工場事故と地域住民

工場では事故は不可避です。
爆発事故、土壌汚染、騒音問題などが頻発します。

こうした事故が発生したときに、企業は危機管理として事故対応を行います。
その時に忘れてはならない存在が「地域住民」です。

企業の工場がその場所で操業することが許されるのは、地域住民に受け容れられているからです。
その地域住民の平穏な生活や生命・身体に不安を生じさせる事故を発生させた場合には、地域住民に迷惑を掛けた、不安を与えたということを肝に銘じて、地域住民に理解を求める行動を取らなければなりません。

これは「企業の社会的責任」と言えます。

新日鐵住金名古屋製鉄所での爆発事故と、地域住民への配慮

9月3日に新日鐵住金名古屋製鉄所で爆発事故が発生しました。
報道によると、2014年で5回目の事故だそうです。

「3日午後0時45分ごろ、愛知県東海市東海町5の新日鉄住金名古屋製鉄所から「コークス炉付近で爆発があった」と119番通報があった。愛知県警東海署や同製鉄所によると、15人がけがをして病院に搬送され、うち5人が気道熱傷などで重傷という。」

「名古屋製鉄所では今年1月以降、黒煙が発生する事故が計4回発生。新日鉄住金は8月、原因究明や改善策の検討のため、社内に事故対策委員会などを設けたばかりだった。」(2014年9月4日、日本経済新聞朝刊より)

新日鐵住金は事故対策委員会を設けて原因究明や改善策を検討しようとしていたところなので、内部的には十分な対策を行っていたと言えます。

しかし、その一方で、これまでの4度の事故での地域住民への配慮が不十分だったのではないかとも思えます。
住民からの不満の声が出ているからです。

「新日鉄住金名古屋製鉄所(愛知県東海市)で3日発生し、15人が負傷した爆発事故は、同製鉄所で今年5回目の黒煙発生だ。「またか」「いいかげんにしてほしい」。住民らは不安や不満を募らせた。」(2014年9月4日、日本経済新聞朝刊より)

新日鐵住金が地域住民を全く配慮していなかったのか?と言うと、そういうわけではないようです。
少なくとも、記者会見での謝罪コメントを見る限り、地域住民には配慮しています。

「新日鉄住金名古屋製鉄所(愛知県東海市)の爆発で15人が負傷した事故で、新日鉄住金の酒本義嗣・名古屋製鉄所長らが3日午後、記者会見を開き、「地域、社会のみなさまに大変なご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と陳謝した。」(2014年9月3日、日本経済新聞電子版より)

そうであるにもかかわらず、地域住民から不安や不満が出るのはなぜか?ということです。

もちろん、1年で5回目の事故が原因であることも否定できません。

ただ、それ以上に、これまでの4回の事故で地域住民の方の不安や不満を十分に吸い上げられていなかったのかもしれないなとも思えます。

たとえば、住民説明会を行っていなかった、住民説明会を行ったけれど地域住民の方たちが理解できるほど噛み砕いていなかった(説明の内容が難しかった)、住民説明会への参加率が低かったので参加していない住民も多くいたなどが考えられます。

住民説明会を行う際で、もっとも大事なポイント

そこで、ここでは、もし企業が工場での爆発事故などを起こしてしまったときに、企業は住民説明会を行うべきか、住民説明会を行うときに、どういった点に配慮をすべきかについて解説したいと思います。

住民説明会を行わなければ、地域住民への配慮を欠く

仮に住民説明会を行わないのであれば、その姿勢そのものが、地域住民への配慮が欠けていたという評価になりましょう。
事故を発生させ、地域住民の方に迷惑を掛けた、不安・不満を抱かせたという意識があれば、地域住民の方に説明するのは筋だからです。
法的責任云々ではありません。
企業に地域社会と共存する意思があるかどうかという問題です。

実際に、ある会社では、住民説明会を行うだけでなく、地域住民のお宅に1軒1軒訪問し説明に上がったこともあります。そこまで行うのかどうか。
新日鐵住金の場合、報道からは明らかではないので、過去4回の事故のときにどのような行動をとったのかは気になります。

住民説明会の目的と、地域住民への謝罪

だからといって、住民説明会を行えばそれで足りる、というわけではありません。
形だけの住民説明会を行っても意味はありません。

住民説明会の目的は、企業と地域住民との共存のために、地域住民の不安、不満を解消することです。
そうだとすれば、住民説明会では、地域住民が事故で抱いた不安や不満に正面から答える必要があります。

例えば、事故によって消防車などが出動し、地域住民の平穏な生活を破ってしまった。
まず、そこに謝罪が必要です。

住民説明会では、わかりやすさを第一に

また、爆発事故となれば、原発の事故の例を見るまでもなく、地域住民は工場で何を扱っていたのか、それによって地域住民の生命、身体に影響があるような物質などが浮遊しないか、もっとわかりやすく言えば、爆発事故によって身体に害は生じないか、今までどおりの普通の生活をそのまま送っていて大丈夫なのか、を心配します。

そうした地域住民の立場に立って、企業は爆発事故の内容を説明していかなければなりません。

地域住民の立場に立つということは、わかりやすさ、ということに繋がります。

  • 専門用語を使用しない
  • 図などを使って目で見てわかるようにする
  • これから、どのような害が可能性があるか

などを、噛み砕いて説明する必要があるのです。

レベルは、小学6年生くらいが理解できる程度です。
小学6年生をレベルに設定するのは、そのレベルまで落とし込めば、住民説明会に出席している人がほぼ等しく十分な理解ができるからです。

今回の新日鐵住金の例でいえば、「黒煙があがった」ということです。
そうであれば、工場で扱っていたのは何か、黒煙に含まれている物質は何か、その物質や煙を吸い込んで身体に害はないか、どれくらいを体内に取り込むと健康被害が生じるかなどを説明する必要があります。

どれくらいというのも専門単位で説明するのではなく、成人の大人が1日2時間黒煙の中で煙りを吸い続けたら、何日間で何人に1人の割合で呼吸困難になる可能性が出てくるとか、何日間で肺がんになる可能性がどの程度増加するなどという具体的な説明です。

会社の立場で考えて住民説明会を行おうとすると、どうしても地域住民のフラストレーションをぬぐいきれないままになってしまう可能性があります。
説明内容を少し工夫するだけで、同じ住民説会を行うにしても地域住民の納得度合いが変わってくるので、ぜひ、わかりやすさに挑戦して欲しいと思います。