日本スチュワードシップ・コードとガバナンスコードって必要なの?

コーポレートガバナンスと日本版スチュワードシップ・コード

近時、「ガバナンス」という言葉が当たり前のように使われています。

「コーポレートガバナンス」という言葉を、経営者の責任を問う例がその典型です。
要するに、経営者、つまり取締役・監査役は、社内で不正が起きないような仕組み作りをしているか、不正が起きたときに対処できるな仕組み作りをしているか、ということです。

経営者=取締役・監査役は、株主に株主総会で議決権を行使して選任される立場です。
そこで、株主が、あらかじめ「こんな経営者なら支持する。こんな経営者は支持しない。」という方針を出しておく。
これが「スチュワードシップ・コード」と呼ばれるものです。

日本では、2014年2月に金融庁が機関投資家に向けて「日本版スチュワードシップ・コード」を発表しました。
日本版スチュワードシップ・コード

2014年8月末時点で160の機関投資家が日本版スチュワードシップ・コードの受入を表明したそうです(金融庁HPより)。

これは、結局のところ、経営陣に株主のことを意識しながら経営判断しなさい、ということを促すためのもの、という広い意味では「コーポレートガバナンス」に役立つと言えるでしょう。

日本版スチュワードシップ・コードの必要性への疑問

ただ、正直言って、これって本当に必要なものなのか?というのを素朴に感じます。

株式会社にとって株主はオーナーです。
そのオーナーは1人ではありません。ましてや、機関投資家だけではありません。
機関投資家が大量に株式を保有している大株主の一人であることは否定できません。
しかし、機関投資家以外の個人株主もたくさんいます。

金融庁の「日本版スチュワードシップ・コード」を発表し、機関投資家がそれを受け容れたからといって、経営陣は機関投資家だけを見ていればいいわけではありません。
機関投資家だけを見ていれば、たしかに、自分の取締役・監査役の地位は安泰かもしれません。
しかし、果たして、それで株主全体の利益を考えた経営判断ができるのか、という疑問は尽きません。

経営陣は、誰よりもその会社の業務の内容を知っている人たちです。
時には、自分の地位が危うくなっても機関投資家の意向に背く経営判断をしなければならない場合もあるでしょう。
そうしたときに、「日本版スチュワードシップ・コード」は、むしろ、適正な経営判断をしようとしている経営陣にとって足かせになりはしないかな、と危惧するのです。

たとえば、西武ホールディングスとサーベラスの関係。
報道を見ている分には、経営陣と投資家との判断がぶつかり合って、衝突しあって、それでも少しずつ前進している、というように見えます。
気概のある経営陣だからこそ、衝突する経営判断もできたのかもしれません。
これが日和見の経営陣だったら、いったい、どうなっていたのか。

要するに、日本版スチュワードシップ・コードとか、機関投資家には良いのかもしれませんが、経営陣にとっては余計なお世話ということになるのではないかと思うのです。

企業統治指針(コーポレートガバナンスコード)、ナニソレ?

日本版スチュワードシップ・コードとは別にもう一つ見逃せない動きがあります。
金融庁と東京証券取引所による「企業統治指針(コーポレートガバナンスコード)」の策定に向けた動きです。

「上場企業の経営規律を強化し収益力を向上させるための企業統治(コーポレートガバナンス)指針作りが始まった。金融庁と東京証券取引所が7日、有識者会議の初会合を開いた。論点になりそうなのは社外取締役の人数や企業同士の株式持ち合い抑制策。経済界には慎重な意見が多く、どこまで踏み込めるかがポイントになる。指針を来年6月までにまとめる。」(2014年8月8日、日本経済新聞より)

9月30日には3回目の有識者会議が行われるそうです。

会社法と会社法施行規則で内部統制(業務適正確保体制)について株式会社の動きをがんじがらめにし(財務面の内部統制にはさらに金融商品取引法もある)、さらに、法律でもなんでもないルールとして「企業統治指針(コーポレートガバナンスコード)」を作ってがんじがらめに輪を掛ける。

経営陣にガバナンスをしっかり徹底させて、不正をおこなわせないようにする、という基本的な考えには諸手を挙げて賛成します。

しかし、会社で不正が行われない仕組み作りをする、不正が行われたときの対処づくりを考える。
これは、本来、経営陣に任せて、その会社ごとにオリジナリティのある仕組み作りをさせればいい話です。
行政である金融庁や、上場会社に株式取引の市場を提供している東京証券取引所が考えることではないと思うのです。
率直に言えば、これも余計なお節介であり、会社経営の組織作りにまで行政が口を挟むな、と感じます。

