経産省が「営業秘密管理指針(全部改訂版)」を発表しました

経産省が、平成27年1月28日に「営業秘密管理指針(全部改訂版)」を発表しました。

会社の企業秘密が盗まれたような場合に、会社がその企業秘密を盗んだ相手を訴えよう、あるいは相手に使うなと差止めたいと思っても、常に訴えが認められるわけではありません。
会社が法的に保護されるのは、盗まれたりした企業秘密が、不正競争防止法の「営業秘密」に該当する場合に限られます。

「営業秘密」として法的に保護されるためには、秘密管理性、非公知性、有用性が必要です。
秘密管理性、つまり、会社が秘密に管理していたと認められるためのハードルが、過去の裁判例では非常に高く、そのため、会社が「企業秘密なので保護したい」と考えていても、裁判所が「秘密管理性がないので、『営業秘密』には該当しない。法的には保護できない」という結論になることが多々ありました。

では、会社が秘密に管理していたといえるためには、どうしたらいいか?
会社がどの程度、厳重に管理していれば、秘密に管理していたといえるのか?

その一つの目安になるものを、経産省が「営業秘密管理指針(全部改訂版)」として発表した、ということです。

全部で17頁なので、簡単に読めると思います。ぜひ、ご一読を。

異物混入を公表するかどうかの判断基準

外食産業・食品業界の異物混入事件報道

2015年に入ってから、外食産業・食品業界での異物混入事件が相次いで報道されています。
半年以上前に食品の中に異物が混入していた事実があったことが、今になって報道されているケースもあります。
こうした報道を見ていると、「外食産業・食品会社は異物混入している事故を起こしたときには、全部、公表せよ」的な極端な意見も見られます。

異物混入だからといって、全部を公表する必要はない

でも、「食品に異物が混入している事故が発生したときに、全部の案件を公表しなければならないのか」と質問されたら、私の答えは「全部を公表する必要はありません」です。
その理由を説明しましょう。

現実的な問題として、食品への異物混入は常時発生しています。
昔ながらのラーメンのスープに店主の指が入っていた、レストランで出された料理に髪の毛が入っていた。
これだって、立派な異物混入事件です。

これらの異物混入でも公表するか?と言えば、公表するわけがない、というのが普通の考え方だと思うのです。
「今日、当店ではラーメンのスープに店主の指が入るという事故が起きました」とか、公表して誰のためになるの?という話です。

実は、この「公表して誰のためになるの?」というのが、異物混入事件の公表・非公表を判断するにあたっての元になる考え方なのです。

食品の安全性・安心の確保に繋がるかどうか

外食産業・食品業界が調理して提供する食品は、消費者である人の口に入るものです。
食品を口にした消費者が、身体の安全を害する、極端な話では生命を落とす、後遺症が残る、また食に対して安心できない。
そんな事態を引き起こすような外食産業・食品会社であれば、会社としての存在価値がありません。

異物が混入しているというのは、身体の安全は害さないかもしれないけれど、食に対する消費者の不安感を招き、消費者が安心して口にできないという事態を招きかねません。
会社としての存在価値が疑問視される一要素です。

とはいえ、異物がたまたま1つの食品に入っていたという場合は、その食品を手に取った消費者、口にしてしまった消費者一人を相手にお詫び以上の対応をすれば済む話しです。

他方で、異物が1つの食品だけではなく、他の食品にも入っている可能性がある場合には、異物を発見した消費者、異物を口にしてしまった消費者以外にも、同じような問題が生じる可能性があります。
その場合には、会社は、消費者一人ではなく、食品を手にする可能性がある購買予定者=世の中全体に、「異物が混入していた。他にも混入している可能性がある」と知らしめる必要があります。
その場合であっても、公表せずに黙っている会社は、存在価値がないに等しい。

実は、この説明の中に、公表するか公表しないかを判断する基準がすべて含まれています。

拡大可能性があるか

1つめの基準は「拡大可能性」です。
異物が混入している食品が1つに限られず、他にもあるか否か、ということです。

たとえば、食品工場の製造ラインで、ラインに従事する社員が農薬が希釈して混入していた。
これは、そのラインで製造された食品すべてに関わる可能性があります。
その食品は、広い販路をたどって消費者の口に届く可能性があります。

