日本スチュワードシップ・コードとガバナンスコードって必要なの?

コーポレートガバナンスと日本版スチュワードシップ・コード

近時、「ガバナンス」という言葉が当たり前のように使われています。

「コーポレートガバナンス」という言葉を、経営者の責任を問う例がその典型です。
要するに、経営者、つまり取締役・監査役は、社内で不正が起きないような仕組み作りをしているか、不正が起きたときに対処できるな仕組み作りをしているか、ということです。

経営者=取締役・監査役は、株主に株主総会で議決権を行使して選任される立場です。
そこで、株主が、あらかじめ「こんな経営者なら支持する。こんな経営者は支持しない。」という方針を出しておく。
これが「スチュワードシップ・コード」と呼ばれるものです。

日本では、2014年2月に金融庁が機関投資家に向けて「日本版スチュワードシップ・コード」を発表しました。
日本版スチュワードシップ・コード

2014年8月末時点で160の機関投資家が日本版スチュワードシップ・コードの受入を表明したそうです(金融庁HPより)。

これは、結局のところ、経営陣に株主のことを意識しながら経営判断しなさい、ということを促すためのもの、という広い意味では「コーポレートガバナンス」に役立つと言えるでしょう。

日本版スチュワードシップ・コードの必要性への疑問

ただ、正直言って、これって本当に必要なものなのか?というのを素朴に感じます。

株式会社にとって株主はオーナーです。
そのオーナーは1人ではありません。ましてや、機関投資家だけではありません。
機関投資家が大量に株式を保有している大株主の一人であることは否定できません。
しかし、機関投資家以外の個人株主もたくさんいます。

金融庁の「日本版スチュワードシップ・コード」を発表し、機関投資家がそれを受け容れたからといって、経営陣は機関投資家だけを見ていればいいわけではありません。
機関投資家だけを見ていれば、たしかに、自分の取締役・監査役の地位は安泰かもしれません。
しかし、果たして、それで株主全体の利益を考えた経営判断ができるのか、という疑問は尽きません。

経営陣は、誰よりもその会社の業務の内容を知っている人たちです。
時には、自分の地位が危うくなっても機関投資家の意向に背く経営判断をしなければならない場合もあるでしょう。
そうしたときに、「日本版スチュワードシップ・コード」は、むしろ、適正な経営判断をしようとしている経営陣にとって足かせになりはしないかな、と危惧するのです。

たとえば、西武ホールディングスとサーベラスの関係。
報道を見ている分には、経営陣と投資家との判断がぶつかり合って、衝突しあって、それでも少しずつ前進している、というように見えます。
気概のある経営陣だからこそ、衝突する経営判断もできたのかもしれません。
これが日和見の経営陣だったら、いったい、どうなっていたのか。

要するに、日本版スチュワードシップ・コードとか、機関投資家には良いのかもしれませんが、経営陣にとっては余計なお世話ということになるのではないかと思うのです。

企業統治指針(コーポレートガバナンスコード)、ナニソレ?

日本版スチュワードシップ・コードとは別にもう一つ見逃せない動きがあります。
金融庁と東京証券取引所による「企業統治指針(コーポレートガバナンスコード)」の策定に向けた動きです。

「上場企業の経営規律を強化し収益力を向上させるための企業統治(コーポレートガバナンス)指針作りが始まった。金融庁と東京証券取引所が7日、有識者会議の初会合を開いた。論点になりそうなのは社外取締役の人数や企業同士の株式持ち合い抑制策。経済界には慎重な意見が多く、どこまで踏み込めるかがポイントになる。指針を来年6月までにまとめる。」(2014年8月8日、日本経済新聞より)

9月30日には3回目の有識者会議が行われるそうです。

会社法と会社法施行規則で内部統制(業務適正確保体制)について株式会社の動きをがんじがらめにし(財務面の内部統制にはさらに金融商品取引法もある)、さらに、法律でもなんでもないルールとして「企業統治指針(コーポレートガバナンスコード)」を作ってがんじがらめに輪を掛ける。

経営陣にガバナンスをしっかり徹底させて、不正をおこなわせないようにする、という基本的な考えには諸手を挙げて賛成します。

しかし、会社で不正が行われない仕組み作りをする、不正が行われたときの対処づくりを考える。
これは、本来、経営陣に任せて、その会社ごとにオリジナリティのある仕組み作りをさせればいい話です。
行政である金融庁や、上場会社に株式取引の市場を提供している東京証券取引所が考えることではないと思うのです。
率直に言えば、これも余計なお節介であり、会社経営の組織作りにまで行政が口を挟むな、と感じます。