もちろん、自分で考えられない経営陣(や、実際にルール作りをする法務/総務部門)にとっては、参考になると思います。
しかし、本当は、ここを自分の頭で考えてこそ、高い報酬をもらえる経営陣であり、ホワイトカラーで管理部門と呼ばれる人たちのはずです。
それを行政や取引所に任せるなんて・・・(以下、激辛になるので略)。

しばらく動向を見守りたいと思います

イオン監査役アカデミーの設置に見る、子会社管理

会社法改正による、取締役の子会社監督義務の拡大

2014年6月に成立した改正会社法は、取締役・取締役会の業務適正確保体制(いわゆる内部統制システム)の設置義務の範囲を拡大しました。

改正会社法では、自社の業務の適正を確保するための体制を構築するだけではなく、「子会社からなる企業集団」をも対象にして業務の適性を確保するための体制を構築することを取締役会に法的に義務づけたのです。

本来なら、親会社は、子会社にとって株主という存在です。
しかし、ビジネスの現場に即して言えば、「子会社からなる企業集団」の業務を管理監督していることが多いのも事実です。

例えば、

  • 親会社から子会社に役員を派遣して、子会社の業務内容を監督する
  • 子会社での重要な業務については、親会社の取締役会の決裁を得るか、親会社の取締役会に報告する
  • 極端な例では、子会社の実態が親会社の一事業部にすぎない

などがあります。

こうした背景を元に、「親会社は子会社の株主」という形式論に留めず、親会社の取締役・取締役会は子会社からなる企業集団の業務の適正を確保する体制を構築しなければならないことまでを法的に義務づけたのです。

親会社の取締役・取締役会は、子会社の業務が適正に行われているかを監督しなければならないという監督義務の対象が拡大したとも理解することができます。

「イオン監査役アカデミー」の位置づけ

他方で、監査役には、会社法が改正される前から子会社調査権がありました。
子会社に不正・違法行為がないかどうかを、親会社の監査役が調査する権限があるということです。

この改正会社法での取締役・取締役会の子会社に対する監督義務が拡大したことと、従来からの監査役の子会社に対する調査権の両方を踏まえた行動をとる企業も現れてきました。

「イオンは監査役候補者を社内で育成する機関「イオン監査役アカデミー」を設置する。アカデミーを修了した幹部人材を海外を含め260社以上ある子会社の監査役に順次配置する。グループ各社の不祥事や不正会計の芽を摘み、企業統治の強化につなげる。」(2014年9月13日付け、日本経済新聞朝刊より)

報道されている以上のことはわかりません。

ただ、この報道を見る限り、親会社の取締役・取締役会は自らが子会社を監督するだけではなく、自ら子会社を監督できる人材を育成し、そうして育成した監査役候補者を子会社の監査役として選任することによって、自らの子会社監督の補助にする、あるいは子会社の監査役として取締役・取締役会の意を汲んでもらい、目の届きにくいところを取締役・取締役会に変わって十分に監督してもらうといったことを狙っているのではないかと、推測できます。

こうした取り組みを行っている会社は聞いたことがないので、親会社による子会社監督のおもしろい試みとして、今後の動向が気になります。

新日鐵住金名古屋製鉄所の爆発事故に見る、地域社会との共存

工場事故と地域住民

工場では事故は不可避です。
爆発事故、土壌汚染、騒音問題などが頻発します。

こうした事故が発生したときに、企業は危機管理として事故対応を行います。
その時に忘れてはならない存在が「地域住民」です。

企業の工場がその場所で操業することが許されるのは、地域住民に受け容れられているからです。
その地域住民の平穏な生活や生命・身体に不安を生じさせる事故を発生させた場合には、地域住民に迷惑を掛けた、不安を与えたということを肝に銘じて、地域住民に理解を求める行動を取らなければなりません。

これは「企業の社会的責任」と言えます。

新日鐵住金名古屋製鉄所での爆発事故と、地域住民への配慮

9月3日に新日鐵住金名古屋製鉄所で爆発事故が発生しました。
報道によると、2014年で5回目の事故だそうです。

「3日午後0時45分ごろ、愛知県東海市東海町5の新日鉄住金名古屋製鉄所から「コークス炉付近で爆発があった」と119番通報があった。愛知県警東海署や同製鉄所によると、15人がけがをして病院に搬送され、うち5人が気道熱傷などで重傷という。」

