二重価格表示のルール。許される二重価格表示、許されない二重価格表示。

二重価格表示の目的は、お得感を出すため

小売店に限らず、商売をするにあたって、商品やサービスの価格表示は不可欠です(今、このサイトはリニューアル途中で相談料を表示してません。「時価」というわけではありません。お問い合わせ下さい)。
消費者からしてみれば、商品やサービスを購入するに当たって、気になるのは価格です。
売り手からしてみたら、真逆で考えることになります。
「この価格で、この商品やサービスが手に入るならお得でしょ。じゃあ、いつ買うの? 今でしょ(古っ)」と持っていきたい。
「なるべくお得に見せたい」という意思が、もっともわかりやすく現れるのが「価格」の表示方法です。

元々1000円のものを「1000円」と価格表示する。
あるいは、「2000円」のものを「50%引き」と並記して「1000円」と価格表示する。
これに問題がないことは、誰にでもわかります。

ただ、本来なら1000円のものを「1000円」と価格表示してしまったら、消費者にお得感を与えることはできません。
その一方で、本来なら1200円のものを「1200円」と表示したうえで取り消し線を引き「1200円 → 1000円」と価格表示する場合には、消費者には「200円安くなったのか」とお得感を与えられます。
こうした表記を「二重価格表示」といいます。

不当な二重価格表示

この二重価格表示に関して、昨年から、いくつか報道がなされています。

「楽天は傘下の楽天イーグルスが日本シリーズを制したことを受け、星野仙一監督の背番号にちなんだ77%引きなどの特別セールを実施していた。ただ一部店舗が楽天社内の審査を経ずに優勝セールと銘打って、元の価格をつり上げて77%引きしたようにみせかけていたことが判明。」(日本経済新聞2013年11月12日朝刊より)

社員18人がインターネット通販「楽天市場」の出店者である28事業者に通常価格を引き上げ、割り引きしているような不当な価格表示を提案していた」(日本経済新聞平成26年4月26日(土)朝刊より)

要するに、本来なら1000円のものを、たとえば「1500円」と引き上げて表示したうえで、「○%引き」として「1500円 → 1000円」と価格表示していたことが、不当な二重価格表示であると問題になっています。
消費者にとって、本当はお得ではないのに、お得であるように感じさせるために、価格表示に細工をした。
極端に言えば、消費者を騙したのと同じということで、不当とされているのです。

「価格表示ガイドライン」が二重価格表示のルール

許される二重価格表示、許されない二重価格表示を二分するルールとなっているのが、公正取引委員会が公表している「価格表示ガイドライン」です。
教科書的な話しをすると、二重価格表示は、大きく分けると、5つのルールで規制されています。

同一性のある商品と比較しなければならない

最近は、アウトレットモールがあちこちにできています。
アウトレットモールで売っている商品は、傷もの、汚れ物、型落ち品です。
最近は、アウトレット用商品というものも製造、販売されているようです。
この場合に、アウトレットモールで取り扱っている傷もの、汚れ物、型落ち品がお得であるかのように見せるために、デパートや路面店で販売している新品の販売価格と比較して二重価格表示をすることは、許されるでしょうか。

アウトレットモールのように、傷もの、汚れ物、型落ち品であることが消費者に明らかになっていれば、新品の販売価格と比較して価格表示をしても、許される二重価格表示と言えましょう。
この場合には、消費者もあらかじめ傷ものなどであるから安いのだと理解しているからです。

しかし、これが、あたかも新品であるかのように販売している量販店で、実は取り扱っている物が傷もの、汚れ物、型落ち品である場合は、新品の販売価格と比較して価格表示をすることは、許されない二重価格表示ということになりやすいです。
消費者が傷もの、汚れ物、型落ち品と認識していないので、量販店のほうが安くてお得だと誤解しています。この場合には、消費者を騙していることになります。なので、許されない、ということです。

