インデックス、有価証券報告書虚偽記載(粉飾決算)の疑い

2014年5月28日、上場企業インデックス社の社長、会長が有価証券報告書虚偽記載の被疑事実で逮捕されました。

「両容疑者の逮捕容疑は、2012年8月期決算で、実際には最終損益が約6億円の赤字で約4億円の債務超過状態だったのに、約2億円の黒字で約3億9千万円の資産超過状態と虚偽の記載をした有価証券報告書を提出した疑い。関係者によると、同社は実際は取引をしていないのに、帳簿上商品の売買があったように見せかける循環取引の手法で、IT(情報技術)システムなどを取引先と仮装売買し、利益などをかさ上げしていたという。」
(2014年5月28日、日本経済新聞夕刊より)

虚偽記載をしたことについて、会長自らがメールで指示をしていたと、積極的な関与が報道されています。

関係者によると、落合容疑者は決算期末に業績が振るわないと、総務部の担当者に「数字が目標に足りないので対応するように」などとする内容のメールを送っていた。メールは複数回にわたり送信されたという。」
(2014年5月29日、日本経済新聞朝刊より)

会長が積極的に関与していたことが事実だと確定したわけではありませんが、もし事実だとすれば、会長は刑事責任(金融商品取引法違反)だけではなく、株主に対して損害賠償責任を負うことになることは必至です。

取締役が関与した場合の損害賠償責任の有無、額については、ライブドア訴訟(東京地裁平成20年6月13日、東京高裁平成21年12月16日、最高裁平成24年3月13日)、西武鉄道訴訟(東京地裁平成20年4月24日、東京高裁平成21年2月26日、最高裁平成23年9月13日、差戻し後の東京高裁平成26年1月30日)が参考になります。

では、取締役主導ではなく、部下が勝手に操作なり細工をして有価証券報告書の虚偽記載に至った場合、取締役の民事上の責任はどうなるでしょうか。
過去の裁判例から振り返ってみます。

取締役主導ではなく従業員が有価証券報告書虚偽記載をした場合にも取締役は責任を負うのか

従業員が架空の売上げを計上したことで、結果的に有価証券報告書の虚偽記載になってしまった場合でも、取締役は株主や会社に対して損害賠償責任を負わなければならない場合があります。

それは、従業員が架空売上の計上をすることができないように、取締役がリスク管理体制を整備していなかった場合です。

最高裁平成21年7月9日

この問題に関して、次のようなケースが存在しました。

事業部長が取引先からの注文書を偽造して、自社の財務部に、架空の売上を報告した。
しかも、監査法人と財務部が取引先に売掛金の残高確認書を送ったときに、営業マンが取引先を訪問し、取引先に残高確認書を開封させずに回収し、営業マン自らが残高確認書に虚偽の金額を記入して、取引先の印鑑も偽造して、監査法人と財務部に返信していた。
その結果、監査法人も財務部も架空の売上の存在を気がつくことができなかった。
・・というものです。

このケースについて、最高裁平成21年7月9日は、次のように判断しました。

本件不正行為当時,上告人は,①職務分掌規定等を定めて事業部門と財務部門を分離し,②C事業部について,営業部とは別に注文書や検収書の形式面の確認を担当するBM課及びソフトの稼働確認を担当するCR部を設置し,それらのチェックを経て財務部に売上報告がされる体制を整え,③監査法人との間で監査契約を締結し,当該監査法人及び上告人の財務部が,それぞれ定期的に,販売会社あてに売掛金残高確認書の用紙を郵送し,その返送を受ける方法で売掛金残高を確認することとしていたというのであるから,上告人は,通常想定される架空売上げの計上等の不正行為を防止し得る程度の管理体制は整えていたものということができる。
そして,本件不正行為は,C事業部の部長がその部下である営業担当者数名と共謀して,販売会社の偽造印を用いて注文書等を偽造し,BM課の担当者を欺いて財務部に架空の売上報告をさせたというもので,営業社員らが言葉巧みに販売会社の担当者を欺いて,監査法人及び財務部が販売会社あてに郵送した売掛金残高確認書の用紙を未開封のまま回収し,金額を記入して偽造印を押捺した同用紙を監査法人又は財務部に送付し,見掛け上は上告人の売掛金額と販売会社の買掛金額が一致するように巧妙に偽装するという,通常容易に想定し難い方法によるものであったということができる。
 