「名古屋製鉄所では今年1月以降、黒煙が発生する事故が計4回発生。新日鉄住金は8月、原因究明や改善策の検討のため、社内に事故対策委員会などを設けたばかりだった。」(2014年9月4日、日本経済新聞朝刊より)

新日鐵住金は事故対策委員会を設けて原因究明や改善策を検討しようとしていたところなので、内部的には十分な対策を行っていたと言えます。

しかし、その一方で、これまでの4度の事故での地域住民への配慮が不十分だったのではないかとも思えます。
住民からの不満の声が出ているからです。

「新日鉄住金名古屋製鉄所(愛知県東海市)で3日発生し、15人が負傷した爆発事故は、同製鉄所で今年5回目の黒煙発生だ。「またか」「いいかげんにしてほしい」。住民らは不安や不満を募らせた。」(2014年9月4日、日本経済新聞朝刊より)

新日鐵住金が地域住民を全く配慮していなかったのか?と言うと、そういうわけではないようです。
少なくとも、記者会見での謝罪コメントを見る限り、地域住民には配慮しています。

「新日鉄住金名古屋製鉄所(愛知県東海市)の爆発で15人が負傷した事故で、新日鉄住金の酒本義嗣・名古屋製鉄所長らが3日午後、記者会見を開き、「地域、社会のみなさまに大変なご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と陳謝した。」(2014年9月3日、日本経済新聞電子版より)

そうであるにもかかわらず、地域住民から不安や不満が出るのはなぜか?ということです。

もちろん、1年で5回目の事故が原因であることも否定できません。

ただ、それ以上に、これまでの4回の事故で地域住民の方の不安や不満を十分に吸い上げられていなかったのかもしれないなとも思えます。

たとえば、住民説明会を行っていなかった、住民説明会を行ったけれど地域住民の方たちが理解できるほど噛み砕いていなかった(説明の内容が難しかった)、住民説明会への参加率が低かったので参加していない住民も多くいたなどが考えられます。

住民説明会を行う際で、もっとも大事なポイント

そこで、ここでは、もし企業が工場での爆発事故などを起こしてしまったときに、企業は住民説明会を行うべきか、住民説明会を行うときに、どういった点に配慮をすべきかについて解説したいと思います。

住民説明会を行わなければ、地域住民への配慮を欠く

仮に住民説明会を行わないのであれば、その姿勢そのものが、地域住民への配慮が欠けていたという評価になりましょう。
事故を発生させ、地域住民の方に迷惑を掛けた、不安・不満を抱かせたという意識があれば、地域住民の方に説明するのは筋だからです。
法的責任云々ではありません。
企業に地域社会と共存する意思があるかどうかという問題です。

実際に、ある会社では、住民説明会を行うだけでなく、地域住民のお宅に1軒1軒訪問し説明に上がったこともあります。そこまで行うのかどうか。
新日鐵住金の場合、報道からは明らかではないので、過去4回の事故のときにどのような行動をとったのかは気になります。

住民説明会の目的と、地域住民への謝罪

だからといって、住民説明会を行えばそれで足りる、というわけではありません。
形だけの住民説明会を行っても意味はありません。

住民説明会の目的は、企業と地域住民との共存のために、地域住民の不安、不満を解消することです。
そうだとすれば、住民説明会では、地域住民が事故で抱いた不安や不満に正面から答える必要があります。

例えば、事故によって消防車などが出動し、地域住民の平穏な生活を破ってしまった。
まず、そこに謝罪が必要です。

住民説明会では、わかりやすさを第一に

また、爆発事故となれば、原発の事故の例を見るまでもなく、地域住民は工場で何を扱っていたのか、それによって地域住民の生命、身体に影響があるような物質などが浮遊しないか、もっとわかりやすく言えば、爆発事故によって身体に害は生じないか、今までどおりの普通の生活をそのまま送っていて大丈夫なのか、を心配します。

そうした地域住民の立場に立って、企業は爆発事故の内容を説明していかなければなりません。

地域住民の立場に立つということは、わかりやすさ、ということに繋がります。

  • 専門用語を使用しない
  • 図などを使って目で見てわかるようにする
  • これから、どのような害が可能性があるか

などを、噛み砕いて説明する必要があるのです。

レベルは、小学6年生くらいが理解できる程度です。
小学6年生をレベルに設定するのは、そのレベルまで落とし込めば、住民説明会に出席している人がほぼ等しく十分な理解ができるからです。