要するに、違う商品と比較して二重価格表示をする場合ことは許されない、というルールです。
これが、第1のルールです。

「当店通常価格」「セール前価格」の表示には8週間ルールがある

4月、5月は「新入生・新社会人応援セール」などが行われます。これからの時期は「クールビズ応援セール」「サマーセール」なども行われます。
そうしたセールでは「当店通常価格より○%引き」「セール前価格10000円 → セール 8000円」などと表示することがあります。
この場合、「当店通常価格」「セール前価格」とは、どの価格のことを指すと思いますか。
たとえば、セール期間の2週間前だけの平均価格でいいのか、それとも1週間その価格で売った実績があればいいのか、という問題です。

ここについて、価格表示ガイドラインでは、セール開始時から遡って8週間以上前から販売されていた商品については、

  1. 直近8週間の過半を占め、
  2. 通算して2週間以上その価格が表示されていて、かつ
  3. その価格で販売されていた最終日から2週間が経過していない場合は、その価格を比較の対象にして二重価格表示できる、としています。

8週間以内にしか販売していない商品については、

  1. 販売期間中の過半を占め、
  2. 通算して2週間以上その価格が表示されていて、かつ
  3. その価格で販売されていた最終日から2週間が経過していない場合を、その価格を比較の対象にして二重価格表示できる、としています。

ちょっと、いや、かなり、わかりにくいですね・・。
いくつかパターンを例示して、もう少し噛み砕きます。

  • 8週間以上前から1200円で売り続けていて価格に変化がなかった場合は、セール時に1000円で価格表示をして、1200円に比べて200円安いと表示しても問題はないことはわかると思います。
  • 8週間以上前から1200円で売られていた。セール開始時から8週間遡ったうち3週目までは1200円で売っていた。しかし、その後の5週間は1100円で売っていた。
    この場合、セール時に1200円と比較することはできません(1200円で2週間売った実績はあります。しかし、1200円の値付けが8週間の過半を占めていない。最後に1200円で売ってから2週間以上経過している。)。しかし、1100円と比較することはできます。
  • 8週間以上前から1200円で売られていた。セール開示時から8週間遡った5週目までは1200円で売っていた。しかし、その後の3週間は1100円で売っていた。
    この場合、セール時に1200円と比較することはできません(1200円の値付けが8週間の過半を占め、2週間以上売っていた実績はあります。しかし、最後に1200円で売ってから2週間以上が経過している。)。また、1100円と比較することもできません(2週間以上売り、直近2週間売っていた実績はありますが、8週間の過半を占めていない。)。
  • 8週間以上前から1200円で売られていた。セール開始時から8週間遡ったうち、途中で3週経ったところで2週間品切れを起こした。しかし、品切れ前後の6週間(各3週間)は1200円で売っていた。
    この場合、セール時に1200円と比較することはできます(1200円の値付けが8週間の過半を占め、通算で2週間以上売っていた実績があり、最後に1200円で売ってから2週間は経過していない)。
  • 8週間以上前から1200円で売られていた。セール開始時から8週間遡ったうち、最初の2週間は1200円で売っていた。その後の5週間は1150円で売っていた。最後の1週間は1100円で売っていた。
    この場合、セール時に1200円、1100円と比較することはできません。しかし、1150円と比較することはできます(1150円の値付けが8週間の過半を占め、2週間以上売っていた実績があり、最後に1150円で売ってから2週間は経過していない)。

これが第2のルールです。

将来の価格との比較、公になっていない価格との比較

第3と第4のルールはわかりすいです。

第3のルールは、「将来、○○円にする予定。今なら、○○円なのでお得」と、根拠のない将来価格と比較して二重価格表示することは許されません。
消費税が5%から8%にアップするというような、将来価格が確実に上がる根拠がある場合には許されます。

第4のルールは、公になっていないメーカー希望小売価格との比較は許されません。
たとえば、商品のカタログやパンフレットにメーカー希望小売価格が掲載されている場合には、そのメーカー希望小売価格との比較をして二重価格表示することは許されます。

