定時株主総会はなぜ6月下旬に集中するのか

6月17日のトヨタ自動車の株主総会を皮切りに、3月決算期の会社の定時株主総会が集中して行われるシーズンが始まりました。

そもそも、なんで、6月下旬に定時株主総会が集中するのか、ということから説明します。

会社法では、株式会社は、決算期(事業年度)から3か月以内に株主総会を行わなければならない、と定めています。
3月決算期の会社は、6月末までに株主総会を行わなければならない、ということです。

決算期から3か月以内に行えば良いので、極端な話、3月決算期であれば4月にやっても5月にやってもいいのです。
しかし、現実には、決算を締めたり、株主総会の準備期間、招集通知の発送期間などを考慮すると、どうしても6月下旬に集中します。

あとは、平日に行うのか、週末に行うのかなどを考慮していくと、自然と、同じような時期に集中していくことになります。

別に、会社が集中日に集中させようと考えているから、6月下旬に集中するわけではないのです(もちろん、中には、あまり株主に出席して欲しくないという思惑から、あえて集中させている会社もありますが・・)

【2014年6月28日追記】

2014年6月28日付日本経済新聞朝刊によると、3月決算の上場企業で、6月27日の集中日に株主総会を開催した企業は39%だったそうです。

株主総会の事務局で、弁護士は何をしているのか

企業法務に携わる弁護士にとっても、株主総会事務局(議長や取締役・監査役の後ろの席)でのアシスト役で神経をすり減らす時期でもあります。

総会までの準備はもちろん忙しいです。
しかし、それ以上に、株主総会当日の朝からの緊張感、株主総会の全議案の採決が通った後閉会宣言に至ったときの緊張からの開放感のほうが、何年やっても、何回やっても、心身を蝕みます。

株主総会の集中シーズンを乗り越えた7月は、ほぼ抜け殻になっています。
集中シーズンは、通常の仕事のほかに、株主総会の招集通知のチェックやシナリオ、想定問答のチェックなどで、週の合計睡眠時間が20時間前後になることもザラです。
そのため、7月になると、ロングバケーションを取り、海外に長期旅行に行く弁護士もいます。
私は高校野球が大好きなので(年間で練習試合も含め100試合以上は現地で観戦しています)、夏の選手権=甲子園の予選が始まる7月には予選べったりの日々を送ります。

ちょっと話が外れました・・。
株主総会の当日、弁護士は事務局で何をしているかという話です。

株主総会の事務局で弁護士は何をやっているのかというと・・・簡単にまとめると、次の2つです。

  1. 議長による議事進行・議事運営が会社法に違反していないかのチェックとアシスト
  2. 取締役・監査役による回答が、説明義務を尽くしているかのチェックとアシスト

私の場合、これらのアシスト業務(サポート業務と言っても良いかもしれません)を終えると、株主からの質問が出る株主総会が終わった時には事務局の机の上に、書き殴ったA5サイズのメモ用紙が山になっています。

議長による議事進行・議事運営のチェックとアシストとは

通常は、議事進行にはシナリオを用意しているので、議長がシナリオを読み上げ、シナリオどおりに議事進行・議事運営していれば問題ありません。

しかし、株主から動議が出た場合には、動議に対応しなければなりません。
典型的な動議は、会社が提案した議案とは違う内容を株主が提案する「修正動議」と、議長による議事進行が不満なので議長を交代することを要求する「議長不信任動議」です。

たとえば、会社が剰余金配当(株主配当)を1株あたり100円とする議案を提案したのに対して、株主が1株あたり200円としたらどうかと提案するのが、修正動議です。

もちろん、動議が出た場合には、動議対応のノウハウがあるので、そのノウハウを駆使して、事務局から議長に対して議事進行、議事運営のアシストしていくことになります。

気をつけなければならないのは、修正動議を受け付けた後、採決時に修正動議の存在を忘れないようにすることです。
会社側提案の原案を採決してしまえば修正動議は採決するまでもなく否決されることになるので、その旨をキチンと説明しないと修正動議の採決をしていないではないかと株主から指摘されてしまう可能性もあります。極端な場合には、株主総会の取消訴訟を提起されることもありえます。

取締役・監査役が説明義務を尽くしているかのチェックとアシストとは

株主が簡単な質問をしてくれればいいですが、何を質問したいのかわからない場合や意見なのか質問なのかわからない場合がよくあります。
そうした場合に、事務局は、要するに株主の質問は何かをまとめます。