もちろん、自分で考えられない経営陣(や、実際にルール作りをする法務/総務部門)にとっては、参考になると思います。
しかし、本当は、ここを自分の頭で考えてこそ、高い報酬をもらえる経営陣であり、ホワイトカラーで管理部門と呼ばれる人たちのはずです。
それを行政や取引所に任せるなんて・・・(以下、激辛になるので略)。

しばらく動向を見守りたいと思います

社外取締役の存在・役割は会社の業績にとって意味があるのか

昨日、「『完全』社外取締役」について一本書きました。
今日も引き続き、社外取締役の役割について書きます。

社外取締役の役割・存在意義についての疑問

社外取締役に関して、常について回る議論が

  • 「社外取締役に効果ってあるのか?」
  • 「社外取締役で会社の売上が上がるのか?」
  • 「社外取締役でガバナンスに効果は出るのか?」

というものです。

社外取締役の効果についての分析結果

今日の日経新聞に、この部分について、おもしろい記事が載っていたので紹介します。

社外取締役の存在・役割は業務改善に影響があるのか?

まず、1つめは、社外取締役が業務改善に影響しているか、という疑問への研究結果です。

「代表的なものの一つが、早稲田大学の宮島英昭教授が12年に発表した論文だ。
宮島教授は社外取締役のいる企業といない企業との間で、業績改善にどのような違いがあるかを測定した。
得られた結論は
(1)社外取締役が業績改善に結びつきやすい企業と、そうでない企業がある
(2)製品の独自性が低く、複雑な事業を持たない企業ほど、社外取締役の選任で業績が改善しやすい
(3)逆に、人材やノウハウといった無形資産を競争力の源泉とする企業は社外取締役の有効性に乏しい――など。」
(2014年6月29日日本経済新聞朝刊より)

この研究結果の中で、注目すべきは、(2)と(3)でしょう。

「製品の独自性が低く、複雑な事業を持たない企業」と「人材やノウハウといった無形資産を競争力の源泉とする企業」とを区別して、前者では社外取締役の存在・役割は業務改善に効果がある、後者では社外取締役の存在・役割は業務改善に効果はない、と結論づけています。

「製品の独自性が低く、複雑な事業を持たない企業」と「人材やノウハウといった無形資産を競争力の源泉とする企業」の区別は、この記事からはわかりません。

強いて考えるなら、前者は、事業内容がマニュアル的な企業=社長が「右向け右」と指示したら、あるいは指示しなくても、上意下達で、事業が進んでいく企業かもしれません。
企業ではなく事業単位で言えば、組み立て工場のラインや経理処理など一定的な処理が行われる事業が、ここに該当するかもしれません。

後者は、社長が方向性だけ示したら、個々の事業については従業員の裁量に委ねられている企業かもしれません。
これも事業単位で言えば、システムエンジニアのようにプログラミングをする事業や広報事業が、ここに該当するかもしれません。

従業員による横領の問題などが発生しやすい営業は、両者の側面を含んでいる事業かもしれません。

要するにここで申し上げたいのは、企業として業務改善を目的として社外取締役を選任する場合には、改善したい事業分野がどこなのか、その社外取締役を選任することが、その事業分野の改善に効果的なのか、候補者をピックアップする時に社外取締役に期待する目的・役割と期待する効果・機能を明確にしておかなければ社外取締役を選任する意味はない、ということです。

社外取締役の存在・役割はROE・配当性向の改善に効果があるか?

もう一つは、社外取締役を選任することで、投資家・株主が納得するような株式への影響が生じるか、という疑問への研究成果です。

「外国人投資家の関心の高まりに対応し、UBS証券の大川智宏ストラテジストは、自己資本利益率(ROE)や配当性向と社外取締役の関係を分析している。
それによると、社外取締役がいない企業といる企業とでは、ROEの改善度合いや配当性向の高さで、明確な違いが認められた。しかし、大企業に限れば社外取締役比率でROE改善率や配当性向に大差はなかった。」(2014年6月29日日本経済新聞朝刊より)

