ノベルティスファーマ社の副作用報告漏れ事案

ノバルティスファーマ社は7月に白血病治療薬の副作用を厚労省に報告していなかったことで厚労省から改善命令を受けました。
この改善命令に関連して、副作用の未報告事例がそれ以外にもあったことが新たに明らかになりました。

「(ノベルティスファーマ社)は白血病治療薬による重い副作用を16症例21件把握しながら国に報告しなかったなどとして、7月に厚労省から改善命令を受けた。この際、販売するすべての薬で同様の報告漏れがなかったかどうか報告するよう指示され、約1万例を調査していた。

その結果、同社が販売する薬との因果関係が否定できない重い副作用症例は少なくとも2579例あった。白血病治療薬など抗がん剤が多く、患者の副作用は腎障害などで、死亡した事例もあったという。これとは別に自社薬との因果関係を調査中の副作用症例は6118例あるといい、薬事法違反の未報告事案はさらに増える可能性がある。厚労省は9月末までに全ての調査結果を報告するよう指示した。」(日本経済新聞2014年8月30日朝刊より)

死亡事例があったのに未公表は企業の社会的責任を果たしていない

この事例で見過ごせないのが、死亡した患者がいたにもかかわらず、報告していない事案があったという点です。

ノベルティスファーマ社が取り扱っていたのは、薬です。
薬は、患者の体内に取り込む性質のものです(外用薬は別として)。
体内に取り込む性質の薬を使用して、副作用が生じ、中には死亡した事例があった。
ところが、それを報告していなかった。

見方を変えれば、薬を使用して死亡する患者が他に発生する可能性があるかもしれないのに、それを黙っていた、と理解することもできます。

こうした事態は、ノベルティスファーマ社が「薬を通じて患者の生命を預かっている」という自社の社会的責任を軽視していたと評することができます。

本来であれば、薬の副作用であるとの因果関係が否定できない死亡事案が発生したのであれば、その時点で、社会や医療機関に向けて、「自社の薬を使用した患者が死亡する事故が生じた、自社の薬の使用を控えるように」との注意喚起をしなければならないはずです。
仮に、そうした注意喚起によって一時的に会社の売上が減ることになったとしても、注意喚起をして新たな死亡者が発生しないように努めることが「患者の生命を預かっている」会社が果たすべき責任だろうと思われます。
この注意喚起は、法律上、厚労省への報告義務があろうがなかろうが、企業の社会的責任という観点から行うべきことです。

公表することの意味

企業の社会的責任は、企業の存在価値のこと

ここで、「企業の社会的責任」の意味内容を掘り下げてみたいと思います。

私は、「企業の社会的責任」というのは、その企業が社会に存在することが許される理由、一言で言えば、企業の存在価値ということだと理解しています。
要するに、その企業が存在することが、なぜ社会に受け容れられているか、なぜ世の中が許容しているか、ということです。

公表の第1の意味=社会に自社の存在価値を問う

ノベルティスファーマ社は「薬で患者の生命を預かっている会社」だからこそ、社会に受け容れられているのです。
副作用による患者の死亡という、その会社の存在意義と矛盾する事案を生じさせてしまったのだとしたら、その時点で、「わが社は、このまま社会に存在していてもいいですか」と世の中に問わなければならない。
そのために「公表」をしなければならないのです。

公表の第2の意味=次なる死亡事故を防ぐ

また、先に書いたように、副作用による患者の死亡事故が発生したのであれば、「薬で患者の生命を預かっている会社」は、次なる死亡者が出ないように注意喚起をしなければなりません。
これが、その会社の使命です。
死亡事案が発生したら、ただちに「公表」しなければ、その使命を果たすことはできません。

公表しない会社は存在価値を問われる

結局、何が言いたいのかというと、死亡事案のような重大事案が生じたのに、「公表」に消極的な会社は、社会から存在価値が問われることもやむを得ない、ということです。

ノベルティスファーマ社に限らず、世間に存在している会社は、死亡事案のような重大事案が発生したときには、躊躇なく「公表」するようになって欲しいのです。