますので、まず、内容を確認しましょう。

不正競争防止法2条1項1号
他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為

商標以外に、氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものすべてが保護の対象です。

商品やサービスを提供している会社にとっては、商標登録をしていない商品やサービスであっても、無断で使用された・マネされた時(「混同惹起行為」といいます)には、不正競争防止法2条1項1号を主張して販売の停止(差止)を請求できます。

商標登録をしていない場合にも差止を求められるので、非常に使い勝手がいい条文です。

もちろん、差し止めることまで主張するなら、どこがどう類似しているか、事実をひとつひとつ積み重ねる必要があります。
漠然と、なんとなく似ているだけでは混同惹起したとは言えません。

2022年には「鬼滅の刃」で刑事罰も

混同惹起行為をした場合には、差止を請求されるだけではなく、刑事罰の制裁も科されます。

「鬼滅の刃」のキャラクターを思わせる柄の入った雑貨を輸入・販売したケースでは、輸入・販売した会社の代表に懲役2年、執行猶予5年、代表と個人に罰金800万円の有罪判決が言い渡されています(名古屋地裁2022年12月16日)。

雑貨に使われていた「緑と黒の市松模様」など単体では鬼滅の刃を想起させるとは言えなくても、「ピンク色の麻の葉模様」などほかの複数の模様を一緒にすると購入者がキャラクターを連想し公式グッズだと認識すると指摘しました。

NHK東海NEWS WEB

なお、この事例は控訴しているようなので、今後の結論が代わる可能性はゼロではありません。

「広く認識されている」ことが必要(周知性)

不正競争防止法2条1項1号を主張するためには、もう1つ要件があります。

その商品の表示が「需要者の間に広く認識されている」ことが必要です(周知性、周知表示)。そのため、認知度が低い商品の場合には「広く認識」されていない、と判断されてしまうこともあります。

実際、裁判を行うと、この周知性を裁判所に認めてもらうのが結構苦労します。市場シェア、販売している店舗の状況、顧客認知度など色々裏付けなくてはいけません。

商標に関して「ラーメン二郎」は周知性なしと特許庁が判断

過去には、不正競争防止法ではなく商標に関する事案ですが、あの「ラーメン二郎」が周知性がないと特許庁に判断されたことがあります。

ラーメン二郎のインスパイア系店舗の一つである麺達人株式会社が「宅二郎」の屋号で営業を開始し、2020年8月13日には「宅二郎」の商標を登録していました(商標登録6280422)。

屋号についてはラーメン二郎からの抗議を受けて変更しました。

しかし、商標の登録については、2021年5月12日、ラーメン二郎からの異議申立てを特許庁が退けたため、現在も商標登録が維持されています。

特許庁がラーメン二郎からの異議申立を退けた理由が、以下のとおりで、周知性がないことでした。

「二郎」という文字だけなら一般人には周知性はないかもしれませんが、ラーメン好き(需要者)には「二郎」「ラーメン二郎」でも周知性はあると思うんですけどね。
結構、驚きの判断です。

本件ラーメン店が、ラーメンに強い関心を持つ我が国の需要者の間である程度知られているといい得る。  しかしながら、ウェブサイトや書籍などを通じた本件ラーメン店に関する情報の掲載回数やランキングの選定回数は、決して多いものということはできず、それらの証拠のみをもって、引用標章1が、我が国において、本件商標の指定役務の需要者に、どの程度知られているのかを客観的に把握することができない。  また、我が国における引用標章1についての役務の提供実績(売上高、提供件数、市場占有率(シェア)など)や、同業他社の同一又は類似役務の提供実績、引用標章1に対する本件商標の指定役務の需要者の認識を客観的に示す証拠は提出されておらず、職権により調査するも、これについて明らかではないことから、引用標章1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。  また、「二郎」(引用標章2)の文字のみが、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間で広く知られたことを示す具体的な証拠はない。  以上のとおり、申立人が提出した全証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用標章が、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されている状態にあったと判断することはできない。

特許庁、審決

この審決が出た後、ラーメン二郎がどういう対応をしているかは報じられていないのでわかりません。

まとめ

商標権登録をしていない商品やサービスについて同じ商品や真似した商品が発売されたときには、不正競争防止法2条1項1号を根拠にして差し止めするケースが非常に多いです。

しかし、差止まで認められるためには、混同させる表示であることと、周知されている商品・サービスであることをキチンと証明する必要があります。不正競争防止法2条1項1号なら簡単に差し止められるわけではないので注意してください。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。