ルーズヴェルト・ゲームと臨時株主総会

前回の更新から、間が空いてしまいました。

さて、間もなく、都市対抗野球の季節です(今年の開催は7月18日から29日まで)。
毎年、仕事帰りや週末に東京ドームに寄って都市対抗野球を最低でも10試合は見ているので、今から楽しみで仕方がないです。

今、その都市対抗野球をテーマにしたドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」が放送されています。
ちょうど、先週の日曜日は、臨時株主総会の場面でした。

株主総会の事務局に入る機会も多く、気になる場面が多々あったので、今日は、ルーズヴェルト・ゲームでの臨時株主総会の場面を題材に、いくつか説明したいと思います。

株主による臨時株主総会の招集請求

株主総会の目的事項は何だったのか?

「ルーズヴェルト・ゲーム」では、青島製作所の株主が株主総会の開催を要求したことをきっかけに、臨時株主総会が開催されました。

会社法では、すべての株主が持っている議決権の3%以上を、6か月前から保有する株主だけが、取締役に株主総会の目的事項と招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる、と定められています。

ドラマの中では、青島製作所とイツワ電器の経営統合の是非を巡って採決をしていました。
そのため、株主は、青島製作所とイツワ電器との合併や株式交換などを目的事項として、株主総会の招集を請求したように思えます。
ただ、株主は「趣旨説明(※後述します)」の中で、経営統合に反対する取締役の解任を求めるとも言及していたので、株主は、青島製作所の取締役の解任を求めて、株主総会の招集を請求したのかもしれません。

ちなみに、取締役会が設置されている会社では、株主総会の目的事項は、会社法で株主総会決議事項とされているものか、定款に記載されているものに、限られます
それ以外の議案を目的事項として招集請求されたとしても、会社は、株主総会の目的事項とする必要はありませんし、目的事項にしてはいけないのです。

ドラマなので、そこまで厳密には考えていないのだと思いますが、招集請求の目的事項はなんだったのかな、と考えながらテレビを見ていました。

 招集請求をすることができる株主の保有期間要件の例外

ちなみに、ルーズヴェルト・ゲームを見ていると、株主側の席に座っていた株主が7名しかいませんでした。
しかも、株主総会が終わった後、会長が、招集請求した株主に株式の買取の相談に乗るということを持ち掛けていました。
そこからは、青島製作所の株主は、株式を譲渡するにあたって青島製作所の取締役会の承認を必要とする、公開会社ではない会社(非公開会社)ではないか、と推測できます。
※公開・非公開というのは上場・非上場の意味ではありません。株式の譲渡にあたって取締役会の承認を必要とするかしないかの違いです。

非公開会社の場合には、株主総会の招集を請求できる株主は、総株主の議決権の3%以上を保有していればよく、6か月前から株式を保有し続けている必要はありません

株主による趣旨説明

青島製作所の株主総会では、議案に入る前に、議長が株主に「趣旨説明どうぞ」として、趣旨説明をさせていました。
これは、株主総会の招集を請求した株主に、他の株主の前で、自分の言葉で、株主総会を請求した理由を説明させるための機会を与えるためのものです。

私も、過去に担当した株主総会で3度、株主による趣旨説明の機会に直面したことがあります。
通常は、株主が株主総会の招集を請求した場合ではなく、株主提案権を行使した場合で、提案した株主に行わせるものです。

株主提案は、株主が株主総会の目的事項を提案する(たとえば定時株主総会で会社側が提案した議案に反対する議案を提案する)ものです。
その意味で、株主が臨時株主総会の招集を請求する場合と、株主主導で権利を行使している点で共通しています。

過去の裁判例では、株主提案のケースにおいて、議長は、提案株主に提案理由等の説明の機会を与えるべき、と判断しています(山形交通事件。山形地判平成1年4月18日)。

取締役による説明義務

説明義務を尽くすためでも、他社の評価をしてはいけない

青島製作所の株主総会では、株主からの質問に対して、議長である社長が、イツワ電器がいかに経営上の課題があるのか、その財務内容にまで言及していました。
本来の株主総会であれば、これは絶対に行ってはならないことです。

株主の質問に対して会社の取締役が回答することを、説明義務といいます。

この説明義務は、株主が議決権を行使して、賛成・反対のどちらの意思表明をするかを判断するにあたって必要な範囲で課せられているものです。
株主が青島製作所とイツワ電器の経営統合の是非を問うたことについて、青島製作所はなぜ反対したのか、青島製作所の中の経営判断を回答すればよいのです。
まして、イツワ電器は上場会社です。上場会社であれば、決算・財務諸表が公開されています。
その公開されている情報の範囲をもとに、青島製作所が経営統合に反対するに至った判断のプロセスを回答するだけならいいとしても、公開されていない情報をもとに、上場会社を非難して、経営が危ないとまで言及することは、法的に問題です。
名誉毀損、信用毀損、風説の流布・・・などなど。

説明者は議長だけが指名することができる

また、ルーズヴェルト・ゲームでは、株主が専務取締役を指名して、専務取締役の回答を求めていました。
説明するのは会社の「取締役」が行うものであり、どの取締役が回答するかを指名することができるのは議長に限られます

ドラマでは、専務取締役が回答するしかないというような状況ではありました。
しかし、それでも、本来なら、議長が「専務から回答させます」などと回答者を指名してから取締役が回答すべきでありました。

同じように、株主総会を招集した株主の発言に対して、会長が回答している場面もありましたが、あれも、議長がコントロールをしなければならない場面でした。

採決の方法

青島製作所の株主総会では、専務取締役の合図を以て、株主総会を招集した株主が、採決のタイミングを催促していました。
しかし、株主総会で、いつ、どのタイミングで採決を諮るのかを決められるのは、議長だけです。
議事運営、議事進行は、議長の専権です。

したがって、もし議長が、このタイミングでは採決を諮るべきではないと考えていれば、株主が採決を促していても、他の株主に発言を促すなどをしてもよかったのです。