会社法改正による、取締役の子会社監督義務の拡大

2014年6月に成立した改正会社法は、取締役・取締役会の業務適正確保体制(いわゆる内部統制システム)の設置義務の範囲を拡大しました。

改正会社法では、自社の業務の適正を確保するための体制を構築するだけではなく、「子会社からなる企業集団」をも対象にして業務の適性を確保するための体制を構築することを取締役会に法的に義務づけたのです。

本来なら、親会社は、子会社にとって株主という存在です。
しかし、ビジネスの現場に即して言えば、「子会社からなる企業集団」の業務を管理監督していることが多いのも事実です。

例えば、

  • 親会社から子会社に役員を派遣して、子会社の業務内容を監督する
  • 子会社での重要な業務については、親会社の取締役会の決裁を得るか、親会社の取締役会に報告する
  • 極端な例では、子会社の実態が親会社の一事業部にすぎない

などがあります。

こうした背景を元に、「親会社は子会社の株主」という形式論に留めず、親会社の取締役・取締役会は子会社からなる企業集団の業務の適正を確保する体制を構築しなければならないことまでを法的に義務づけたのです。

親会社の取締役・取締役会は、子会社の業務が適正に行われているかを監督しなければならないという監督義務の対象が拡大したとも理解することができます。

「イオン監査役アカデミー」の位置づけ

他方で、監査役には、会社法が改正される前から子会社調査権がありました。
子会社に不正・違法行為がないかどうかを、親会社の監査役が調査する権限があるということです。

この改正会社法での取締役・取締役会の子会社に対する監督義務が拡大したことと、従来からの監査役の子会社に対する調査権の両方を踏まえた行動をとる企業も現れてきました。

「イオンは監査役候補者を社内で育成する機関「イオン監査役アカデミー」を設置する。アカデミーを修了した幹部人材を海外を含め260社以上ある子会社の監査役に順次配置する。グループ各社の不祥事や不正会計の芽を摘み、企業統治の強化につなげる。」(2014年9月13日付け、日本経済新聞朝刊より)

報道されている以上のことはわかりません。

ただ、この報道を見る限り、親会社の取締役・取締役会は自らが子会社を監督するだけではなく、自ら子会社を監督できる人材を育成し、そうして育成した監査役候補者を子会社の監査役として選任することによって、自らの子会社監督の補助にする、あるいは子会社の監査役として取締役・取締役会の意を汲んでもらい、目の届きにくいところを取締役・取締役会に変わって十分に監督してもらうといったことを狙っているのではないかと、推測できます。

こうした取り組みを行っている会社は聞いたことがないので、親会社による子会社監督のおもしろい試みとして、今後の動向が気になります。