この分析結果では、「大企業に限れば・・大差はなかった」とあります。
ここでも、大企業がどれくらいの規模を想定しているのかは明らかではありません。

ただ、ここで重要なのは、「明確な違いが認められた」という部分ではないかと思います。

ROEは、(1株あたりの利益)÷(1株あたりの株主資本)、で算出します。
1株あたりの利益は、(当期純利益)÷(発行済み株式数)、で算出します
1株あたりの株主資本は、(株主資本)÷(発行済み株式数)、で算出します。
要するに、(当期純利益)÷(株主資本)、がROEということです。

何を申し上げたいかというと、増資でもしない限り「株主資本」が増えることはないわけです。
ROEを改善させるために増資をすることは、そうそうないはずです。
ということは、ROEが改善したということは、当期純利益が改善した=向上したということです。
簡単に言えば、売上が上がった、あるいは/かつ、当期経常損失が減少した、ということです。

純利益が上がらなければ、配当に回す剰余金は増えないのですから、配当性向が向上したというのも、背景は同じです。

それでは、社外取締役を選任したことで、売上がアップした、and/or経常損失が減少した理由は、何なのか?
社外取締役がいるかどうかによって、消費者や顧客が、消費活動を変える、取引条件や態様を変えるとは想像できません。
となると、会社の売上アップ、経常損失の減少は、社外取締役が社内に影響を与える役割・機能を果たしたからだと考えることができます。

たとえば、社外取締役が入ったことで取締役会で経営上効果的なアドバイスを得ることができたのではないか。
それとも、社外取締役が入ったことで経費管理に厳しい目が及ぶようになり、経費節減に厳しいメスが入ったのではないか。
このような社外取締役の役割・機能が、売上アップ、経常損失が減少した理由として考えられます。

もしこれらが理由だとすれば、社外取締役候補者を選任する場合に、取締役会で経営上効果的なアドバイスをしてくれる人なのか、あるいは経費管理に厳しい目を光らす人なのか。
こうした役割・機能を考えなければ、社外取締役を選任する意味がない
と言えます。

社外取締役=有名人ではダメ

ここまで見てきたとおり、社外取締役を選任する場合には、社外取締役の選任によって業務改善、あるいは、ROE・配当性向向上の何を期待するのか、その目的意識・役割を明確にしなければならないこと、また、その期待に応じた人選をしなければ、目的意識・役割と結果に齟齬が生じてしまうこと、を結論として出すことができます。

単に、元官僚とか、元裁判官、元検察庁、有名な経営者、取引先の経営者、社長と懇意にしている経営者や専門家であるとか、そういった外面だけで社外取締役を選んでも、その企業は社外取締役選任の効果は得られないということです。
「何かあったときに顔が利くだろう」という考えで社外取締役を選任しているのであれば、本末転倒ということです。
その考えで社外取締役を選任するのであれば、せいぜい、相談役か顧問に留めておくほうが無難ということです。

もしかしたら、社外取締役を選任しても「大企業では・・・大差はなかった」というのは、ここが要因になっているのかもしれません。

株主総会当日、事務局席で弁護士は何をやっているか

定時株主総会はなぜ6月下旬に集中するのか

6月17日のトヨタ自動車の株主総会を皮切りに、3月決算期の会社の定時株主総会が集中して行われるシーズンが始まりました。

そもそも、なんで、6月下旬に定時株主総会が集中するのか、ということから説明します。

会社法では、株式会社は、決算期(事業年度)から3か月以内に株主総会を行わなければならない、と定めています。
3月決算期の会社は、6月末までに株主総会を行わなければならない、ということです。

決算期から3か月以内に行えば良いので、極端な話、3月決算期であれば4月にやっても5月にやってもいいのです。
しかし、現実には、決算を締めたり、株主総会の準備期間、招集通知の発送期間などを考慮すると、どうしても6月下旬に集中します。

あとは、平日に行うのか、週末に行うのかなどを考慮していくと、自然と、同じような時期に集中していくことになります。

別に、会社が集中日に集中させようと考えているから、6月下旬に集中するわけではないのです(もちろん、中には、あまり株主に出席して欲しくないという思惑から、あえて集中させている会社もありますが・・)

【2014年6月28日追記】

2014年6月28日付日本経済新聞朝刊によると、3月決算の上場企業で、6月27日の集中日に株主総会を開催した企業は39%だったそうです。

株主総会の事務局で、弁護士は何をしているのか

企業法務に携わる弁護士にとっても、株主総会事務局(議長や取締役・監査役の後ろの席)でのアシスト役で神経をすり減らす時期でもあります。

総会までの準備はもちろん忙しいです。
しかし、それ以上に、株主総会当日の朝からの緊張感、株主総会の全議案の採決が通った後閉会宣言に至ったときの緊張からの開放感のほうが、何年やっても、何回やっても、心身を蝕みます。

