昨日、「『完全』社外取締役」について一本書きました。
今日も引き続き、社外取締役の役割について書きます。

社外取締役の役割・存在意義についての疑問

社外取締役に関して、常について回る議論が

  • 「社外取締役に効果ってあるのか?」
  • 「社外取締役で会社の売上が上がるのか?」
  • 「社外取締役でガバナンスに効果は出るのか?」

というものです。

社外取締役の効果についての分析結果

今日の日経新聞に、この部分について、おもしろい記事が載っていたので紹介します。

社外取締役の存在・役割は業務改善に影響があるのか?

まず、1つめは、社外取締役が業務改善に影響しているか、という疑問への研究結果です。

「代表的なものの一つが、早稲田大学の宮島英昭教授が12年に発表した論文だ。
宮島教授は社外取締役のいる企業といない企業との間で、業績改善にどのような違いがあるかを測定した。
得られた結論は
(1)社外取締役が業績改善に結びつきやすい企業と、そうでない企業がある
(2)製品の独自性が低く、複雑な事業を持たない企業ほど、社外取締役の選任で業績が改善しやすい
(3)逆に、人材やノウハウといった無形資産を競争力の源泉とする企業は社外取締役の有効性に乏しい――など。」
(2014年6月29日日本経済新聞朝刊より)

この研究結果の中で、注目すべきは、(2)と(3)でしょう。

「製品の独自性が低く、複雑な事業を持たない企業」と「人材やノウハウといった無形資産を競争力の源泉とする企業」とを区別して、前者では社外取締役の存在・役割は業務改善に効果がある、後者では社外取締役の存在・役割は業務改善に効果はない、と結論づけています。

「製品の独自性が低く、複雑な事業を持たない企業」と「人材やノウハウといった無形資産を競争力の源泉とする企業」の区別は、この記事からはわかりません。

強いて考えるなら、前者は、事業内容がマニュアル的な企業=社長が「右向け右」と指示したら、あるいは指示しなくても、上意下達で、事業が進んでいく企業かもしれません。
企業ではなく事業単位で言えば、組み立て工場のラインや経理処理など一定的な処理が行われる事業が、ここに該当するかもしれません。

後者は、社長が方向性だけ示したら、個々の事業については従業員の裁量に委ねられている企業かもしれません。
これも事業単位で言えば、システムエンジニアのようにプログラミングをする事業や広報事業が、ここに該当するかもしれません。

従業員による横領の問題などが発生しやすい営業は、両者の側面を含んでいる事業かもしれません。

要するにここで申し上げたいのは、企業として業務改善を目的として社外取締役を選任する場合には、改善したい事業分野がどこなのか、その社外取締役を選任することが、その事業分野の改善に効果的なのか、候補者をピックアップする時に社外取締役に期待する目的・役割と期待する効果・機能を明確にしておかなければ社外取締役を選任する意味はない、ということです。

社外取締役の存在・役割はROE・配当性向の改善に効果があるか?

もう一つは、社外取締役を選任することで、投資家・株主が納得するような株式への影響が生じるか、という疑問への研究成果です。

「外国人投資家の関心の高まりに対応し、UBS証券の大川智宏ストラテジストは、自己資本利益率(ROE)や配当性向と社外取締役の関係を分析している。
それによると、社外取締役がいない企業といる企業とでは、ROEの改善度合いや配当性向の高さで、明確な違いが認められた。しかし、大企業に限れば社外取締役比率でROE改善率や配当性向に大差はなかった。」(2014年6月29日日本経済新聞朝刊より)

この分析結果では、「大企業に限れば・・大差はなかった」とあります。
ここでも、大企業がどれくらいの規模を想定しているのかは明らかではありません。

ただ、ここで重要なのは、「明確な違いが認められた」という部分ではないかと思います。

ROEは、(1株あたりの利益)÷(1株あたりの株主資本)、で算出します。
1株あたりの利益は、(当期純利益)÷(発行済み株式数)、で算出します
1株あたりの株主資本は、(株主資本)÷(発行済み株式数)、で算出します。
要するに、(当期純利益)÷(株主資本)、がROEということです。

何を申し上げたいかというと、増資でもしない限り「株主資本」が増えることはないわけです。
ROEを改善させるために増資をすることは、そうそうないはずです。
ということは、ROEが改善したということは、当期純利益が改善した=向上したということです。
簡単に言えば、売上が上がった、あるいは/かつ、当期経常損失が減少した、ということです。

純利益が上がらなければ、配当に回す剰余金は増えないのですから、配当性向が向上したというのも、背景は同じです。

それでは、社外取締役を選任したことで、売上がアップした、and/or経常損失が減少した理由は、何なのか?
社外取締役がいるかどうかによって、消費者や顧客が、消費活動を変える、取引条件や態様を変えるとは想像できません。
となると、会社の売上アップ、経常損失の減少は、社外取締役が社内に影響を与える役割・機能を果たしたからだと考えることができます。

たとえば、社外取締役が入ったことで取締役会で経営上効果的なアドバイスを得ることができたのではないか。
それとも、社外取締役が入ったことで経費管理に厳しい目が及ぶようになり、経費節減に厳しいメスが入ったのではないか。
このような社外取締役の役割・機能が、売上アップ、経常損失が減少した理由として考えられます。

もしこれらが理由だとすれば、社外取締役候補者を選任する場合に、取締役会で経営上効果的なアドバイスをしてくれる人なのか、あるいは経費管理に厳しい目を光らす人なのか。
こうした役割・機能を考えなければ、社外取締役を選任する意味がない
と言えます。

社外取締役=有名人ではダメ

ここまで見てきたとおり、社外取締役を選任する場合には、社外取締役の選任によって業務改善、あるいは、ROE・配当性向向上の何を期待するのか、その目的意識・役割を明確にしなければならないこと、また、その期待に応じた人選をしなければ、目的意識・役割と結果に齟齬が生じてしまうこと、を結論として出すことができます。

単に、元官僚とか、元裁判官、元検察庁、有名な経営者、取引先の経営者、社長と懇意にしている経営者や専門家であるとか、そういった外面だけで社外取締役を選んでも、その企業は社外取締役選任の効果は得られないということです。
「何かあったときに顔が利くだろう」という考えで社外取締役を選任しているのであれば、本末転倒ということです。
その考えで社外取締役を選任するのであれば、せいぜい、相談役か顧問に留めておくほうが無難ということです。

もしかしたら、社外取締役を選任しても「大企業では・・・大差はなかった」というのは、ここが要因になっているのかもしれません。