そのうえで、

  1. そもそも取締役が説明義務を負っている質問なのか
  2. 説明してはいけない質問なのか
  3. 説明義務は負っていないけれど、説明が禁止される質問ではないので、答えてもいい質問なのか

を分類します。

この分類作業をするためには、株主総会の招集通知、計算書類、付属明細などに記載されている内容を頭に入れておくことはもちろん、最近は、事業報告をパワーポイント(キーノート)を使って招集通知に記載されていない内容も会場で株主に説明することがあるので、そのパワーポイントの内容を頭に入れておくことが必要です。

取締役が説明する場合には、答えるべきポイントやキーワードは「これ」というものを、事務局から取締役に提示します。
株主総会の招集通知に記載されている事項であれば、招集通知の何ページに記載があります、ということも指摘します。
そのため、私の場合には、株主総会に先立って、招集通知の内容を丸暗記ほどではないけれど、どこに何が書いてあるか、どういったことが書かれているかを、会社ごとに覚えるようにしています。

また、株主が複数の内容を質問している場合には、取締役が質問すべてに回答しているか、質問への回答を漏らしていないかをチェックします。
質問が3つなのに取締役が2つしか回答しなかった場合には、事務局は、議長と回答した取締役に回答漏れがあることを指摘して、補足して回答してもらいます。
そうでなければ、説明義務違反として、株主総会の取消事由になる可能性があるからです。

事務局に弁護士がいた方が望ましい株主総会

株主総会は上場会社だけに要求されるものではありませんが、なんだかんだ言っても、弁護士が事務局でゴリゴリにアシストをする必要があるのは、上場会社の株主総会です。非上場の場合には、株主同士が知り合いであったりするので、株主総会前に社長が事前説明に伺うなどして、株主総会は形だけという場合が多いです。

それに対し、上場会社の場合には、いわゆる総会屋を含め、どんな株主が来場するのかが当日までわかりません。
そのため、総会が終わるまで事務局対応が必要なのかどうか、どの程度までアシストしなければならないのかがわからない。
結局、事務局に株主総会対応になれた弁護士がいるのかどうかが、総会の帰趨を決すると言っても過言ではありません。

ちなみに、ベンチャー企業で株主に怪しげなファンドが入ってしまっている場合も、弁護士が事務局で活躍する場合が多いです。

私が弁護士になって5年も経っていなかった頃ですが、今はもうなくなってしまったベンチャー企業から、株主総会の前々日に相談を受け、株主総会の事務局に行ってみたら、ファンドという名の株主の半分以上がその筋の方々だったということがありました。

今から思えば、客観的に見れば軟禁されているといってもいい状況ではありましたが、淡々と事務局対応をして、議長に踏ん張っていただき、突っ込み処のない議事運営をしてもらったところ、最終的には、株主から「もう終わっていい」との言葉を勝ち取ることができました。

こうしたことが想定される会社の場合には、事務局に弁護士を入れておくことが望ましいです。

上場会社はなだらかな減少傾向に

弁護士が事務局で活躍する機会が多いのは上場企業の場合が圧倒的に多いのですが、その上場企業の数がなだらかに減少しています。

親子会社や企業グループで上場していたのを、親会社が持株会社に移行して子会社を完全子会社化するケース、そもそも連結ベースなら子会社を上場させている意味がないとして子会社を完全子会社化したら非上場化するケースが相次いでいます。

東証のデータを見ても、2006年末の2416社をピークに、徐々に上場会社は減少しています(2013年7月に大証と統合して一気に1100社が増えましたが、純粋に東証として見れば減少傾向です)。

上場会社数の推移
(出典元 http://www.tse.or.jp/listing/companies/b7gje6000000pj9r-att/b7gje6000000pjqx.pdf )

つまり何が言いたいのかと言いますと・・・

私が株主総会の事務局でアシストしていた会社も、3社ほど完全子会社化、あるいは合併してしまったので、そもそも株主総会を開催する必要がなくなりました。つまり、私が事務局でアシストする仕事がなくなってしまいました。

というわけで、今のところ、来年の6月下旬の株主総会シーズンに余裕がありますので、もしお困りの会社がありましたら、お声がけください(宣伝)