 また,本件以前に同様の手法による不正行為が行われたことがあったなど,上告人の代表取締役であるAにおいて本件不正行為の発生を予見すべきであったという特別な事情も見当たらない。 
 さらに,前記事実関係によれば,売掛金債権の回収遅延につきBらが挙げていた理由は合理的なもので,販売会社との間で過去に紛争が生じたことがなく,監査法人も上告人の財務諸表につき適正であるとの意見を表明していたというのであるから,財務部が,Bらによる巧妙な偽装工作の結果,販売会社から適正な売掛金残高確認書を受領しているものと認識し,直接販売会社に売掛金債権の存在等を確認しなかったとしても,財務部におけるリスク管理体制が機能していなかったということはできない。 
 以上によれば,上告人の代表取締役であるAに,Bらによる本件不正行為を防止するためのリスク管理体制を構築すべき義務に違反した過失があるということはできない。 」

この裁判例のポイントは、「リスク管理体制が整備されていたか」という点と、その「リスク管理体制が機能していたか」という点を分けて、取締役のリスク管理体制構築義務違反の有無を判断していることです。

要は、

①リスク管理体制が整備されていなければ当然責任を負うし、
②仮にリスク管理体制が整備されていたとしても、その体制が機能していなければ、その場合にも取締役は責任を負う

ということです。

リスク管理体制を「機能させる」ための、取締役の責任

会社のお金の流れに不正が生じないように、リスク管理体制、平たく言えば、チェックできる体制を整えておくこと。
これは、今さら言うまでもなく、既に整備している会社が多いと思います。
特に、上場企業であれば、金融商品取引法で整備することが法的にも義務づけられているので、整備されているはずです。

そうだとすると、取締役の地位にある者にとって現実に重要なのは、リスク管理体制を「機能」させるためには、あるいは、何か問題が起きた場合であっても、リスク管理体制が「機能している(していた)」と第三者から評価されるようにするためには、日頃から何をしておけばいいのか(何をしておかなければならないのか)、ということです。

裁判例が指摘した3つのチェックポイント

上の裁判例を見ると、リスク管理体制が「機能」していたと評価されるためのポイントとして、次の3つを挙げることができます。

  1. 売掛金債権の回収遅延について従業員らが挙げていた理由は合理的なものといえるかどうか。
  2. 販売会社との間で過去に紛争が生じたことがないかどうか。
  3. 監査法人が財務諸表につき適正であるとの意見を表明していたどうか。

もちろん、「機能」していたというためには、この3つだけをチェックしておけばよいというわけではないと思います。
上の裁判例では、この3つのポイントがあったというだけであって、取締役として、他にできることがあれば、やっておかなければならないことは当然です。
あくまでも、この3つのポイントは、取締役が行うべき最低限のポイントとして位置づけておくべきでしょう。

従業員の説明や報告が「合理的」であるかどうか敏感になる

1つめのポイントから言えるのは、取締役は、従業員からの説明や報告を聞いて「合理的である」「合理的ではない」と疑問を抱けるように自分自身の勘を磨いておく、「合理的ではない」と気がついたら、その時点で取締役が自ら従業員の説明や報告内容の真偽を確認しなければならない、ということです。

取締役自身だけではなく、財務部門など担当部署が「合理的ではない」と気づくように勘を磨かせる、財務部門が「合理的ではない」と感づいたら自主的に説明や報告の内容の真偽を確認するように鍛えておく(教育、研鑽させる)ことも、取締役の責任といえます。

取引先とのトラブルの有無、要因、経緯を確認する

2つめのポイントから言えるのは、取締役は、取引先との間でトラブルが生じていないかどうか、トラブルが生じていたとしたら、その要因は何かを確認・究明する、トラブルが収束していたとしたら、どのような経緯だったのかを確認する、ということです。

この前提として、取引先との間でトラブルが発生したときには、取締役の耳に入るように、報告体制を仕組み作りしておくことも必要です。

監査法人の適正意見に耳を傾ける

3つめのポイントから言えるのは、取締役は、財務諸表の内容について監査法人・公認会計士・税理士などの社外の会計のプロが疑問を抱いていないか、真偽について疑義を唱えたときに、その部分と理由について監査法人等から詳細を説明してもらうと同時に、社内で、その実態を独自調査する、あるいは担当部署に確認して報告を受けるようにする、ということです。

取締役は会計の専門家ではないですから、会計のプロから指摘された点について、取締役が自ら調査できるとは限りません。
その場合には、取締役が会計のプロに同席を求めながら、担当部署の責任者から報告を受けるということも、取締役が取るべき方法として考えられます。