株主ストラテジックキャピタルが提案した、ガンホー社長の取締役解任決議が臨時株主総会で否決。解任決議を巡る株主・会社側の広報の攻防。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

ガンホー・オンライン・エンターテイメント(以下、ガンホー)が2025年9月24日、株主であるストラテジックキャピタル(SC)からの招集請求に応じて臨時株主総会を開催しました。

SCは森下社長の取締役解任議案を提案していたものの、同議案は否決されました。

仕掛けたのはストラテジックキャピタル

ガンホーが臨時株主総会を開催したのは、株主であるSCからの招集請求がきっかけです。

SCは2025年7月23日付けで臨時総会の招集を請求し、かつ、森下社長の取締役解任議案を提案しました。

その主たる理由は、ガンホーが2012年から発売しているソーシャルゲーム「パズドラ」以降ヒット作がなく、企業価値が低下し続けているというものでした。

ガンホーからの反対意見の説明

SCからの取締役解任議案に対し、ガンホーは2025年8月15日、「当社見解に対する説明資料」と題する7ページのパワーポイントを公表しました。

かつては、株主総会に向けた株主提案に対して会社が反対する場合、ペラ1枚の紙で反対意見を表明するだけに留まることが少なくありませんでした。

しかし、「株主との対話」が叫ばれる昨今、これでは、議案を提案した株主に対してだけでなく、他の株主に対しても、会社側現経営陣が誠実に説明しているようには映りません。

これでは、株主総会で株主提案議案に対して賛否を巡る票集めになったときに、会社側が勝つことが難しくなってしまいます。

そこで、ここ数年、会社側がペラ1枚の紙で反対意見を表明するだけでなく、その理由も含めて、一般株主にも理解してもらえるように、丁寧な説明を心掛ける姿勢が目立っています

本ブログでも花王、ダイドーリミテッド、栄研化学のケースを紹介したことがあります。

今回のガンホーの対応も、その流れに乗ったものとして理解することができます。

SCによる特設サイトの開設と丁寧な説明

そうしたところ、SCは2025年8月27日、「ガンホー「一発屋」からの再起に向けて」と題する特設サイトを開設しました。

上記のダイドーリミテッドのケースでも、SCは同じように特設サイトを開設していたので、同じパターンの手法と言えます。

SCは特設サイトにて、なぜ森下社長の取締役解任議案を提案したのかを図表を駆使しながら視覚的にもインパクトが残るように説明しています。

内容の賛否はともかく、こうした説明手法は非常に参考になります。

また、特設サイトでSCは、「(ガンホーによる)弊社株主提案に対する反対意見に対する見解」も掲載しました。

これは、ガンホーが公表したパワーポイントの各ページを取り上げ、どこがどう味方が異なるのか、SCの見解を具体的に説明したものです。

その中の1ページを抜粋すると、次のようになっています。

ベースになっているパワーポイントはガンホーが公表したもので、ページ見出しの「ガンホー取締役会の反論①に対する見解」と、パワーポイント中の赤字で書かれているA、B、CがSCが主張している部分です。

丁寧ではあるのかもしれませんが、これを見た一般株主は「ここまで来ると、ちょっとやり過ぎではないか」との印象を抱き、かえって、「SCには賛成したくない」との行動に繋がったかもしれません。

海外とは違う日本人株主のメンタリティーには合わないような気もします。

もしかしたら、こうしたやり過ぎ感が一般株主からの賛同が得られず、臨時総会で取締役解任議案が否決された一因なのかもしれません。

臨時総会後のSCの声明

9月24日の臨時総会後、SCは結果に対する声明を発表しました。

ガンホーの価値を棄損している根本的な問題を解決するには至っておりません。むしろ、ガンホー取締役会が、長期にわたる業績及び株価低迷の事実から目を背け、森下社長が「業績に貢献している。」「企業価値向上に貢献している。」等と主張したことは、SCを含むガンホー株主において、現在の経営陣に対する危機感を一層強める結果につながったと考えております。

弊社は、今後もガンホー経営陣との対話を継続し、ガンホーの株主価値向上のために正しい意思決定をしていただけるよう求めて参ります。株主の皆様におかれましては、ガンホーと弊社への変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

これを見ると、ストラテジックキャピタルとガンホー経営陣の争いはこれで終わりではなく、しばらくの間は続くのかもしれません。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。

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