コスモエネルギーホールディングスが買収防衛策を導入するための株主意思確認総会決議に「マジョリティ・オブ・マイノリティ」条件を採用。賛成比率59.54%は微妙ではないか。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

コスモエネルギーホールディングス(コスモHD)が、2023年6月22日に行った定時株主総会で「大規模買付行為等への対応方針に基づく対抗措置の発動に関する承認の件」の議案を可決する際に「マジョリティ・オブ・マイノリティ(MOM)」要件を採用しました。

今日は、「マジョリティ・オブ・マイノリティ(MOM)」とは何か、過去の裁判例に照らして許されるのか、株主平等の原則に照らして許されるのかについて、です。

結論から言えば、MOMまで採用するなら上場なんて止めてしまえばいいのに、です。

コスモHDがMOMを採用するに至った経緯

基本方針・対応方針の作成・公表と独立委員会からの勧告

コスモHDがMOMを採用してまで株主総会で可決した議案は「大規模買付行為等への対応方針に基づく対抗措置の発動に関する承認の件」です。

これは、コスモHDの取締役会が2023年1月11日に決議した、2023年開催の定時株主総会終結の時までを有効期間とする「株式会社シティインデックスイレブンスらによる当社の株券等を対象とする大規模買付行為等が行われていることに基づく当社の会社支配に関する基本方針及び当社の株券等の大規模買付行為等に関する対応方針」に基づく対応です。

コスモHDの取締役会は、同方針にて「独立委員会の勧告を最大限尊重した上で対抗措置の発動の是非等を判断する」と言明していました。

そうしたところ、独立委員会が、

本議案を当社の本定時株主総会に上程する場合、その可決要件を、シティら及び当社の取締役に加え、シティら及び当社の取締役それぞれに関係するものとして独立委員会が認める者を除く出席株主の議決権の過半数の賛同とする(いわゆるMoM決議とする)ことは相当である。

コスモHD定時株主総会招集通知34ページ

と勧告したました。

これを受けて、コスモHDの取締役会は、MOMを採用して株主の意思を確認する株主総会(株主意思確認総会)を兼ねた定時株主総会を開催し、本議案を上程・採決を諮ったしたのです。

独立委員会の独立性への疑問

コスモHD定時株主総会招集通知29ページには「本日、独立委員会から勧告書を受領しました」とあるので、招集通知を発信した6月6日に勧告書を受領したように読めます。

6月6日に受領したのに、当日中にその内容を参考書類として印刷・製本して招集通知を発信できるとは、印刷〜発送までのスピードが驚異的です。

他方で、コスモHDの取締役会及び招集通知を作成する事務局が、独立委員会からMOM決議を勧告されること及びその勧告の内容をあらかじめ知らされていたのだとすれば、独立委員会の独立性に疑問符が付きます。

マジョリティ・オブ・マイノリティ(MOM)とは何か

コスモHDが本議案の採決のために採用したマジョリティ・オブ・マイノリティ(MOM)について、経産省が2019年6月28日に公表した「公正な M&A の在り方に関する指針」は、以下のとおり定義しています。

マジョリティ・オブ・マイノリティ条件とは、M&A の実施に際し、株主総会における賛否の議決権行使や公開買付けに応募するか否かにより、当該 M&A の是非に関する株主の意思表示が行われる場合に、一般株主、すなわち買収者と重要な利害関係を共通にしない株主が保有する株式の過半数の支持を得ることを当該 M&A の成立の前提条件とし、当該前提条件をあらかじめ公表することをいう。

「公正な M&A の在り方に関する指針」39ページ

なお、MOMを採用すると、買収している株主が議決権を行使できないことから、買収している株主が保有する議決権割合が高ければ高いほど、少数株主の過半数の賛成だけで決議が通ってしまいます。

そのため、経産省の「公正な M&A の在り方に関する指針」でも、

マジョリティ・オブ・マイノリティ条件の設定については、支配株主による従属会社の買収のように買収者の保有する対象会社の株式の割合が高い場合における企業価値の向上に資する M&A に対する阻害効果の懸念等も指摘されていることを踏まえると、常にマジョリティ・オブ・マイノリティ条件を設定することが望ましいとまでいうことは困難であり、

