2014年6月株主総会での社外取締役の導入

2014年6月の株主総会が一通り終了しました。
今年の株主総会で争点の一つとなったのが、「社外」取締役の導入です。

今年の株主総会の結果、1部上場企業のうち、1人以上の社外取締役が導入された企業は74%に達したそうです。

「東京証券取引所によれば今年の株主総会で、1人以上の社外取締役を抱える企業は1部上場の74%まで高まった。社内の利害を超え、外部の視点で経営を判断する社外取締役の存在が、日本企業でも「標準」になってきた。これを最も求めているのが海外の投資家だ。」(2014年6月28日付日本経済新聞朝刊)

あれ、私のところには全然話が来てない・・・まだまだ私の不勉強故・・・もっと実績を重ねるしかないのであります。
見てろよ・・・。メラメラ。

私自身、過去に何社か社外取締役・社外理事に就任したことはあります。
たいていが社内で不祥事が起きた、社内で業務改革をしなければならない、そのために、社外の意見を聞こうという目的で私に声がかかったケースです。

私の性格から、初めのうちは静かにして状況や人間関係や性格を見定めますが、そのような目的で声を掛けていただいた以上、誰にも遠慮なく発言します(もちろん、発言の仕方や言葉選びには慎重にします)。
その結果、従来の雰囲気に馴染んだ役員や理事の方々とたいてい考え方が衝突します。
一部には理解を示してくれる役員、理事の方々もいらっしゃいますが、思いのほか、抵抗勢力は多い。

「ここまでやらなかったら、世の中の目は許してくれない」
「ここまで叩かれていることの本質は、ここにある。ここを解消しない限り、先には進めない」
「問題を起こした役員・理事の方々と一緒に働いていたから同情心があるのは仕方がない。しかし、ここは同情優先で動いてはいけない場面です」

これで衝突して1年経っても役員陣の考え方が変わらなければ、私から見限り辞任します。サヨナラ。サヨナラ。サヨナラ。
中には、理解を示してくれて、社外取締役ではなく顧問弁護士へ、というケースもあります。
また、不祥事改革、業務改革が終了して社外取締役の必要性がなくなったので、顧問弁護士の地位へ移行、というケースもあります。

ちょっと話がズレました。

何の話をしようとしたかったかというと、2014年6月に成立した改正会社法によって導入された「社外取締役」について、です。
「社外取締役」自体は、これまでの会社法にも存在しました。しかし、改正会社法によって導入されたのは、「社外」性の要件を高めた、いわば「『完全』社外取締役」と言って良いものかと思います(「完全社外取締役」という言い方はまだ一般化していません。あくまでここでの造語です)。

完全社外取締役に期待されていること

完全社外取締役に期待されていること

社外取締役に期待されていることは、取締役会での経営判断に社外の目を入れて、経営を厳しい目でチェックすること、でした。
しかし、実際には、監査役からの横滑り、ープ会社から横滑り、親族を導入した形だけの「社外」ということが多く、当初期待されていたような効果を残すことができなかった。
そこで、2014年改正会社法では、社外取締役の要件を厳しくしたのです。

完全社外取締役の要件

改正会社法のいう「社外」性の要件は、次の5つです。

  1. その会社・子会社の業務執行取締役等(業務執行取締役、執行役、支配人、使用人の総称です)ではなく、その就任前10年間、その会社・子会社の業務執行取締役等であったことがないこと
  2. 就任前10年間に一度でも、その会社・子会社の取締役、会計参与、監査役経験がある者(業務執行取締役等になったことがある者は除く)は、それらに就任する前10年間、その会社・子会社の業務執行取締役等であったことがないこと
  3. その会社の経営を支配する者、親会社の取締役、執行役、支配人、使用人ではないこと
  4. その会社の別の子会社の業務執行取締役等ではないこと
  5. その会社の取締役、執行役、支配人、重要な使用人、会社経営を支配する者の二親等以内の親族ではないこと

ちょっとややこしいですが、実務的に影響が多いのは、2と4ではないか、と思います。
2は、たとえば、10年以上前に従業員から監査役に就任(昇進? 法的には従業員退職+監査役選任なので昇進ではありませんが、社会的には昇進という意識が高いと思いますので、あえて昇進と書きます)した者は、横滑りで取締役になっても、社外取締役とはいえない、ということです。
4はグループ会社内で、別のグループ会社の役員が社外取締役にはなれない、ということです。
グループ会社内で役員をたすき掛けして相互に就任させたり、親会社から子会社に出向・転籍していた役員が、別の子会社の役員になっても、社外取締役とはいえない、ということです。

完全社外取締役であることが重要なのではなく、完全社外取締役として機能することが重要

社外取締役に期待されていることは、社外の目で経営判断を厳しくチェックするということです。
完全社外取締役に就任したのに、多忙を理由に取締役会に出席していないのは論外です。
実際にも、取締役会への出席率が低い社外取締役については、重任(再度の就任)への賛成比率が下がっているとの報道もあります。

「単に社外というだけでなく、その質に視線は向かい始めている。トヨタ自動車の場合、取締役会の出席率が7割弱にとどまる社外取締役への支持は8割を切った。」(2014年6月28日日本経済新聞朝刊より)

この現象を突き詰めていくと、今後、社外取締役を選任するときに、既に他の会社の社外取締役に就任している有名人、何社も社外取締役に就任している有名人は、候補者から外していくという方向で考えなければなりません。
社外取締役の重要な兼職情報は事業報告に記載することになっていますので(会社法施行規則124条2号)、兼職が多い社外取締役は、本当に機能しているのかどうかを確認される可能性はあります。

さらに言えば、社外取締役として出席しただけで何の発言もしない社外取締役は「経営判断を厳しくチェックする」という機能を果たしていないということで、支持率=重任への賛成比率が下がっていく可能性もありえます。
現時点でも、社外取締役の意見によって会社の事業方針や事業にかかる決定が変更されたときには、その内容を事業報告に記載することが求められています(会社法施行規則124条4号ハ)。
そのため、今後の株主総会では、株主から「社外取締役が発言したことで、経営判断に影響とまではいえなくても、議論が活発になったものがあるか」程度の質問が出て、完全社外取締役が機能しているかどうかを訊かれる可能性はあります。
それを想定したQAは準備しておいたほうがよろしいのではないでしょうか。

完全社外取締役を機能させるための工夫

完全社外取締役の機能を発揮してもらうためには、取締役会に出席するようになっただけでは不十分であり、取締役会で十分な発言をしてもらうことが重要です。完全社外取締役はお飾りではありません。

そのためには、完全社外取締役にも、取締役会前に十分な情報を提供しておくことが必要不可欠です。
完全社外取締役に会社の業務内容や人事情報(単に役職というのではなく人間関係や性格まで)を十分に知ってもらう必要はあるうえ、取締役会で議論しようとしている議題の内容についても、完全社外取締役に理解してもらうことが必要です。

そのためには、社内に完全社外取締役から取締役会の前後に質問を受けたり、完全社外取締役からの命を受けて動ける担当者を設けておくことは必須だろうと思います。
実際には、取締役会以外にも完全社外取締役と社長などが意見交換できる機会を設けたりすることも必須でしょう。