株主代表訴訟の結果、取締役に善管注意義務違反・忠実義務違反があり、会社に対して損害賠償をしなければならない責任を負った場合でも、取締役は、次の4つのパターンに限って、賠償責任を免除することができます。

取締役の責任が限定・免除される4パターン

(1)すべての株主が責任免除に同意した場合

株主代表訴訟の結果、取締役が損害賠償責任を負うことになったときには、代表訴訟の当事者が責任免除に同意するとは思えません。
したがって、株主代表訴訟の場合に、このパターンで取締役の責任が免除されることは、ほぼないと思って良いでしょう。

(2)株主総会の特別決議による責任免除

すべての株主が同意しなくても、株主総会を行ない、出席した株主の3分の2以上が責任免除に賛成するとの特別決議があった場合には、取締役の責任を免除することができます。

ただし、この場合には、前提条件があります。
それは、取締役が善管注意義務違反したことについて、「善意無重過失」であること、です。

要するに、取締役が株主の利益にならない経営判断をしたことについて「悪意(株主の利益にならないことを認識していた)」のときは免責されず、「善意だけど軽過失(株主の利益にならない経営判断をしたことが、ついうっかりの注意義務違反だった)」のときにだけ免責される、ということです。

株主代表訴訟の結果、取締役が損害賠償責任を負うことになったときには、ほとんどの事例では「過失」による善管注意義務違反が理由です。経営判断の過程で十分な情報収集をしていなかったとか、損害拡大防止できたのに防止しなかったとかなどです。この場合に「軽過失」が認められることはほとんどない、とかんがえていた方がよいでしょう。

もう一つは、株主総会での説明義務があるということ、です。
賠償額、責任限定・免除額については当然のこととして、もっとも重要なのは「責任を免除する理由」です。
裁判所が善管注意義務違反・忠実義務違反があると認めた件について、株主が納得できるような「責任を免除する理由」を考えるのは、ハードルは高いです。

手続的にも、監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では、責任免除の議題を株主総会の議題にするためには、監査役・監査等委員・監査委員の同意が必要です。
監査役・委員会の立場からすれば、裁判所が善管注意義務違反・忠実義務違反があると認めた件について、同意をすることは、監査役の場合には、自らの監督義務違反を問われることと裏腹です。そのため、安易には同意しないことが予想できます。

(3)取締役会による責任免除

監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では、当該責任を負う取締役をのぞく取締役の過半数の決議によって、取締役の責任を一部免除することができます。

この場合も、取締役が善管注意義務違反・忠実義務違反について「善意・無重過失」であること、が前提条件です。

手続的には、定款に「取締役会決議により責任を免除できる」ことを定めておく必要があります。
すなわち、定款変更という手続において、出席株主の3分の2以上に賛成されるという株主総会の特別決議を経ておくことが事前に必要である、ということです。

しかも、総株主の議決の3%以上を保有する株主が異議を唱えたときには、この方法での責任免除はできません。

(4)責任限定契約による責任免除

業務執行取締役等以外の取締役・社外監査役・会計監査人だけは、会社に対する責任を限定することを内容とした契約(責任限定契約)を結ぶことで、責任の一部を免除する方法が認められています。

手続的には、この場合も、定款に「責任限定契約により責任を免除できる」ことを定めておく必要があります。
責任限定契約の導入するとの定款変更を株主総会の議題にする際には、監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では、監査役・監査等委員・監査委員の同意を経ておかなければなりません。

取締役の責任を限定・免除できる額の上限(最低責任限度額)

なお、上記の(2)~(4)のいずれの場合も、取締役の責任がすべて免除されるわけではありません。

取締役には「最低責任限度額」という最低限度の責任額が定められており、(1)~(3)のいずれの場合も、その限度額までの責任までは免除されません。

「最低責任限度額」とは、次のとおりです(平成26年改正により一部変更になりました)

代表取締役・代表執行役 年間の報酬等×6
代表取締役以外の取締役(業務執行取締役等に限る)代表執行役以外の執行役 年間の報酬等×4
上記以外の取締役・監査役・会計監査人 年間の報酬等×2

なお、業務執行取締役等以外の取締役・監査役・会計監査人が責任限定契約によって免責しようとする場合に、あらかじめ、定款上で、任意の「最低責任限度額」を定めておくこともできます。
ただし、任意の「最低責任限度額」と「年間の報酬等×2の額」のいずれか高い方が、実際の責任免除額の上限です。

【2014年6月25日追記】

平成26年会社法改正により、取締役の最低責任限度額が変わりました。
上記本文、および表の赤字部分は、平成26年会社法改正を踏まえた内容になっています。