昨日、タクシー料金の値上げと独禁法の関係についての疑問を投稿しました。
そこに絡めて、独禁法の監督官庁である公正取引委員会の最近の動きについて、今日は触れてみたいと思います。

平成26年1月~4月の公正取引委員会の動き

平成26年に入ってから、公正取引委員会がカルテル・談合を取り締まり、排除措置命令、課徴金を命じるという報道が例年より多い印象を受けます。
その数の多さは、まるで、何かキャンペーンでもやっているかの如く。
実際に報道された、排除措置命令や課徴金が命じられたケースだけでも、以下のとおりです。

平成26年3月18日
自動車を輸出する船便の貨物運賃を巡る価格カルテルを理由に、海運大手など4社に対し計約227億円の課徴金納付命令と再発防止などを求める排除措置命令を発令。
※課徴金額は日本郵船が約131億円で、1社当たりの過去最高額。
※川崎汽船が約56億9千万円、ノルウェーが本社のワレニウス・ウィルヘルムセン・ロジスティックスが約34億9千万円、日産専用船(東京都)が約4億2千万円。課徴金の総額は過去2番目の規模。

平成26年2月28日
インフルエンザの予防接種の料金でのカルテルを理由に、埼玉県吉川市と松伏町の医師でつくる吉川松伏医師会(会員74人)に再発防止を求める排除措置命令を発令。

平成26年2月3日
千葉県が発注した東日本大震災の復旧工事などを巡る談合で、同県東金市や山武市などの建設業者35社のうち20社に総額約2億2300万円の課徴金納付命令を発令。

平成26年1月31日
関西電力が発注した送電線工事を巡り、関電社員が事前に予定価格を業者に伝えるなど談合を助長し、談合していた電気設備工事会社61社に総額約23億7千万円の課徴金納付命令を発令。

これらの事件以外にも、
・車や機械などのベアリング(軸受け)に使われる部品「鋼球」の価格を巡るカルテルの疑いでの立入り検査。
・北陸新幹線(長野―金沢間)の融雪設備工事の入札を巡る談合の疑いでの強制調査・捜索。
・志賀高原スキー場(長野県山ノ内町)でリフト共通券を発行する志賀高原索道協会が加盟社による独自のリフト券販売を制限していたことに対する警告。
・浄水場や下水処理場で使用する水処理用の薬剤の入札で談合を繰り返していた疑いでの立入り検査。
・取引上の強い立場を利用して納入業者に従業員を派遣させるなどしたディスカウントショップに対し、優越的地位の濫用を理由とした課徴金12億円と排除措置命令の予定。
・土木工事に使う土管や側溝などコンクリート製品の価格を巡りカルテルを結んでいた疑いでの立入り検査。
・段ボール製品の販売を巡り、東日本各地で価格カルテルを結んでいたとして、公正取引委員会がメーカー約60社に対し、課徴金130億円と排除措置命令の予定。
・・・などが報道されています。

素直に、素朴に「なんか多くないかな」と感じます。

平成20年~24年までの公正取引委員会の実績

例年がどれくらいかというと、

公取法的措置数平成24年度 公正取引委員会年次報告 より)

上の図を見ていただくと、排除措置命令が発令された数は、平成24年度が20年、平成23年度が22年、平成22年度が12件、平成21年度が26件、平成20年度が17件ということがわかります。ちなみに、年次報告には載っていませんが、平成25年に公表された案件は8件です(報道資料)。
それに対し、平成26年は、報道された上記4件を含め、平成26年4月24日現在で6件の排除措置命令と警告が発令され、1件が刑事告発され、さらに2件が排除措置命令と警告の準備に入っています(報道資料)。
このペースが続くと、過去5年間を超える、30件という大台に乗りそうなペースです。

公取課徴金額平成24年度 公正取引委員会年次報告 より)

なお、課徴金は、上記の海運カルテルだけで総額227億円に達しているので、総額では早くも平成24年度を超過しました。

公正取引委員会の動きの背景にあるもの

なぜ、平成26年は、公正取引委員会はカルテル、談合に対して、これほど積極的なのでしょうか。

もちろん、そもそも事件になるような案件が存在したというのは、当然の前提でしょう。
カルテル、談合が存在しなければ、公正取引委員会が取り締まることさえありません。

しかし、平成26年に入って、本日までに公正取引委員会が課徴金を課し、排除措置命令を発し、あるいは刑事告発した案件は、平成15年以降(志賀高原)、平成20年以後(海運)、平成21年以後(関電、千葉県)、平成23年(インフルエンザ、北陸新幹線)と、古い案件が摘発されたものです。

つまり、平成26年の直前に急遽、カルテル、談合が増えたわけではなく、公正取引委員会が過去に遡ってまでしてカルテル、談合を積極的に取り締まっていると理解した方がよさそうです。

推論1-消費税導入が公正取引委員会を活性化させた

1つの理由としては、消費税の導入があるかもしれません。
4月から消費税がアップし、それに伴い、企業間の取引で消費税を転嫁して取引額が増額することを正当な理由なしに拒否する行為を、公正取引委員会は取り締まっています。
下請法違反に対する取り締まりの延長と捉えていいと思います。
消費税転嫁拒否行為に対して、公正取引委員会は20億円を超える予算を確保し、積極的に取り組んでいます。
公正取引委員会の中で働く職員にしてみれば、隣の部署が消費税転嫁拒否行為の取締りで成果を上げていれば、それに負けじと、自分たちも成果を上げる。
そのために、カルテル、談合を積極的に処分するという方向で力が働く。
このような力学が働くことはあってもおかしくない、と思います。

推論2-事務総長が変わったことで公正取引委員会を活性化させた

もう1つの理由は、今年1月から公正取引委員会の事務総長が変わったということです。
事務総長が変わったので、カルテル、談合などに対して今まで以上に積極的に取り組むようになったということが考えられます。
事務総長が、平成26年2月19日の定例会見で、唐突に、「課徴金減免制度(リニーエンシー)」について会見したことからも、事務総長が変わったことで今まで以上にカルテル、談合摘発に力を入れるようになったというのは、あながち穿った見方ではないのかな、と思っています。

カルテル、談合に巻き込まれないための企業の対応

で、結局何が言いたいのかというと、カルテル、談合などそもそも違法行為なので「やってはいけない」ことは今さら言うまでもないけれども、カルテル、談合の場に接する機会、誘われる機会がある業界の会社は、今まで以上に慎重にしたほうがよい、ということです。

具体的には、業界同士の集まりの場で、カルテル、談合などと思われるような話題をしない。
もし、カルテル、談合とおぼしき話題が出てきたら、その場から離席する。
離席の際には、お茶をこぼしたことを理由にして立ち去るなどして、その場から離席していたことを周囲に印象づける。
離席後は、会場に戻ってこない。
・・といったことを徹底することです。

課徴金減免制度(リニーエンシー)の活用

また、もしも、カルテル、談合が行ったことがあり、それが見つかっていないだけだとしたら、ただちに「課徴金減免制度(リニーエンシー)」を利用することです。
それによって、会社に及ぶ被害を最小限度に食い止める。
課徴金減免制度を利用したからといって、それで、会社が社会的に批判を浴びることもありません。
課徴金減免制度を積極的に利用して、課徴金を免除してもらうということが、会社の危機管理・リスクマネジメントとしては、非常に重要なことを再認識する必要があります。
そのためには、従業員に、課徴金減免制度の存在を知ってもらうこと、使い方を知ってもらうこと、課徴金減免制度の利用に前向きな社内風土を作っていくことが必要があると思います。