株主総会の集中シーズンを乗り越えた7月は、ほぼ抜け殻になっています。
集中シーズンは、通常の仕事のほかに、株主総会の招集通知のチェックやシナリオ、想定問答のチェックなどで、週の合計睡眠時間が20時間前後になることもザラです。
そのため、7月になると、ロングバケーションを取り、海外に長期旅行に行く弁護士もいます。
私は高校野球が大好きなので(年間で練習試合も含め100試合以上は現地で観戦しています)、夏の選手権=甲子園の予選が始まる7月には予選べったりの日々を送ります。

ちょっと話が外れました・・。
株主総会の当日、弁護士は事務局で何をしているかという話です。

株主総会の事務局で弁護士は何をやっているのかというと・・・簡単にまとめると、次の2つです。

  1. 議長による議事進行・議事運営が会社法に違反していないかのチェックとアシスト
  2. 取締役・監査役による回答が、説明義務を尽くしているかのチェックとアシスト

私の場合、これらのアシスト業務(サポート業務と言っても良いかもしれません)を終えると、株主からの質問が出る株主総会が終わった時には事務局の机の上に、書き殴ったA5サイズのメモ用紙が山になっています。

議長による議事進行・議事運営のチェックとアシストとは

通常は、議事進行にはシナリオを用意しているので、議長がシナリオを読み上げ、シナリオどおりに議事進行・議事運営していれば問題ありません。

しかし、株主から動議が出た場合には、動議に対応しなければなりません。
典型的な動議は、会社が提案した議案とは違う内容を株主が提案する「修正動議」と、議長による議事進行が不満なので議長を交代することを要求する「議長不信任動議」です。

たとえば、会社が剰余金配当(株主配当)を1株あたり100円とする議案を提案したのに対して、株主が1株あたり200円としたらどうかと提案するのが、修正動議です。

もちろん、動議が出た場合には、動議対応のノウハウがあるので、そのノウハウを駆使して、事務局から議長に対して議事進行、議事運営のアシストしていくことになります。

気をつけなければならないのは、修正動議を受け付けた後、採決時に修正動議の存在を忘れないようにすることです。
会社側提案の原案を採決してしまえば修正動議は採決するまでもなく否決されることになるので、その旨をキチンと説明しないと修正動議の採決をしていないではないかと株主から指摘されてしまう可能性もあります。極端な場合には、株主総会の取消訴訟を提起されることもありえます。

取締役・監査役が説明義務を尽くしているかのチェックとアシストとは

株主が簡単な質問をしてくれればいいですが、何を質問したいのかわからない場合や意見なのか質問なのかわからない場合がよくあります。
そうした場合に、事務局は、要するに株主の質問は何かをまとめます。

そのうえで、

  1. そもそも取締役が説明義務を負っている質問なのか
  2. 説明してはいけない質問なのか
  3. 説明義務は負っていないけれど、説明が禁止される質問ではないので、答えてもいい質問なのか

を分類します。

この分類作業をするためには、株主総会の招集通知、計算書類、付属明細などに記載されている内容を頭に入れておくことはもちろん、最近は、事業報告をパワーポイント(キーノート)を使って招集通知に記載されていない内容も会場で株主に説明することがあるので、そのパワーポイントの内容を頭に入れておくことが必要です。

取締役が説明する場合には、答えるべきポイントやキーワードは「これ」というものを、事務局から取締役に提示します。
株主総会の招集通知に記載されている事項であれば、招集通知の何ページに記載があります、ということも指摘します。
そのため、私の場合には、株主総会に先立って、招集通知の内容を丸暗記ほどではないけれど、どこに何が書いてあるか、どういったことが書かれているかを、会社ごとに覚えるようにしています。

また、株主が複数の内容を質問している場合には、取締役が質問すべてに回答しているか、質問への回答を漏らしていないかをチェックします。
質問が3つなのに取締役が2つしか回答しなかった場合には、事務局は、議長と回答した取締役に回答漏れがあることを指摘して、補足して回答してもらいます。
そうでなければ、説明義務違反として、株主総会の取消事由になる可能性があるからです。