今回の新日鐵住金の例でいえば、「黒煙があがった」ということです。
そうであれば、工場で扱っていたのは何か、黒煙に含まれている物質は何か、その物質や煙を吸い込んで身体に害はないか、どれくらいを体内に取り込むと健康被害が生じるかなどを説明する必要があります。

どれくらいというのも専門単位で説明するのではなく、成人の大人が1日2時間黒煙の中で煙りを吸い続けたら、何日間で何人に1人の割合で呼吸困難になる可能性が出てくるとか、何日間で肺がんになる可能性がどの程度増加するなどという具体的な説明です。

会社の立場で考えて住民説明会を行おうとすると、どうしても地域住民のフラストレーションをぬぐいきれないままになってしまう可能性があります。
説明内容を少し工夫するだけで、同じ住民説会を行うにしても地域住民の納得度合いが変わってくるので、ぜひ、わかりやすさに挑戦して欲しいと思います。

「社外取締役の人材難・人材不足」は本当か?

社外取締役の増加傾向

9月2日の日本経済新聞が「社外取締役『複数』が8割」と報じていました。

「上場企業で複数の社外取締役を導入する会社が増えている。主要100社を調べたところ、社外取締役を2人以上置く企業は85社と8割を超え、5年前の57社に比べ1.5倍に増えた。」

「東京証券取引所の1部上場企業の中で、社外取締役を2人以上置く企業は全体の34%だったが、主要100社に限れば8割超が複数の社外取締役を置いていることがわかった。取締役全体の半分以上を社外で占める企業も12社あった。」(2014年9月2日付け日本経済新聞朝刊)

社外取締役が増えて、社外の声を取り入れる、経営に客観性を取り入れるということは、非常に意味があると思います。
この点については、別のエントリー(社外取締役の存在・役割は会社の業績にとって意味があるのか)で書いたことがあります。

社外取締役の人材不足は本当か?

「適正な人材が少ない」との声

その一方で、「社外取締役の人材不足」ということも報じられていました。

「社外取締役の導入が広がることで、1人が複数企業の社外取締役を兼務するケースも増えている。主要100社の社外取締役300人のうち、37人が2社以上を兼務し、5年前の18人から倍増した。」

「中央省庁の官僚出身者が社外取締役になるケースも増えている。主要100社のうち、事務次官経験者らが48人と5年前の3倍近くになった。財務省と経済産業省、外務省が多数を占める。

背景にあるのは人材不足だ。大手金融機関幹部は「適性な人材が少ない」と訴える。経団連幹部も「地方に本社を置く企業は1人でも人選に苦労している」と話す。このため社外取締役として実績がある学識経験者や官僚出身者に依頼が集中しているようだ。」(2014年9月2日付け日本経済新聞朝刊)

「適正な人材が少ない」「人選に苦労」そうした背景を理由に、「学識経験者や官僚出身者に依頼が集中」とのことだそうです。

本当に人材不足なの?

ただ、本当に人材不足なの?という疑問は感じます。
さすがに、主要100社のうち、37人が2社以上の社外取締役を兼務し、また、事務次官経験者が48人もいるというのは、異常事態ではないかと思うのです。

あくまで仮説・推測ですが、こうした状況になっている理由は、大きく分けて2つあるのではないでしょうか。

「顧問」「相談役」の代わりとしての社外取締役

1つは、自社の業界に関係する官庁、監督官庁出身者を社外取締役に据えることで、何かあったときに頼りにしたい、という理由。

従来であれば、業界に関係する官庁や監督官庁出身の官僚を顧問とか相談役という立場として採用していたものを「社外取締役」という会社で認められた役職に付けただけというケース。
これは、社外取締役の本来の機能=社外の声を会社経営に取り入れて業績向上に繋げるという機能とは真逆と評していいパターンです。

業界に関係する官庁や監督官庁出身の官僚であれば、頭の中には業界知識が溜まっています。
となれば、そうした官僚出身者から得られる叡智は、業界知識に基づくものになるはずです。
つまり、社外の声を聞いたとしても、結局目新しい発想や気づきはない可能性が高くなる。
結局、得られるものは、社外の声ではなく、現在の経営陣にとって耳障りがいい声。
社外取締役としての機能は果たさない、ということになってしまいます。