食品会社としては、不特定多数の消費者の口に届く可能性がある商品に農薬が入っていることがわかれば、不特定多数の消費者=世の中に対して、「この製造ラインで作られた食品には農薬が入っている可能性があって危険なので口にしないで下さい」とアナウンスして知らしめる必要があります。

言われて見れば「当たり前」と思われるかもしれませんが、この「当たり前」の判断基準を持っていない会社が多いのが事実です。

異物混入でも、たとえば、ケーキに青カビが入っているというケースの場合には、同じ店舗・工場で、同じ時期に製造された他のケーキにも青カビが入っている可能性があるわけなので、公表する必要は出てきます。
虫が入っているというケースの場合には、同じラインで製造された他の食品に、虫の身体(物体)が入っていることはないけれど、虫のエキスが混入している可能性があるわけなので、公表する必要はありえます。
もちろん、虫が入っていれば全部公表ということではなく、どんな食品に、どんな形で虫が混入していたかという細かな事情を判断して、公表・非公表を判断する必要があります。

安全・安心に与える影響が重大か

もう1つの基準は「安全・安心に与える影響が重大か」です。
異物が混入している食品が1つであっても、それによって生命を落とす、身体に障害が残る、食中毒を起こす。
食品会社求められる、安全・安心を守るという基礎的な部分に問題があれば、それは公表する必要が出てきます。

たとえば、製品を口にした消費者が食中毒になった。
これは、食品会社が作った食品に安全性がないということです。
食品会社としての存在意義そのものに関わります。
安全ではない食品を提供するような会社は、食品を作らなくてもいい、むしろ作らないで欲しいからです。

だとすれば、仮に「拡大可能性」がないとしても、「安全・安心に重大な影響を与える」場合には、公表すべきです。

最近の新しい基準=SNS上での盛り上がり

2014年、2015年の異物混入事件を見ていると、報道で大きく取り扱われる以上に、SNSで話題になって、異物混入の事実が情報として拡散しているケースが見られます。
食品会社が「拡大可能性がない」「安全・安心に与える影響が重大ではない」と判断して公表しなかったケースであったとしても、SNSで情報が拡散している状況をそのまま放置しておいては、会社の評判が下がります。レピュテーション・リスクの最たるものです。

中には、事実と間違った情報が拡散してしまう場合もあります。また、意図的なねつ造が情報として拡散してしまう場合もあります。
これは、会社が対応しなければ、レピュテーション・リスクが拡がるだけです。

そこで、SNSで情報が拡散し盛り上がっているようなケースの場合には、会社は情報を公表すべきです。
ただし、会社が情報を公表することでSNSにネタを提供する、炎上のための油を注ぐことになってはいけません。

そのためには、ネットでは同じ土俵に乗らずに公表する方法を考えるべきです。
具体的には、会社のWeb上に、会社が認識している事実、原因や会社の見解を載せるということで、十分だと思います。

忘れてはいけないのは、「安全・安心」へのお詫び

食品の安全・安心を損なうような事態を招いた場合、多くの会社は、お詫びを公表します。
または、記者会見などでお詫びの言葉を述べます。

多くは、「このような事態を招き、申し訳ございません」という文言になっています。
しかし、お詫びをするのは、事態を招いたからではありません。
事態を招き、食の安全・安心を損ねて迷惑をかけた、あるいは不安に陥らせてしまったからお詫びをするのです。

だとすれば、単に「事態を招き、申し訳ございません」ではなく、「食品の安全を損ねご迷惑をおかけし、また当社製品に対する不安を招き、申し訳ございません」と謝罪するのが筋です。

ここができているか否かも、会社が本当に事件の本質を理解して異物混入事件に対応しているかを見定めるポイントです。

企業危機管理の転換期がやってきた?