事務局に弁護士がいた方が望ましい株主総会

株主総会は上場会社だけに要求されるものではありませんが、なんだかんだ言っても、弁護士が事務局でゴリゴリにアシストをする必要があるのは、上場会社の株主総会です。非上場の場合には、株主同士が知り合いであったりするので、株主総会前に社長が事前説明に伺うなどして、株主総会は形だけという場合が多いです。

それに対し、上場会社の場合には、いわゆる総会屋を含め、どんな株主が来場するのかが当日までわかりません。
そのため、総会が終わるまで事務局対応が必要なのかどうか、どの程度までアシストしなければならないのかがわからない。
結局、事務局に株主総会対応になれた弁護士がいるのかどうかが、総会の帰趨を決すると言っても過言ではありません。

ちなみに、ベンチャー企業で株主に怪しげなファンドが入ってしまっている場合も、弁護士が事務局で活躍する場合が多いです。

私が弁護士になって5年も経っていなかった頃ですが、今はもうなくなってしまったベンチャー企業から、株主総会の前々日に相談を受け、株主総会の事務局に行ってみたら、ファンドという名の株主の半分以上がその筋の方々だったということがありました。

今から思えば、客観的に見れば軟禁されているといってもいい状況ではありましたが、淡々と事務局対応をして、議長に踏ん張っていただき、突っ込み処のない議事運営をしてもらったところ、最終的には、株主から「もう終わっていい」との言葉を勝ち取ることができました。

こうしたことが想定される会社の場合には、事務局に弁護士を入れておくことが望ましいです。

上場会社はなだらかな減少傾向に

弁護士が事務局で活躍する機会が多いのは上場企業の場合が圧倒的に多いのですが、その上場企業の数がなだらかに減少しています。

親子会社や企業グループで上場していたのを、親会社が持株会社に移行して子会社を完全子会社化するケース、そもそも連結ベースなら子会社を上場させている意味がないとして子会社を完全子会社化したら非上場化するケースが相次いでいます。

東証のデータを見ても、2006年末の2416社をピークに、徐々に上場会社は減少しています(2013年7月に大証と統合して一気に1100社が増えましたが、純粋に東証として見れば減少傾向です)。

上場会社数の推移
(出典元 http://www.tse.or.jp/listing/companies/b7gje6000000pj9r-att/b7gje6000000pjqx.pdf )

つまり何が言いたいのかと言いますと・・・

私が株主総会の事務局でアシストしていた会社も、3社ほど完全子会社化、あるいは合併してしまったので、そもそも株主総会を開催する必要がなくなりました。つまり、私が事務局でアシストする仕事がなくなってしまいました。

というわけで、今のところ、来年の6月下旬の株主総会シーズンに余裕がありますので、もしお困りの会社がありましたら、お声がけください(宣伝)

TBSドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」に見る、株主総会の議事運営のポイント

ルーズヴェルト・ゲームと臨時株主総会

前回の更新から、間が空いてしまいました。

さて、間もなく、都市対抗野球の季節です(今年の開催は7月18日から29日まで)。
毎年、仕事帰りや週末に東京ドームに寄って都市対抗野球を最低でも10試合は見ているので、今から楽しみで仕方がないです。

今、その都市対抗野球をテーマにしたドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」が放送されています。
ちょうど、先週の日曜日は、臨時株主総会の場面でした。

株主総会の事務局に入る機会も多く、気になる場面が多々あったので、今日は、ルーズヴェルト・ゲームでの臨時株主総会の場面を題材に、いくつか説明したいと思います。

株主による臨時株主総会の招集請求

株主総会の目的事項は何だったのか?

「ルーズヴェルト・ゲーム」では、青島製作所の株主が株主総会の開催を要求したことをきっかけに、臨時株主総会が開催されました。

会社法では、すべての株主が持っている議決権の3%以上を、6か月前から保有する株主だけが、取締役に株主総会の目的事項と招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる、と定められています。

ドラマの中では、青島製作所とイツワ電器の経営統合の是非を巡って採決をしていました。
そのため、株主は、青島製作所とイツワ電器との合併や株式交換などを目的事項として、株主総会の招集を請求したように思えます。
ただ、株主は「趣旨説明(※後述します)」の中で、経営統合に反対する取締役の解任を求めるとも言及していたので、株主は、青島製作所の取締役の解任を求めて、株主総会の招集を請求したのかもしれません。