寄らば大樹

もう一つは、社外取締役候補者を自社で独自に選ぶだけの判断材料がないから、他の会社が採用した人を選んでおけば無難だろうという理由。

まったくもって保守的な姿勢での社外取締役の選任です。
「あの会社が社外取締役に採用しているから、この人なら無難=株主から異議も出ないだろう」
「有名人だから取締役の誰もが知っていて、社外取締役の候補者とすることについて経営陣から文句は出ないし、候補者を選んだ社内の部署としても責任を取らなくて済むだろう」
「まったく無名の人材を社外取締役に選任すると、社内決裁を経る段階で手間取る、株主総会で決議を得るのが難しい、大株主やメインバンクに理解を得るのが煩雑。だったら、無難な人を選んでおいた方が良いのではないか」

推測ではありますが、こうした企業は多いのではないでしょうか。
こうした企業に対する評価は、「所詮、そのレベル(本気で社外の声を取り入れようとは思っていない。そのために必死に人材を探すことまではしない。責任逃れしたい意向の方が強い。)の会社だよね」ということです。

社外取締役はまず選任して、必要な助言を得たら、どんどん交代させればいい

新しい人材を取り入れて、1年ないし2年の任期をまっとうさせてみる。

その結果、会社にとって利益がない社外取締役だった=目新しい指摘もなければ専門的な知見からの意見もなかった、というのであれば、任期満了とともに、また別の社外取締役に変える。
社外取締役だから重任しないことについて、しがらみもない。
だから、容易に変えやすい。

もしくは、任期中の経営課題とされていた部分に必要な助言をもらうことができたから、任期満了とともにお役御免し、また別の社外取締役に変える。
会社経営の「ゴルゴ13」的役割として、社外取締役を選任する。

そうすれば、社外取締役の人材も流動化するし、社外取締役側も緊張感を持つし、経験も積める。
社外取締役って、そういう扱いでいいのではないかと思うのですが、私の理解は間違っているのでしょうか。

命に関わる副作用は法律に義務がなくても消費者に公表すべし

ノベルティスファーマ社の副作用報告漏れ事案

ノバルティスファーマ社は7月に白血病治療薬の副作用を厚労省に報告していなかったことで厚労省から改善命令を受けました。
この改善命令に関連して、副作用の未報告事例がそれ以外にもあったことが新たに明らかになりました。

「(ノベルティスファーマ社)は白血病治療薬による重い副作用を16症例21件把握しながら国に報告しなかったなどとして、7月に厚労省から改善命令を受けた。この際、販売するすべての薬で同様の報告漏れがなかったかどうか報告するよう指示され、約1万例を調査していた。

その結果、同社が販売する薬との因果関係が否定できない重い副作用症例は少なくとも2579例あった。白血病治療薬など抗がん剤が多く、患者の副作用は腎障害などで、死亡した事例もあったという。これとは別に自社薬との因果関係を調査中の副作用症例は6118例あるといい、薬事法違反の未報告事案はさらに増える可能性がある。厚労省は9月末までに全ての調査結果を報告するよう指示した。」(日本経済新聞2014年8月30日朝刊より)

死亡事例があったのに未公表は企業の社会的責任を果たしていない

この事例で見過ごせないのが、死亡した患者がいたにもかかわらず、報告していない事案があったという点です。

ノベルティスファーマ社が取り扱っていたのは、薬です。
薬は、患者の体内に取り込む性質のものです(外用薬は別として)。
体内に取り込む性質の薬を使用して、副作用が生じ、中には死亡した事例があった。
ところが、それを報告していなかった。

見方を変えれば、薬を使用して死亡する患者が他に発生する可能性があるかもしれないのに、それを黙っていた、と理解することもできます。

こうした事態は、ノベルティスファーマ社が「薬を通じて患者の生命を預かっている」という自社の社会的責任を軽視していたと評することができます。

本来であれば、薬の副作用であるとの因果関係が否定できない死亡事案が発生したのであれば、その時点で、社会や医療機関に向けて、「自社の薬を使用した患者が死亡する事故が生じた、自社の薬の使用を控えるように」との注意喚起をしなければならないはずです。
仮に、そうした注意喚起によって一時的に会社の売上が減ることになったとしても、注意喚起をして新たな死亡者が発生しないように努めることが「患者の生命を預かっている」会社が果たすべき責任だろうと思われます。
この注意喚起は、法律上、厚労省への報告義務があろうがなかろうが、企業の社会的責任という観点から行うべきことです。

