リコールを行う場面

物を売るという取引では、物を作った後、あるいは物を売った後に「物を使うと生死の危険が生じる可能性がある」「生命までは奪われなくても重大事故に繋がる可能性がある」「そこまで深刻ではなくても、多数の人に影響が拡散する可能性がある」ということが判明することがあります。
これが可能性に留まらないで、実際に「生命を奪うような事故が発生してしまった」「重大事故に繋がってしまった」「多数の人に影響が生じてしまった」ということもあります。

B to Cの取引や、B to B to Cの取引で、こうした可能性が明らかになった場合、あるいは実際に事故が発生してしまった場合には、B に該当するメーカー、輸入業者、流通業者といった企業(Business)は、消費者(Customer)であるCに向けて、物の危険性を伝えて、物を使わせない、物を回収して修理する、物を回収して別の物と交換するなどの「製品リコール」をしなければなりません。

リコールは、回収率を向上させる工夫が必須

ただし、忘れてはならないのは、「製品リコール」は「やる」こと自体が目的になってはいけないということです。
「製品リコール」の目的は、消費者に対して、「危険である」「使わないで欲しい」「回収させてほしい」「修理させて欲しい」というメッセージを伝えること。そのうえで、実際にメッセージどおりに消費者に行動してもらい回収率を上げること。です。

リコールの情報を消費者に伝えるための手段-「新聞社告」が第1位

そうなると、企業が「製品リコール」を行うにあたっては、どのような方法・手段をとれば、消費者にメッセージを伝えることができるだろうか、ということを第一に考えなければなりません。
特に、物に含まれる危険性が大きければ大きいほど、消費者に迅速にメッセージを伝えられなければなりません。
メッセージを発信する日が1日遅れた、あるいは消費者がメッセージを受けとるのを1日遅れた。それによって事故に直面してしまう、ということも充分ありえます。

では、どのような方法・手段が望ましいでしょうか。

平成24年10月に消費者委員会が調査した結果によると、消費者は、次の方法・手段で「製品リコール」のメッセージを知りたいと認識しているようです。

方法・手段 希望する人の割合(%) ※複数回答
新聞の社告での「回収のお知らせ」 58.5
ラジオ・テレビのコマーシャル 55.1
ラジオ・テレビ・WEBのニュース 50.7
メーカーからの連絡(郵送DM、電話) 45.7
新聞記事 39.6

消費者が新聞を以前よりも読まなくなったとの結果も出ていますが(全国紙を「ほとんど読まない」「全く読まない」人の割合は、平成18年は合計12.8%であったのに対し、平成24年は31.0%)、それでも、消費者の50%以上は、新聞での社告で「製品リコール」の情報を知りたいと思っているようです。
ちなみに、消費生活用製品安全法では、メーカーから行政に報告し、行政が公表するルートが定められていますが、しかし、消費者の83.4%は行政機関が「製品リコール」の情報を発信していることすら知らなかった、という結果もでています。

こうした結果からは、企業が「製品リコール」のメッセージを消費者に迅速かつ確実に伝えたいと思ったら、消費生活用製品安全法で行政に報告するだけでは不十分で、自分たちで新聞に社告を出す、マスコミのニュースに載るようにプレスリリースを出す、マスコミを通じたコマーシャルを提供するなどといった方法を選択しなければならないことがわかります。

リコール社告は、消費者が理解できなければ意味がない

企業は社告などを通じて「製品リコール」のメッセージを消費者に届けるだけでは不十分です。
消費者に社告などを通じて伝えたメッセージに沿った行動を取ってもらわなければ意味がありません。
消費者がメッセージに沿って「危険」だと認識して使うのを止める、「回収」や「修理」に出す(回収率を上げる)ためには、企業が発信するメッセージの内容を消費者が理解してもらう必要があります。
そのためには、第二に、企業は社告などの方法で伝えるメッセージの内容が、わかりやすく伝わるような工夫を考えなければならないのです。

具体的には、文章だけの社告にするではなく、写真や図解を駆使した社告にするのが、その工夫の核です。
たとえば、2014年4月24日、SONYは今年2月に発売したノートパソコンを製品リコールすることを発表しました。その新聞社告やWeb上に、消費者が手元にあるノートパソコンがリコール対象製品かどうか確認するための手順を、写真や図入りで工夫しています。
2014/04/11付Web上の製品リコールの案内(写真入り)
Sony Japan _ パーソナルコンピューターVAIO Fit 11A使用中止のお願いとお詫び
2014/4/24付Web上の製品リコールの案内(写真入り)
Sony Japan _ パーソナルコンピューターVAIO Fit 11A無償修理受付開始のお知らせ

わかりやすい社告を作るために・・・「リコールハンドブック2010」

わかりやすい「製品リコール」の社告を作成して回収率を向上させることは、2004、5年前後から、企業が積極的に取り組むようになっていました。おかげで、徐々に、工夫された、わかりやすい「製品リコール」の数は増えていきました。
その流れを受けて、経産省は、2007年に「リコールハンドブック2007」を発表し、2010年にはその改訂版となる「リコールハンドブック2010」と、その解説書となる「リコールハンドブック2010【手引き】」を発表しました。
2013年には、製品リコールにも、ISO規格ができました(ISO10393)。内容は、経産省のリコールハンドブック2010とほぼ同じです。

この「リコールハンドブック2010」は、法律ではありません。
企業が「製品リコール」をする際に「このハンドブックに従わなければならない」というルールを定めたわけではありません。実際のところ、内容は、定型書式を作成することを主眼にしたものではありません。
「製品リコール」の考え方と向き合い方を前面に押し出し、巻末に他社事例を豊富に掲載して「こういうリコールの仕方もある」ということを、企業に提案しています。あくまでも「こうしたら、わかりやすいリコールになるよ」「こうしたら、リコール回収率が高くなるよ」という提案をしたものと位置づけていいと思います。
知らないよりは知っていて損はないので、企業の広報担当者は、一度、目を通しておくのがよろしいかと思います。