ちなみに、取締役会が設置されている会社では、株主総会の目的事項は、会社法で株主総会決議事項とされているものか、定款に記載されているものに、限られます
それ以外の議案を目的事項として招集請求されたとしても、会社は、株主総会の目的事項とする必要はありませんし、目的事項にしてはいけないのです。

ドラマなので、そこまで厳密には考えていないのだと思いますが、招集請求の目的事項はなんだったのかな、と考えながらテレビを見ていました。

 招集請求をすることができる株主の保有期間要件の例外

ちなみに、ルーズヴェルト・ゲームを見ていると、株主側の席に座っていた株主が7名しかいませんでした。
しかも、株主総会が終わった後、会長が、招集請求した株主に株式の買取の相談に乗るということを持ち掛けていました。
そこからは、青島製作所の株主は、株式を譲渡するにあたって青島製作所の取締役会の承認を必要とする、公開会社ではない会社(非公開会社)ではないか、と推測できます。
※公開・非公開というのは上場・非上場の意味ではありません。株式の譲渡にあたって取締役会の承認を必要とするかしないかの違いです。

非公開会社の場合には、株主総会の招集を請求できる株主は、総株主の議決権の3%以上を保有していればよく、6か月前から株式を保有し続けている必要はありません

株主による趣旨説明

青島製作所の株主総会では、議案に入る前に、議長が株主に「趣旨説明どうぞ」として、趣旨説明をさせていました。
これは、株主総会の招集を請求した株主に、他の株主の前で、自分の言葉で、株主総会を請求した理由を説明させるための機会を与えるためのものです。

私も、過去に担当した株主総会で3度、株主による趣旨説明の機会に直面したことがあります。
通常は、株主が株主総会の招集を請求した場合ではなく、株主提案権を行使した場合で、提案した株主に行わせるものです。

株主提案は、株主が株主総会の目的事項を提案する(たとえば定時株主総会で会社側が提案した議案に反対する議案を提案する)ものです。
その意味で、株主が臨時株主総会の招集を請求する場合と、株主主導で権利を行使している点で共通しています。

過去の裁判例では、株主提案のケースにおいて、議長は、提案株主に提案理由等の説明の機会を与えるべき、と判断しています(山形交通事件。山形地判平成1年4月18日)。

取締役による説明義務

説明義務を尽くすためでも、他社の評価をしてはいけない

青島製作所の株主総会では、株主からの質問に対して、議長である社長が、イツワ電器がいかに経営上の課題があるのか、その財務内容にまで言及していました。
本来の株主総会であれば、これは絶対に行ってはならないことです。

株主の質問に対して会社の取締役が回答することを、説明義務といいます。

この説明義務は、株主が議決権を行使して、賛成・反対のどちらの意思表明をするかを判断するにあたって必要な範囲で課せられているものです。
株主が青島製作所とイツワ電器の経営統合の是非を問うたことについて、青島製作所はなぜ反対したのか、青島製作所の中の経営判断を回答すればよいのです。
まして、イツワ電器は上場会社です。上場会社であれば、決算・財務諸表が公開されています。
その公開されている情報の範囲をもとに、青島製作所が経営統合に反対するに至った判断のプロセスを回答するだけならいいとしても、公開されていない情報をもとに、上場会社を非難して、経営が危ないとまで言及することは、法的に問題です。
名誉毀損、信用毀損、風説の流布・・・などなど。

説明者は議長だけが指名することができる

また、ルーズヴェルト・ゲームでは、株主が専務取締役を指名して、専務取締役の回答を求めていました。
説明するのは会社の「取締役」が行うものであり、どの取締役が回答するかを指名することができるのは議長に限られます

ドラマでは、専務取締役が回答するしかないというような状況ではありました。
しかし、それでも、本来なら、議長が「専務から回答させます」などと回答者を指名してから取締役が回答すべきでありました。

同じように、株主総会を招集した株主の発言に対して、会長が回答している場面もありましたが、あれも、議長がコントロールをしなければならない場面でした。

採決の方法

青島製作所の株主総会では、専務取締役の合図を以て、株主総会を招集した株主が、採決のタイミングを催促していました。
しかし、株主総会で、いつ、どのタイミングで採決を諮るのかを決められるのは、議長だけです。
議事運営、議事進行は、議長の専権です。

したがって、もし議長が、このタイミングでは採決を諮るべきではないと考えていれば、株主が採決を促していても、他の株主に発言を促すなどをしてもよかったのです。