「公正な M&A の在り方に関する指針」40ページ

と課題が指摘されています。

東京機械製作所事件

コスモHDと同様に

  1. 買収者との事前交渉の決裂
  2. 取締役会による基本方針・対抗措置の決定・公表
  3. 買収者が基本方針に従わない
  4. 独立委員会が勧告
  5. 対抗措置の発動をMOMの方法で株主意思確認総会決議

の流れで、MOMを採用して株主総会決議をした前例として、2021年の東京機械製作所事件があります。

東京製作所事件の一連の裁判例では、基本方針・対応方針にもとづく新株予約権の無償発行が「著しく不公正な方法」であるかが問題となり、その問題の要素として

  1. 特定の株主の保有割合の低下を目的としたものか
  2. MOMによる議決権行使が株主意思確認総会の手続の瑕疵となるか

が争点となりました。

このうち、MOMによる議決権行使が株主意思確認総会の手続の瑕疵となるかについて、

東京地裁決定(第一審;東京地決2021年10月29日)は、

取締役会設置会社がその判断に基づき同法に規定する事項及び定款で定めた事項以外の事項について株主総会の決議をすることとした場合においても、会社の利益の帰属主体である株主は,当該株主総会において,自己の議決権を行使することにより、当該株主として有する会社の経営・支配に参加することができるという権利を現実に行使することができるのが原則であるから、株主の一部につき議決権の行使を制限することは、そのような制限がされた趣旨、当該株主総会において執られた手続や議論の具体的状況いかんによっては、同法308条1項及び同法309条1項の趣旨に照らして、上記の重大な瑕疵に当たるときがあるというべきである。

との判断基準を示しました。

東京高裁決定(抗告審;東京高決2021年11月9日。なお、特別抗告・許可抗告審;最高裁2021年11月18日)は、

上記の重大な瑕疵の有無は、株主総会において、株主の一部につき議決権の行使が制限されている場合、当該株主総会の性質、目的、制限を受けた株主の持株比率、そのような制限がされた趣旨、当該株主総会においてとられた手続や議論の具体的状況、議案の賛成率等を踏まえて、会社法308条1項本文(一株一議決権の原則)、309条1項(普通決議の決議要件)の各規定の趣旨に反するか否かを検討して判断するのが相当である。

と判断基準を示しました。

そのうえで、

  • 株券等所有割合が3分の1を超える株式を短期間のうちに買収している。このような買収行為は、一般株主からすると、投資判断に必要な情報と時間が十分に与えられず、買収者による経営支配権の取得によって会社の企業価値がき損される可能性があると考えれば、そのリスクを回避する行動をとりがちであり、それだけ一般株主に対する売却への動機付けないし売却へ向けた圧力(強圧性)を持つ
  • 株主意思確認総会において、買収者側の持株比率は約40%であって、半数を超えていない。非利害関係出席株主の議決権総数の約79%(仮に,買収者側が提出した委任状を有効な反対票として扱った場合でも約69%)の賛成を得て可決された
  • 株主意思確認総会の性質及び目的に照らすと、買収者側に議決権を行使させることは適切とはいえない。
  • 買収者側の持株比率が過半数に達していなかったことも踏まえると、MoM要件によってする株主意思確認総会における株主意思の確認の手続が、一株一議決権の原則を定める会社法308条1項に反し許されないということはできない。

などの要素を挙げ、MOMによる議決権行使は株主意思確認総会の手続の瑕疵にはならないとの結論づけました。

東京機械製作所の決定とコスモHDの結果を対比すると・・適法性は微妙では?