同業他社との販売価格を比較した二重価格表示

第5のルールは、同業他社の販売価格との比較という、よくあるケースです。

「地域最安値!他店平均○○円のところ、当店では○円」という表示をよく見かけます。
たとえば、「他店○○円」が実際よりも高く価格表示することは許されません。

また、商圏が異なる店舗との価格の比較も許されません。
最近のネット通販の場合には、商圏というと、楽天市場内の他店舗、Yahoo!ショッピング内の他店舗、Amazon内の他店舗との比較になるかもしれません。
ネットのショッピングモールの場合には、価格の比較も簡単にできてしまうので、「楽天内最安値」とか「楽天内割引率最大」などと表示を煽っても、あまり意味はないかもしれませんが・・。

詳細は、ここに書いた事例を参考にしながら、ぜひ、価格表示ガイドラインで、一度確認してください(ガイドラインは、ここまで噛み砕いていません)。

小売店、ネット通販で不当な価格表示と言われないための対策

さて、楽天の話しに戻します。
楽天のケースでは、楽天市場に出店している店舗にアドバイスをする立場にある社員が、通常価格を引き上げて表示するように提案していたということが、不当な二重価格表示に至った根本の原因です。提案を受け容れた出店店舗側にも問題はありますが、主たる要因は、提案した楽天側になるように思えます。

このケースを見て、他の小売店、ネット通販の企業は、何をすればいいのか。
そもそもの話しをしてしまえば、そこまでしてお得感を出さないと買ってもらえないような商品やサービスなら取扱いを止めたらどうか、と思います。
ただ、それを言ってしまうと身も蓋もないので・・。

現実的には、まず、価格表示を含め、宣伝文句などの表示についてのルールを今一度おさらいしておくべきです。
ネット上でショッピングモールを開いている企業は、出店する店舗にルールの存在を知らせ、内容を理解させることまで必要だと思います。

表示についてのルールは景品表示法という法律と、公正取引委員会・消費者庁が所管するガイドラインに細かく決められています。
このルールをルールのまま伝えても効果はありません。条文だけ読んでも法律の意味がわからないのと同じです。
こういう表示をすることは許されない、こういう表示をすることは許される・・・と、具体的な事例をベースに説明していくしかありません。

社内で難しければ、社外に依頼するのも手です。
私自身、そういうガイドブックや社内研修やってますので、ぜひ、どうぞ(宣伝)。

平成26年の公正取引委員会は、カルテル・談合の取締りが活発?

昨日、タクシー料金の値上げと独禁法の関係についての疑問を投稿しました。
そこに絡めて、独禁法の監督官庁である公正取引委員会の最近の動きについて、今日は触れてみたいと思います。

平成26年1月~4月の公正取引委員会の動き

平成26年に入ってから、公正取引委員会がカルテル・談合を取り締まり、排除措置命令、課徴金を命じるという報道が例年より多い印象を受けます。
その数の多さは、まるで、何かキャンペーンでもやっているかの如く。
実際に報道された、排除措置命令や課徴金が命じられたケースだけでも、以下のとおりです。

平成26年3月18日
自動車を輸出する船便の貨物運賃を巡る価格カルテルを理由に、海運大手など4社に対し計約227億円の課徴金納付命令と再発防止などを求める排除措置命令を発令。
※課徴金額は日本郵船が約131億円で、1社当たりの過去最高額。
※川崎汽船が約56億9千万円、ノルウェーが本社のワレニウス・ウィルヘルムセン・ロジスティックスが約34億9千万円、日産専用船(東京都)が約4億2千万円。課徴金の総額は過去2番目の規模。

平成26年2月28日
インフルエンザの予防接種の料金でのカルテルを理由に、埼玉県吉川市と松伏町の医師でつくる吉川松伏医師会(会員74人)に再発防止を求める排除措置命令を発令。

平成26年2月3日
千葉県が発注した東日本大震災の復旧工事などを巡る談合で、同県東金市や山武市などの建設業者35社のうち20社に総額約2億2300万円の課徴金納付命令を発令。

