失敗やミスをしたときに、自分の非や責任を認めることは、非常にストレスが強いものです。
人は自分が責められることを嫌うからです。

しかし、企業で働く以上、仕事の中で失敗やミスをしてしまったときには、ただちに、それを訂正し、またその仕事に関わる人・会社に報告しなければなりません。

ところが、仕事の中で失敗やミスをしてしまったときにも、自分の非や責任を認めたくないという態度が現われる場合があります。
自分の非や責任を認めないと突っぱねているだけなら、まだマシかもしれません。
酷いものになると、自分の非や責任の証拠を消し去る作業が行われます。
「隠蔽」や「改ざん」と呼ばれる作業です。
議事録を改ざんする、業務報告書を改ざんする、社内資料を隠してしまうなど・・・企業不祥事が発覚するときには、ほぼ必ずといっていいほど、「隠蔽」「改ざん」はセットで行われています

不祥事の発覚後に、遡って、社内資料などを「隠蔽」「改ざん」していたことが発覚した場合、その企業に対する評価は地に落ちます。
改善するつもりがないと世間から評価され、批判を浴びます。
不祥事の原因が、日常的な「隠蔽」「改ざん」である場合には、たとえ、それを個人が勝手に行っていたとしても、その企業の情報管理体制、その企業の組織的なコンプライアンスへの意識の低さが疑われます。

最近は「隠蔽」や「改ざん」がしやすくなってきました。
かつては、議事録や業務報告書などの文書はボールペンによる手書きで作成されていました。
ボールペンによる手書きの場合、そこに書かれた内容を「隠蔽」「改ざん」しても、不自然なところがあるのでわかりやすい傾向にあります。
文字を書き足した痕跡がある。インクの色や濃度が違う。見た目でわかりやすくかったです。

ところが、文房具が進化すると、ボールペンによる手書きの文書も「隠蔽」「改ざん」されやすくなります。
実際に、行政機関で、消せるボールペンを使って、手書き文書の「隠蔽」「改ざん」が行われているという報道がされています。

「川崎市は3月に公表した定期監査で、財務に関する書類など計57件に職員が消せるボールペンを使用していたと発表。文字が薄かったため判明したという。名古屋市でも昨年5月公表の監査で出張書類などでの使用が明らかになった。」

「千葉県警は昨年11~12月、車庫証明書を偽造したとして中古車販売会社の社員ら4人を有印公文書偽造・同行使容疑で逮捕した。社員らは消せるボールペンで書いた在庫車の車庫証明書を正規に取得。新たに車を仕入れた際の証明書取得の手間を省くため、車名などを消して書き換える手口で少なくとも435台分を偽造したとみられる。」

「茨城県土浦市消防本部の30代の男性職員は消せるボールペンで勤務管理表を書き、上司の決裁後、市人事課に持ち込む間に残業時間を水増し。約70万円を不正受給したとして懲戒免職となった。」

(日本経済新聞平成26年4月19日(土)夕刊より)

最近は、ボールペンでの手書きよりも、パソコンで作成されるデジタル文書も増えてきました。
そうしたデジタル文書は、手書きよりも巧妙に、バレにくいように、一旦作成した後に文字や文章を追加したり、訂正したりすることができます。
それだけ、「隠蔽」「改ざん」しやすい、ということです。

ボールペンでの手書きによる「隠蔽」「改ざん」が上記報道のように行われているのだとすれば、デジタル文書での「隠蔽」「改ざん」は、もっと行われている、と考えていいと思います。
報道された「隠蔽」「改ざん」は、氷山の一角だと理解して良いでしょう。

では、どうすれば、「隠蔽」「改ざん」がなくなるでしょうか。

上の記事によると・・

「消せるボールペンは行政文書で使わないように」。川崎市の担当者は今月、新人職員約180人の研修で呼びかけた。

呼び掛けが行われた、ということだそうです。

しかし、どんなに従業員に呼び掛けをしても、消えるボールペンを使うことはなくなっても、「隠蔽」「改ざん」はなくならないと思います。
なぜかといえば、今の企業の多くが、一度でも失敗やミスをすれば、その従業員を出世コースから外し、半永久的に戻ってこられないという人事制度になってしまっているからです。
つまり、従業員が失敗やミスをすることに対し企業が寛容ではないので、従業員は出世コースから外れたくないとの思いから失敗やミスを必死で隠す、という悪循環になってしまっているのです。
これは、一度でも失敗やミスをすれば、自分自身のことは横に置き、さも鬼の首を取ったように騒ぎ、失敗やミスした人を非難する、揚げ足をとり続ける、という低俗な人たちの気質に由来しているような気がしてなりません。
この人事のあり方を変えない限り、従業員は失敗やミスを必死で隠すという自己防衛策を手放すことはないでしょう。
その意味で、企業の人事評価を変えることも、企業の「危機管理」「リスクマネジメント」として捉えるべき事柄だと思います。
そのように人事評価、人事制度が変わっていけば、わざわざ「内部告発」という形を待つまでもなく、自分から失敗やミスを進んで報告するということにつながるはずです。