GWもいよいよ終わりに近づいてきました。
幸い、GW後半は天気にも恵まれたので、一日中外にいたら、激しい紫外線の影響で真っ赤に日焼けしてしまいました(例年のことですが)。顔が痛いくらいに赤黒く・・。
GW明けからビジネス街や裁判所には相応しくないほどの色黒さで、「あの人は、何の仕事をしているのか?サイパンでも行ったのか?」という奇異の目で見られる日がまたやってきます。

「アメーバ経営」をコンプライアンス、危機管理の分野に活かす

このGWに、日本航空(JAL)が「アメーバ経営」を拡大して、売上高営業利益率10%以上を維持することを目標とするとの報道がありました。

「日本航空は2010年の経営破綻後、京セラから取り入れた部門別採算制度をグループ全体に広げる。本体と運航系や整備系の連結子会社19社で導入済みだが、15年度末までに販売系を含む主要な連結子会社35社に拡大する。部門別採算制度の適用拡大により、燃油費を除くコストを16年度までに13年度比で年間約400億円削減し、売上高営業利益率10%以上の連結財務目標を堅持する。」
(日本経済新聞平成26年5月4日(日)朝刊より)

要は、事業部制をもっと細分化して10人程度のグループに分け、各グループごとに採算が取れているかどうかを判断する方法を「アメーバ経営」と呼ぶそうです。

この「アメーバ経営」の経営論としての是非はともかく、実は、この方法論は、社内コンプライアンス体制、社内危機管理体制にこそ生きるのではないかと思います。

多くの会社のコンプライアンス体制、危機管理体制

多くの会社では、社内コンプライアンス体制、社内危機管理体制と称して、

  1. 全社的なコンプライアンス規程や危機管理規程を作成し、
  2. 社長をトップに据えて、情報が各従業員からトップにあがるような仕組み作り、
  3. また、各従業員に対しトップからの指示が効率よく伝達されるような仕組み作り、
  4. さらに、業務手順の中に決裁項目を増やす、あるいはルールを増やす

ということに取り組んでいるようです。

ただ、社内コンプライアンス体制、社内危機管理体制で重要なのは、規程、仕組み、決裁・ルールのいずれでもないと思っています。
結局のところ、それらは、一度作ってしまえば、あとからは変更が利きにくい、「会社が決めたもの」として「従わなければならないもの」と、役員・従業員に理解されてしまいます。
ひいては、役員・従業員は「規程、仕組み、決裁・ルールを守る」ことに比重を置き、最終目標であるコンプライアンスの徹底、危機管理の実践は眼中になくなってしまうケースが往々にあるからです。

「アメーバ・コンプライアンス」「アメーバ危機管理」

むしろ、社内コンプライアンス体制、社内危機管理体制で重要なのは、役員・従業員同士による相互チェックと、個々人のコンプライアンス・危機管理に対する意識の向上です。
個々人の意識が向上した結果、最終的に、全社的に意識が向上したということになれば、理想的な組織だと思います。

こうした考え方にマッチするのが、「アメーバ経営」の手法ではないかと思います。
「アメーバ・コンプライアンス」「アメーバ危機管理」と表現してもいいかもしれません(私が勝手に命名)。

どういうことかというと・・

社内を10人くらいずつの集団に分ける。多くの会社では、1つの課・グループ単位、もしくは1つの島単位になるかもしれません。
この10人くらいずつの集団の中で、従業員同士による相互チェックと、個々人のコンプライアンス・危機管理の意識の向上を図るのです。

従業員同士の相互チェック

従業員同士の相互チェックは、イメージが掴みやすいかと思います。
同じ課・グループ・島にいる従業員が、日常業務の中でミスをしていないか、ミスを隠していないか、ミスを起こした場合の社内対応・社外対応をどうするか、これを日頃からチェックしあう。
チェックといっても、「チェックリストを作る」とかではありません。
「先週、仕事でこんなことに困ったと言っていたけど、どう解決したのか」「この前、仕事でミスをしたと言っていたけど、原因はなんだったのか」「この前、取引先からの要求で困っていると言っていたけれど、何を要求されたのか」など、コンプライアンス、危機管理に関わる内容を、日頃から会話するというだけで充分です。

従業員個々の意識の向上

日頃からコミュニケーションを取っておくことで、1つの課・グループ内では、ミスの共有、原因の共有などができます。
その結果、各人が「こういうミスが起きやすい」「ミスが発生する場合には、こんなことが問題になるのか」などの、コンプライアンス・危機管理の勘所を養っていくことができるようになります。勘所が養われれば、コンプライアンス・危機管理の意識も向上していきます。
また、同僚から仕事でのミスなどを指摘されることで、ミスを隠蔽することも難しくなります。つまり、ミスが発生したら、早期に会社に報告しておこうという姿勢に繋がって行きやすいです。
もし、1つの課・グループ単位では対処することが困難であるような事情が存在していることがわかれば、その時こそ、仕組みやルールに基づいて、社内で報告し、対処法への舵取りを待つ。これによって、社内でも不祥事の隠蔽などを見つけやすくなります。会社には早期発見というメリットもあります。
もっといえば、目の届く範囲の同僚たちと日頃からコミュニケーションを取っておくことで、もし万が一、何かが起きた場合でも、「とりあえず課・グループ内には報告しておこう」と、情報報告のハードルが低くなるというメリットもあります。

「アメーバ・コンプライアンス」「アメーバ危機管理」の実践

現実的には、「コンプライアンス責任者」という肩書きを有する社員を1つの課・グループに配置し(課・グループ内から選ぶ)、毎週・毎朝、「先週のミス」「昨日一昨日のミス」などを朝会の場などで話し合いして、それをトップに繋がるルートに報告する(ミスがなかったときには「ミスがなかった」と報告する)、という取り組みをすることになろうかと思います。

なお、コンプライアンス責任者に選ばれた人の意識が低いと、そもそも、そうした課・グループ内でのコミュニケーションが満足に行われない、情報がコンプライアンス責任者の耳に届いたとしても、緊張感を持たずに、コンプライアンス責任者からトップに繋がるルートに報告しないということが起きてしまいます。

実際に、コンプライアンス責任者と呼ばれる人を選任して、毎週、本社に報告を入れることをルール化している企業は存在します。
しかし、その場合でも、コンプライアンス責任者の報告内容が不十分である、コンプライアンス責任者からの報告が行われないなどのこともあります。
そうした場合には、会社としては、コンプライアンス責任者を即時に指名替えするなどの対処をしていくことが必要です。