平成26年1月31日
関西電力が発注した送電線工事を巡り、関電社員が事前に予定価格を業者に伝えるなど談合を助長し、談合していた電気設備工事会社61社に総額約23億7千万円の課徴金納付命令を発令。

これらの事件以外にも、
・車や機械などのベアリング(軸受け)に使われる部品「鋼球」の価格を巡るカルテルの疑いでの立入り検査。
・北陸新幹線(長野―金沢間)の融雪設備工事の入札を巡る談合の疑いでの強制調査・捜索。
・志賀高原スキー場(長野県山ノ内町)でリフト共通券を発行する志賀高原索道協会が加盟社による独自のリフト券販売を制限していたことに対する警告。
・浄水場や下水処理場で使用する水処理用の薬剤の入札で談合を繰り返していた疑いでの立入り検査。
・取引上の強い立場を利用して納入業者に従業員を派遣させるなどしたディスカウントショップに対し、優越的地位の濫用を理由とした課徴金12億円と排除措置命令の予定。
・土木工事に使う土管や側溝などコンクリート製品の価格を巡りカルテルを結んでいた疑いでの立入り検査。
・段ボール製品の販売を巡り、東日本各地で価格カルテルを結んでいたとして、公正取引委員会がメーカー約60社に対し、課徴金130億円と排除措置命令の予定。
・・・などが報道されています。

素直に、素朴に「なんか多くないかな」と感じます。

平成20年~24年までの公正取引委員会の実績

例年がどれくらいかというと、

公取法的措置数平成24年度 公正取引委員会年次報告 より)

上の図を見ていただくと、排除措置命令が発令された数は、平成24年度が20年、平成23年度が22年、平成22年度が12件、平成21年度が26件、平成20年度が17件ということがわかります。ちなみに、年次報告には載っていませんが、平成25年に公表された案件は8件です(報道資料)。
それに対し、平成26年は、報道された上記4件を含め、平成26年4月24日現在で6件の排除措置命令と警告が発令され、1件が刑事告発され、さらに2件が排除措置命令と警告の準備に入っています(報道資料)。
このペースが続くと、過去5年間を超える、30件という大台に乗りそうなペースです。

公取課徴金額平成24年度 公正取引委員会年次報告 より)

なお、課徴金は、上記の海運カルテルだけで総額227億円に達しているので、総額では早くも平成24年度を超過しました。

公正取引委員会の動きの背景にあるもの

なぜ、平成26年は、公正取引委員会はカルテル、談合に対して、これほど積極的なのでしょうか。

もちろん、そもそも事件になるような案件が存在したというのは、当然の前提でしょう。
カルテル、談合が存在しなければ、公正取引委員会が取り締まることさえありません。

しかし、平成26年に入って、本日までに公正取引委員会が課徴金を課し、排除措置命令を発し、あるいは刑事告発した案件は、平成15年以降(志賀高原)、平成20年以後(海運)、平成21年以後(関電、千葉県)、平成23年(インフルエンザ、北陸新幹線)と、古い案件が摘発されたものです。

つまり、平成26年の直前に急遽、カルテル、談合が増えたわけではなく、公正取引委員会が過去に遡ってまでしてカルテル、談合を積極的に取り締まっていると理解した方がよさそうです。

推論1-消費税導入が公正取引委員会を活性化させた

1つの理由としては、消費税の導入があるかもしれません。
4月から消費税がアップし、それに伴い、企業間の取引で消費税を転嫁して取引額が増額することを正当な理由なしに拒否する行為を、公正取引委員会は取り締まっています。
下請法違反に対する取り締まりの延長と捉えていいと思います。
消費税転嫁拒否行為に対して、公正取引委員会は20億円を超える予算を確保し、積極的に取り組んでいます。
公正取引委員会の中で働く職員にしてみれば、隣の部署が消費税転嫁拒否行為の取締りで成果を上げていれば、それに負けじと、自分たちも成果を上げる。
そのために、カルテル、談合を積極的に処分するという方向で力が働く。
このような力学が働くことはあってもおかしくない、と思います。