企業危機管理の転換期が到来しているのではないか?という疑問

昨日の「2015年、新春のごあいさつ」の記事で、企業は、TwitterなどのSNSによって社会・消費者の不安・不満が増幅することを視野に入れて積極的な情報公開をすることが肝要であることについて触れました。
今日は、昨日の記事を書くことになった考え方の根っこの部分について書きます。

それは、昔ながらの危機管理の方法論だけでは通用しない時代になってきたのではないか? ということです。

前々からニュースを見ていて、昔ながらの危機管理の方法としては間違っていないはずなのに、なぜうまくいかないのだろう、と疑問を感じることがありました。
その疑問が、2014年年末に発生したペヤング異物混入事件、2015年に入ってから発生しているマクドナルド異物混入事件、不二家ケーキかび事件を見ていて、ほぼ確信に変わりました。

危機管理の王道的手法だけでは通用しなくなっているケースがある

昔ながらの危機管理の方法といえば、例えば、反社会的勢力や不当なクレーマーからの要求には毅然と対応する、社長を出せと言われても応じてはいけない(担当者が責任者である)などが有名です。
もちろん、これらの方法は、今でも間違っていません。
基本的には、この王道パターンで対応すべき、と考えています。

しかし、今は情報社会です。
「危機管理対応」「クレーマー対応」「反社会的勢力対応」などのマニュアルは、インターネット上で簡単に見つけることができます。
そのため、会社に攻め込む反社会的勢力や不当なクレーマーはもちろんのこと、まっとうなお客さんも、クレームを言う前に、会社がどう回答してくるかを調べ、情報として知っています。
そうなると、会社が昔ながらの危機管理の方法で対応しても、会社にクレームを付ける側は、その一つ先まで考えてクレームを付けてきます。
将棋に例えれば、先の先まで読みながらクレームを付けている、ということです。

また、昨日書いたように、TwitterなどのSNSが利用しやすくなったので、会社にクレームを付けるのと同時並行して、写真をTwitterやInstagramにアップして、インターネットを通じて世の中に情報を知らしめて戦うという人たちも増えています。
そのため、会社は、クレームを付けてきた相手=1個人だけを相手に危機管理の方法をして、クレームを言い出した人を納得させること、あるいは不当な要求を黙らせることに成功しても、インターネットを通じて情報を知って騒いでいる社会・消費者の声を抑えることができなければ危機管理の手法としては片手落ちということになっています。

ブログや2ちゃんねるなどの掲示板全盛期の頃と、SNS全盛期の今では、企業にとってのリスクは桁違い

SNSが登場する以前のブログや2ちゃんねるなどの掲示板が全盛の2000年代は、クレームを付けてきた相手が「ネットに書くぞ」と言っていても、企業側は「書いて欲しくはありませんが、止めることはできないので、書かれても仕方がありません」で対応することでも十分な対応でした。
これは、例え、ブログや2ちゃんねるに不平・不満を書かれても、2ちゃんねるやブログの場合には自分から情報を見に行こうとしなければ、投稿された内容を目にすることはありませんでした。
よほど盛り上がらない限り、投稿された内容が多くの人の目に触れることはなかったからです。
わかりやすく言えば、企業にとってはリスクがそれほど大きくなかったからです。

しかし、スマートフォンの普及率が高く、Twitter、Instagram、FacebookなどのSNSにが全盛期を迎えている2010年代の今は、クレームを言っている個人が簡単にスマートフォンで写真を撮り、それをSNSにアップし、かつ、SNSを通じてリツイートやシェアといった形で情報が拡散することが容易になりました。

情報の拡散が容易ということはどういうことかというと・・・・

SNSの利用者は、自らが積極的に情報をとりに行こうとせず、情報を受け身で待っているだけでも、自分が利用しているSNSのタイムライン、フィードに情報が流れてくる。
さらに、情報を流す人は一人とは限らない。
自分がTwitterでフォローしている人の中の複数、Facebookの友達になっている人の中の複数が情報を流すかもしれない。
SNS利用者は、受け身でも、企業の不祥事情報、例えば、食品の異物混入の情報を見逃すことなく、受けとることができる。
しかも、その受けとった情報を、リツイートやシェアの形で、バケツリレーの如く、自分のフォロワーに容易に知らせることができる。

こうした手順で情報がどんどん拡散していくのです。
この結果、不安や不満を持つ社会・消費者が声を出すようになるので、企業はそこにも対応しなければならない。
つまり、SNSの存在が、企業が危機管理対応をしていく中で、リスクの要素として大きなものになっているのです。

危機管理の王道的手法に、プラスアルファが必要になっている

企業は、今までの王道的な危機管理の方法論をリニューアルしていく必要があります。

「王道的な危機管理の対応だと、次は相手はこう出てくる。これにはどう対応したらいいか」
「クレームを付けてきた相手に対応するだけではなく、社会・消費者の声を抑えるためにはどうしたらいいか」

