社外取締役の増加傾向

9月2日の日本経済新聞が「社外取締役『複数』が8割」と報じていました。

「上場企業で複数の社外取締役を導入する会社が増えている。主要100社を調べたところ、社外取締役を2人以上置く企業は85社と8割を超え、5年前の57社に比べ1.5倍に増えた。」

「東京証券取引所の1部上場企業の中で、社外取締役を2人以上置く企業は全体の34%だったが、主要100社に限れば8割超が複数の社外取締役を置いていることがわかった。取締役全体の半分以上を社外で占める企業も12社あった。」(2014年9月2日付け日本経済新聞朝刊)

社外取締役が増えて、社外の声を取り入れる、経営に客観性を取り入れるということは、非常に意味があると思います。
この点については、別のエントリー(社外取締役の存在・役割は会社の業績にとって意味があるのか)で書いたことがあります。

社外取締役の人材不足は本当か?

「適正な人材が少ない」との声

その一方で、「社外取締役の人材不足」ということも報じられていました。

「社外取締役の導入が広がることで、1人が複数企業の社外取締役を兼務するケースも増えている。主要100社の社外取締役300人のうち、37人が2社以上を兼務し、5年前の18人から倍増した。」

「中央省庁の官僚出身者が社外取締役になるケースも増えている。主要100社のうち、事務次官経験者らが48人と5年前の3倍近くになった。財務省と経済産業省、外務省が多数を占める。

背景にあるのは人材不足だ。大手金融機関幹部は「適性な人材が少ない」と訴える。経団連幹部も「地方に本社を置く企業は1人でも人選に苦労している」と話す。このため社外取締役として実績がある学識経験者や官僚出身者に依頼が集中しているようだ。」(2014年9月2日付け日本経済新聞朝刊)

「適正な人材が少ない」「人選に苦労」そうした背景を理由に、「学識経験者や官僚出身者に依頼が集中」とのことだそうです。

本当に人材不足なの?

ただ、本当に人材不足なの?という疑問は感じます。
さすがに、主要100社のうち、37人が2社以上の社外取締役を兼務し、また、事務次官経験者が48人もいるというのは、異常事態ではないかと思うのです。

あくまで仮説・推測ですが、こうした状況になっている理由は、大きく分けて2つあるのではないでしょうか。

「顧問」「相談役」の代わりとしての社外取締役

1つは、自社の業界に関係する官庁、監督官庁出身者を社外取締役に据えることで、何かあったときに頼りにしたい、という理由。

従来であれば、業界に関係する官庁や監督官庁出身の官僚を顧問とか相談役という立場として採用していたものを「社外取締役」という会社で認められた役職に付けただけというケース。
これは、社外取締役の本来の機能=社外の声を会社経営に取り入れて業績向上に繋げるという機能とは真逆と評していいパターンです。

業界に関係する官庁や監督官庁出身の官僚であれば、頭の中には業界知識が溜まっています。
となれば、そうした官僚出身者から得られる叡智は、業界知識に基づくものになるはずです。
つまり、社外の声を聞いたとしても、結局目新しい発想や気づきはない可能性が高くなる。
結局、得られるものは、社外の声ではなく、現在の経営陣にとって耳障りがいい声。
社外取締役としての機能は果たさない、ということになってしまいます。

寄らば大樹

もう一つは、社外取締役候補者を自社で独自に選ぶだけの判断材料がないから、他の会社が採用した人を選んでおけば無難だろうという理由。

まったくもって保守的な姿勢での社外取締役の選任です。
「あの会社が社外取締役に採用しているから、この人なら無難=株主から異議も出ないだろう」
「有名人だから取締役の誰もが知っていて、社外取締役の候補者とすることについて経営陣から文句は出ないし、候補者を選んだ社内の部署としても責任を取らなくて済むだろう」
「まったく無名の人材を社外取締役に選任すると、社内決裁を経る段階で手間取る、株主総会で決議を得るのが難しい、大株主やメインバンクに理解を得るのが煩雑。だったら、無難な人を選んでおいた方が良いのではないか」

推測ではありますが、こうした企業は多いのではないでしょうか。
こうした企業に対する評価は、「所詮、そのレベル(本気で社外の声を取り入れようとは思っていない。そのために必死に人材を探すことまではしない。責任逃れしたい意向の方が強い。)の会社だよね」ということです。

社外取締役はまず選任して、必要な助言を得たら、どんどん交代させればいい

新しい人材を取り入れて、1年ないし2年の任期をまっとうさせてみる。

その結果、会社にとって利益がない社外取締役だった=目新しい指摘もなければ専門的な知見からの意見もなかった、というのであれば、任期満了とともに、また別の社外取締役に変える。
社外取締役だから重任しないことについて、しがらみもない。
だから、容易に変えやすい。

もしくは、任期中の経営課題とされていた部分に必要な助言をもらうことができたから、任期満了とともにお役御免し、また別の社外取締役に変える。
会社経営の「ゴルゴ13」的役割として、社外取締役を選任する。

そうすれば、社外取締役の人材も流動化するし、社外取締役側も緊張感を持つし、経験も積める。
社外取締役って、そういう扱いでいいのではないかと思うのですが、私の理解は間違っているのでしょうか。