推論2-事務総長が変わったことで公正取引委員会を活性化させた

もう1つの理由は、今年1月から公正取引委員会の事務総長が変わったということです。
事務総長が変わったので、カルテル、談合などに対して今まで以上に積極的に取り組むようになったということが考えられます。
事務総長が、平成26年2月19日の定例会見で、唐突に、「課徴金減免制度(リニーエンシー)」について会見したことからも、事務総長が変わったことで今まで以上にカルテル、談合摘発に力を入れるようになったというのは、あながち穿った見方ではないのかな、と思っています。

カルテル、談合に巻き込まれないための企業の対応

で、結局何が言いたいのかというと、カルテル、談合などそもそも違法行為なので「やってはいけない」ことは今さら言うまでもないけれども、カルテル、談合の場に接する機会、誘われる機会がある業界の会社は、今まで以上に慎重にしたほうがよい、ということです。

具体的には、業界同士の集まりの場で、カルテル、談合などと思われるような話題をしない。
もし、カルテル、談合とおぼしき話題が出てきたら、その場から離席する。
離席の際には、お茶をこぼしたことを理由にして立ち去るなどして、その場から離席していたことを周囲に印象づける。
離席後は、会場に戻ってこない。
・・といったことを徹底することです。

課徴金減免制度(リニーエンシー)の活用

また、もしも、カルテル、談合が行ったことがあり、それが見つかっていないだけだとしたら、ただちに「課徴金減免制度(リニーエンシー)」を利用することです。
それによって、会社に及ぶ被害を最小限度に食い止める。
課徴金減免制度を利用したからといって、それで、会社が社会的に批判を浴びることもありません。
課徴金減免制度を積極的に利用して、課徴金を免除してもらうということが、会社の危機管理・リスクマネジメントとしては、非常に重要なことを再認識する必要があります。
そのためには、従業員に、課徴金減免制度の存在を知ってもらうこと、使い方を知ってもらうこと、課徴金減免制度の利用に前向きな社内風土を作っていくことが必要があると思います。

国交省がタクシー運賃の値上げを勧告することと、品質、価格、取引条件による自由競争の保護を目的とする独占禁止法の精神との矛盾への疑問

今さらですが、日本は自由競争社会のはずです。
もちろん、自由競争社会だからといっても、企業間の競争で何をしていいという訳ではありません。
品質、価格、取引条件といった三大要素については、公平・公正なルールのもとで、企業間の競争が求められています。
これが、独占禁止法という、自由競争を確保するための法律の趣旨であり、目的である、と理解しています。

ところが、一定の分野については、品質、価格、取引条件について、国から介入が入ります。
その一つの例が、タクシー業界です。
タクシーの場合、「タクシー業務適正化特別措置法」と「道路運送法」が主な関係法令のようです。

これらの法律が何を規制しているかを簡単に言うと、タクシー業務適正化特措法はタクシー事業の品質の最低限を保護するように免許制やら何やらを。道路運送法はタクシー料金やら何やらを。しかも、よく読むと、タクシー料金の上限だけではなく、タクシー料金の下限まで定めています。

タクシーは客を乗せる、つまり、お客さんの命を預かるわけですから、タクシー業務適正化特措法によって、品質を最低限保護することは当然だと思います。
また、道路運送法によって料金の上限を規制することは、どこまでも値上げしかねないから規制するという趣旨で理解できます。
他方で、道路運送法によってタクシー料金の下限まで規制することは、存在意義がよくわかりません。

なぜ、タクシー運賃について書いているかというと、タクシー運賃が高いから、今日の新聞を見ていて、頭が混乱しているからです。今日の新聞に次のような報道がありました。

「国土交通省がタクシー業界に値上げするよう圧力をかけている。全国5地区で国が定めた下限より安い運賃で営業する27の事業者に値上げを迫る勧告書を22日に手渡した。規制強化に多くの事業者は反発。下限を下回る「違法状態」の運賃で営業を続けると公言する事業者もある。」

