東洋ゴム工業の性能偽装問題、何が問題か

性能偽装問題の概要

東洋ゴム工業が3度目の性能偽装をしていたことが2015年10月14日に明らかになりました。
今回は、2005年以降、子会社である東洋ゴム化工品が製造した鉄道車両や船舶の揺れを緩和するために使用される防振ゴムを、東洋ゴム工業は、材料試験を行わないまま、あるいは強度などの性能について虚偽のデータで出荷していたことというものです。
中には、強度の性能が10%に満たない製品もあったと報道されています。

詳しい経緯は、こちら(pdfファイルです)

3度の性能偽装は、東洋ゴム製品の安全性についての信用を低下させる

これで、2007年に耐震パネル耐火性能偽装問題、3月に大臣認定不適合の免震ゴムを出荷していた問題に続く3度目の性能偽装です。
今回の不正発覚は、以下のとおり3月の免震ゴム問題を受け、国内で緊急品質監査を実施して安全宣言をした直後に発覚したものです。

「3月の免震ゴム問題を受け、東洋ゴムは5~7月に国内外全23拠点で緊急品質監査を実施。8月10日に防振ゴムを含む製品で「正規品が出荷されていることを確認した」と対外的に“安全宣言”をしていた。」(日本経済新聞2015年10月15日付朝刊)

それだけに、3月の免震ゴムをきっかけとして行われた緊急品質監査が十分なものであったのか、そもそも過去の2度の性能偽装を会社として真摯に受けとめていたのか、疑問を抱かずにはいられません。

まして、問題が発生したのは、耐震パネルの耐火性能、免震ゴムの性能、鉄道車両や船舶に使用される防振ゴムの性能です。
いずれの製品にも共通しているのは、エンドユーザーの生命や身体に危害を生じさせる可能性があるということです。

そうなると、「東洋ゴム工業はエンドユーザーの生命・身体の安全を念頭に置いていないのではないか」という素朴な不信感も生まれかねません。
例えば、東洋ゴム工業の製品のうち消費者にとって身近な自動車用タイヤについても「安全性は大丈夫なのか」と信用を失い、商品を購入しなくなる消費者が現われる可能性も否定できません。

謝罪会見は本質に答えていない

今回の事件発覚後、東洋ゴム工業は、法令遵守を担当する常務執行役員と防振ゴム事業を担当する常務執行役員が記者会見を行いました。
ここも本当であれば、免震ゴム問題をきっかけに新体制を担うことになる、社長就任予定の常務執行役員が出席すべきです。
そのうえで、社長就任に向けての覚悟を語るべきでしょう。

また、記者会見で発せられた内容のうち、謝罪に関する言葉については、次のように報じられています。

「皆様に多大な心配と迷惑をかけ、誠に申し訳ありません」
「免震ゴム問題で再発防止を誓う中、許されざる行為であり、会社として重く受け止める」
「技術者の倫理意識が欠如している。再生に向け真剣に考えたい」 (日本経済新聞2015年10月15日付朝刊)

これはこれで、謝罪するために必要な内容を含んでいます。
ただ、今回は3度目の不正、しかも安全宣言直後に性能に関する不正が発覚した、という会見です。
そうだとすれば、「エンドユーザーの生命・身体の安全性を脅かす事態である」という、製品の安全性に向き合う会社の姿勢を認識した言葉が欲しかったところです。

従業員コンプライアンス研修が不正発覚に役だった

ただ、東洋ゴム工業が信用を取り戻すための光明がないわけではありません。
今回の防振ゴムの性能偽装が発覚したきっかけが、従業員に対するコンプライアンス研修の成果と言えるからです。

東洋ゴム工業は3月の免震ゴム問題をきっかけに、8月18日、19日に従業員に対してコンプライアンス研修を行った結果、翌8月20日に従業員から今回の防振ゴムの性能偽装について内部通報があり、不正が発覚したそうです。

研修の翌日に内部通報があるということは、滅多にあるものではありません。
従業員は、内部通報することで自分の身がばれることへの不安、通報によって会社に迷惑がかかるのではないかという不安、通報した結果として不利益に取り扱われるのではないかという不安を抱えているからです。
ところが、今回は、その不安を乗り越えて、翌日に内部通報する従業員が現われた。

会社のことを考え、エンドユーザーの生命や身体の安全を考える従業員がいるという点では、会社が信用を取り戻す可能性は十分にあると思います。

危機管理広報の遅さ

東洋ゴム工業の過去の2度の不正でも、今回の防振ゴムの性能偽装でも指摘されているのが、広報の遅さです。
会社が不祥事を起こした際の危機管理広報のタイミングの鉄則は「できる限り即日」です。

3月の免震ゴム問題は、会社が問題を認識してから3月に公表するまで1年半を要したことが批判の対象とされました。
その後、当時の会長、社長を含む取締役5人全員が責任を取って辞任しました。

今回の防振ゴムの性能偽装については、8月20日に内部通報がありました。
もちろん、内部通報はすべて正しいものではないので、ある程度は、社内調査を行うことは必要です。
それにしても、内部通報があってから公表まで2か月弱を要しています。

また、2015年10月14日に公表したにもかかわらず、東洋ゴム工業のウェブサイトのトップページは、10月16日時点で、3月の免震ゴム問題についての謝罪が掲載されているのみです。

TOYO TIRES企業サイト|東洋ゴム工業株式会社

10月14日に3度目の性能不正について公表したのであれば、ただちに、トップページを防振ゴムの性能偽装に関するものに差し替えるべきです。
こうした事実も、社内で横の連携がとれていないのではないかと、組織体制についての信用性を低下させる要素の一つになってしまいます。