ここまで念頭に置く必要において対処しなければならないのです。

前者は、シミュレーションをどれだけできるか、ということでもあります。
従来のマニュアルをベースに、もう一歩先、二歩先まで考える。
頭を使えばできるはずです。

後者は、危機管理広報の体制を整え、何を広報していくかを考える、ということです。

詳細は、また別の機会に説明したいと思います。

2015年、新春のごあいさつ

ごあいさつ

あけましておめでとうございます。
既に2015年の業務も開始し、早4日目を迎えようとしています。
4日間だけでも、訴状、準備書面、内容証明の起案のほか、個別の法律相談などが相次いで、自分の意思にかかわらず、正月ぼけから抜け出さざるを得ない状況です。
ありがたいことです。

2014年は「戒告」処分からのリカバリーに努めた1年

昨年=2014年の自分の業務内容を振り返りますと、2013年に弁護士会から「戒告」処分を受けたこともあり、そこからのリカバリーに必至に取り組んだ1年であったように思います。

戒告の内容を知らない方のためにポイントだけを大雑把に簡略化してご説明しますと、次のような内容です。
訴訟の相手方の戸籍を取得したところ、そこまでする必要性があったか否かが問題となりました。
私は必要と考え、弁護士会は不要と考え、弁護士会と意見が相容れなかったことからの「戒告」というものでした。

さりとて、いかなる理由があれども「戒告」というレッテルがついてしまったことは事実です。
企業に対してコンプライアンスや危機管理について助言をする私の立場からすれば、業務に支障が生じたことは容易に想定できました。
私が好きな言葉である「疾風勁草」の場面でもありました。

それまでお付き合いのあったお客さまに、すべてを書面で説明し、必要があれば口頭で補足説明したところ、多くのお客さまが「今後もよろしく」「信じているから大丈夫」と支援してくださりました。
おかげで、業務への支障を実感する場面は少なく1年間を乗り切ることができました。新規のお客さまも増えました。
もちろん、潜在顧客の中には新規取引を避けた企業もあることと想定できます。ただ、これは目に見えるものではないので、実際にはどれくらいの支障が生じたかはわかりません。

2015年は地固め・基本見直しの年に。

何とか2014年を乗り切ったこともあり、今年2015年は、再度の地固めの年、基本の見直しの年にしたいと考えています。

2014年末のペヤング異物混入事件、2015年に入ってまだ1週間ですが、マクドナルド社の一連の異物混入事件、新宿のぼったくり居酒屋事件を筆頭に、従来の危機管理対応の方法のままでは、危機管理対応がうまくいかない案件が連続しています。
鍵になっているのは、TwitterをはじめとするSNSの存在です。

2015年は「危機管理広報」の重要性が増す

従来は、企業対一個人の危機管理対応、あるいは企業対マスコミというフィルターを通した社会・消費者の声という危機管理対応を想定した対応策が講じていれば、危機管理対応はうまく行きました。

しかし、ペヤング異物混入事件、マクドナルド社の一連の異物混入事件、新宿ぼったくり居酒屋事件を見ると、SNSにより、社会・消費者の声が増幅しているように感じます。
かつてのように「マスコミで大きく取り扱われないようにするためにはどうしたらいいか」だけを視野に入れて危機管理対応をしても失敗することは必至です。
マスコミが取りあげなくても、SNSの発達により、個人レベルで情報が伝達していくからです。
SNSで情報が伝達し、ネット上に情報があふれれば、結果的に、マスコミがその情報を追いかけてニュースとして取りあげます。

そうなると、企業は、SNSを利用する社会・消費者への情報発信に力を入れていかなければなりません。
要するに、「危機管理広報」が今まで以上に重要であるということです。

積極的に情報発信をして、社会・消費者の不安や不満を払拭する。もっと言えば、安心感を与え、信頼を取り戻す。
そうなれば、SNSを通じて社会・消費者に拡がるのは、不安や不満ではなく、安心感・信頼です。
「開示義務があるから情報を発信する」という消極的な姿勢では、これからは乗り切れません。
企業は、情報発信を危機管理のための当然行うべき方法であると捉えるように、考え方を改める必要があります。

この1年間は、「危機管理広報」としての情報発信の仕方・内容を、今まで以上に分析・勉強していこうと考えています。