(日本経済新聞平成26年4月23日(水)朝刊より)

タクシー業者が足並み揃えてタクシー料金を値上げしようとしている場合に、国交省が「高すぎるから値上げするな」と制するなら、意味はわかります。
初めに「タクシー運賃、官民攻防」との見出しを見たときには、独禁法が頭にあったので、そのように理解しました。

しかし、よく読むと、「値上げしろ」と言っているのは国交省。それに「値上げしない」と抗っているのはタクシー業界。
見出しを見たときと、まったく逆の構図ができあがっているそうです。

タクシー業界は、必要以上の値上げをしないで、企業間で価格競争をしようとしている。
しかし、国交省は、価格競争はさせまい、とする。
なんで?
このReviewを書きながらも、未だによく理解できません。

国交省が平成21年4月から7月にかけて行った「タクシー運賃制度研究会」の資料の中に何かヒントがあるかと思いましたが・・・タクシー料金の下限が「適正な原価」に「適正な利潤」を加えたものになっているかが検討された、ということしかわかりませんでした。
「適正な原価」というのは、ドライバーの人件費、ガソリン等燃料費、車輌償却費、車輌修繕費のことだそうです。

はて?

他の業界も、原価があって売値があって、そこから営業利益を出す、という構図は同じはずです。
売値を下げて品質が下がるのであれば、品質を規制すればいいだけで、売値の下限を規制するというのは、筋違いなはずです。
企業努力で値下げして、自分たちの会社の体力の限界まで値下げする。
一時期の牛丼価格戦争、ハンバーガー価格戦争などはその典型です。
他方で、高くてもお客さんが来るという自信があれば値上げする。
これが自由競争社会の本来の姿だと思います。

もちろん、他の企業を市場から撤退させ、その後の市場の独占を目論見、力尽きる限りまで値下げするというのは、自由競争の方法として「やりすぎ」とみなして、「不当廉売」として規制されるべきです。
他の業界で、業界各社が横並びで「適正な原価に適正な利潤を加えた価格を最低料金にしよう」などとすれば、価格カルテルです。課徴金の対象です。
実際に、今日の新聞では、コンクリート製品で価格の値上げ端を決めようとしたカルテルがあったという疑いで、公正取引委員会が立入をした例も報道されています。

「土木工事に使う土管や側溝などコンクリート製品の価格を巡りカルテルを結んでいた疑いが強まったなどとして、公正取引委員会は23日、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで、「網走管内コンクリート製品協同組合」(北海道北見市)に加盟する企業など10社前後を立ち入り検査した。」
「各社は少なくとも1~2年前から、協同組合の会合の場で、建設業者向けのコンクリート製品価格の値上げ幅を決めるなどしていた疑い。最大で7割程度価格を引き上げた製品もあったという。」

(日本経済新聞平成26年4月23日(水)夕刊より)

しかし、なぜ、タクシー業界だけが、国交省主導で、「適正な原価」に「適正な利潤」を加えた、タクシー料金の下限を定めないといけないのでしょう。
まったく、理解ができません。
国交省主導で「適正な原価」に「適正な利潤」を加えたタクシー料金の下限を決めたことで、誰かが利するということかもしれません。

もちろん、利用者の立場からすれば、流しのタクシーを適当に拾ってみたら基本料金が高いという事態は嫌だな、というのはありますが・・。

【2014年5月31日追記】

同じような発想で、タクシー会社は、国が定めたタクシー運賃よりも安い運賃で営業していることについて、国から運賃変更命令を出さないように、との仮処分を申立て、通常訴訟も提起していたようです。
2014年5月23日に、大阪地裁が仮処分を認める決定を出したそうです(2014年5月24日日本経済新聞朝刊)。