公表することの意味

企業の社会的責任は、企業の存在価値のこと

ここで、「企業の社会的責任」の意味内容を掘り下げてみたいと思います。

私は、「企業の社会的責任」というのは、その企業が社会に存在することが許される理由、一言で言えば、企業の存在価値ということだと理解しています。
要するに、その企業が存在することが、なぜ社会に受け容れられているか、なぜ世の中が許容しているか、ということです。

公表の第1の意味=社会に自社の存在価値を問う

ノベルティスファーマ社は「薬で患者の生命を預かっている会社」だからこそ、社会に受け容れられているのです。
副作用による患者の死亡という、その会社の存在意義と矛盾する事案を生じさせてしまったのだとしたら、その時点で、「わが社は、このまま社会に存在していてもいいですか」と世の中に問わなければならない。
そのために「公表」をしなければならないのです。

公表の第2の意味=次なる死亡事故を防ぐ

また、先に書いたように、副作用による患者の死亡事故が発生したのであれば、「薬で患者の生命を預かっている会社」は、次なる死亡者が出ないように注意喚起をしなければなりません。
これが、その会社の使命です。
死亡事案が発生したら、ただちに「公表」しなければ、その使命を果たすことはできません。

公表しない会社は存在価値を問われる

結局、何が言いたいのかというと、死亡事案のような重大事案が生じたのに、「公表」に消極的な会社は、社会から存在価値が問われることもやむを得ない、ということです。

ノベルティスファーマ社に限らず、世間に存在している会社は、死亡事案のような重大事案が発生したときには、躊躇なく「公表」するようになって欲しいのです。

日本経済新聞朝刊の「リスク~企業の処方箋~」の特集を読んで

今日は、雑感です。

8月30日から9月1日までの3日間、日本経済新聞の朝刊に「リスク~企業の処方箋~」という特集連載記事が掲載されていました。

大手企業が危機管理のために何をしているか。これを、次の3つのテーマで紹介していました。

  • 情報漏えい(8月30日)
  • 失敗から学ぶ(8月31日)=原因を踏まえた危機管理
  • トップによる把握(9月1日)=危機管理体制

率直に言って、非常によい特集でした。

私が常日頃から企業危機管理として、公開セミナーや社内役員研修・従業員研修でお話ししている内容や、事務所ブログに書いていることと、同じことが見事にわかりやすく書かれていました。
しかも、日経の記者らしく、大企業ではどのような取り組みをしているかが具体的に事例が紹介されていました。

ただ、気になるのは、「じゃ、この危機管理に弁護士がどう関わっているか。どう相談すれば良いのか」の視点があまりなかったこと。
たとえば、個人情報漏えいの件では、最後は、保険会社の話に行ってしまいました。
これでは、「個人情報漏えいは、結局、最後は賠償金の話でしょ」になってしまって、漏えい防止に対する問題意識は高まらない。

誰に、どう相談すれば良いのかがわからなければ、企業は関心持っても先に進めない。
ここが、今の企業危機管理の超えられない意識の壁なのかな、と思います。

問題意識がある企業は、誰に相談したらいいかわからない。
迷った末、結局、資格のない「危機管理コンサルタント」のところに相談に行く。
「危機管理コンサルタント」は法律的なことも含めたアドバイスをする。
経営面だけならともかく、「損害賠償になりますよ」「会社法の内部統制が不十分ですよ」といった法律的なアドバイスをしたら、その時点で弁護士法違反(非弁行為)。
しかし、これが堂々と行われている矛盾。

もしくは、顧問弁護士に相談に行く。
ある弁護士からは「事件になってからいらっしゃい」と言われる。
もしくは「~してはダメ」とばかり、言われる。
結局、会社からしてみれば「何もアドバイスしてくれないなら、コンサルタントのところに行くか」となる。

これでは、企業危機管理は根付かない。
もしくは、一部の問題意識の高い企業だけが、内輪で危機管理ができるようになって終わる。
いつまでも、企業危機管理を取り巻く社会環境は不十分なままで終わる。

もちろん、企業危機管理がわかっている弁護士が少なすぎるのが原因でもあります。
危機管理と弁護士がイコールで繋がってませんもんね。

だから、俺、がんばろっと。