東京機械製作所の決定からは、対抗措置を発動するかどうかについてMOMで採決することが株主意思確認総会の手続の瑕疵となるかどうかは、

  • 買収者側の持株比率
  • 買収者以外の株主による対抗措置発動への賛成比率(買収者側の委任状を含めた反対比率)

が大きく影響しそうです。

2023年6月23日付でコスモHDが開示した臨時報告書によると、シティインデックスイレブンス側の(17,680,525株)およびコスモHDの取締役(8名、合計83,471株)、その他独立委員会が利害関係者と認める者を除く出席株主の議決権行使の結果は、本議案への賛成比率は59.54%でした。

東京機械製作所では賛成比率が約79%、仮に買収者側の委任状を反対票として合計しても賛成比率が約69%であったことと比べると、コスモHDの賛成比率59.54%は本議案に賛成した株主は明らかに少ないです。

シティインデックスイレブンスは議決権割合が20%を超えていますから、シティインデックスイレブンス側の委任状を反対票として合計して本議案への賛成比率が50%を切ることになれば、重大な瑕疵があると評価され、東京機械製作所とは反対の結論になってもおかしくありません。

株主平等の原則に違反しないか

「株式会社シティインデックスイレブンスらによる当社の株券等を対象とする大規模買付行為等が行われていることに基づく当社の会社支配に関する基本方針及び当社の株券等の大規模買付行為等に関する対応方針」には、シティインデックスイレブンスからの大規模買付行為が対応方針を導入する契機であることが詳細に記載されています。

また、対応方針は「特定株主グループ」などの表現を使用し、一見すると、大規模買付行為をする株主一般に適用されるような文面になっています。

しかし、対応方針の10ページ、15ページ、20ページなどには「シティ」との言葉が使用され、さらに、別紙として「村上氏ファンド等の過去の投資活動に関する裁判所の認定等」まで添付しているので、シティインデックスイレブンスを狙いうちした対応方針であることがわかります。

シティインデックスイレブンスからの大規模買付行為を防ぐために対応方針を導入したいコスモHDの動機は理解できないわけではありません。

だからといって、対応方針を株主一般に適用するのではなく、シティインデックスイレブンスを狙いうちして作成したのだとすると、株主平等の原則に違反しないのかは素朴に疑問です。

なお、東京機械製作所の高裁決定では、特定の株主を想定してMOMを定めた対応方針が株主平等原則に違反するかについては、

  • 特定株主に対する差別的取扱いが衡平の理念に反し、相当性に欠けるものでない限り、そのような差別的取扱いは、株主平等の原則に反するものとはいえないと解される
  • 本件対応方針は、買収者側が一定の条件を満たした誓約書を相手方に提出し、これを遵守すれば、その実行を留保するものとされ、買収者側が自らの判断で対抗措置の不利益を回避できる
  • 本件対抗措置では、買収者が、対応方針が求める書面を相手方に差し入れた場合には、猶予期間内に限り、株主総会招集権が制約されるにすぎない(上記書面を差し入れなかった場合には,買収者側の少数株主権は制約を受けない
  • 既に具体化している大規模買付行為等が企図されなくなった後においては,本件対応方針の適用は想定されていない
  • 取締役会は、企業価値ひいては株主の共同利益の向上等の観点から、独立委員会の意見も踏まえ、本件対応方針を随時見直し、本件対応方針の変更の余地を認めている

として、「相当性に欠けるものではない」から株主平等原則には違反しないとしました。

コスモHDの基本方針・対応方針の記載の仕方でも株主平等原則に違反しないのでしょうか。相当性の評価が気になります。

まとめ

そもそも上場している会社は、誰が株主になろうとそれを受けいれるべきだと思います。

株主としての権利行使の状況をみて不適切な株主であるかどうかを判断し、それ以外の株主には経営者を支持するのか、大株主になろうとしている買収者を支持するのかを株主総会で判断を仰ぐべきでしょう。

取締役会が買収防衛策を導入することは、究極的には会社の既存の経営環境を守ることではなく役員自身の地位を守ることにも繋がります。役員の保身を目的とする買収防衛策ではないのだとしたら、買収防衛策を発動したときには、役員の地位を降り、信頼できる後任の役員に託したほうがいいのではないでしょうか。

複雑な買収防衛策を発動するくらいなら、そもそも上場会社なんて辞めてしまったらいいと思います。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。
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